第144話 BY 沢井 美優

 ******BY 沢井 美優 ******


 錬が両断した妖魔たちだったが、その後すぐに大地から霊力が沸き上がり再び妖魔を形づくり始めた。

「きりがない。沢村の奴、間に合うのか?」

「はでに人前でキスしやがって!! 死亡フラグだったらどうしてくれるんだ!!」

 私が錬を心配するなか、錬の行為を非難する声が聞こえる。

 大丈夫。錬のあの決意を肌で感じたのはわたしだけ……。私たちのどちらかが欠けることなんて決してない。だって、私はキスした後、こっそり渡せたんだもの。錬は、一度は押し返したんだけど、私の真剣な目を見て持って行ってくれた。私は付いていけないけど、きっと錬を守ってくれる。

 私はサブマシンガンをフルオートから単発式に切り替える。私には第三の目がある。確実に一発必中、残り少ない親水を節約しなきゃ。

 もうすぐあの霊力が具現化する。私は気を引き締める。錬が居なくなって麗さんが前に出てくる。きっと自分が盾になるつもりなんだ。

 私の三六〇度の視界が大地の中に流れるエネルギーの異変に気が付いた。

「麗さん、この地のエネルギーの流れがよどんでいる!!」

「そう言うことなのね?!!」

 私の言葉に、麗さんが訳の分からないことを言い、印を組み始めた。これは……、久呪?

「大地に流れる龍脈よ。この淀みを無くし、我に力を与えよ!! 青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女!!」

 四神、神人、星神の名を叫び、神々の力を乞い、印を結んでゆく。

 私の目にははっきりと見える。麗さんの足元に赤い魔法陣のようなものが広がっていくのが……。

 そして、麗さんが大地に向かって、気合とともに掌底を打ち込む。

「龍脈瑠破(りゅうみゃくりゅうはっ)!!」

 凄い! 私の目には打ち込まれた掌底から波動が地底深くまで広がっていく。そして地の底には、血管の大動脈のようにエネルギーの奔流が大河のように流れているんだけど、毛細血管の地上に向かう流れの途中には、瘤(こぶ)のように、エネルギーの流れを堰き止めてしまっている。その瘤が波動に触れると瘤が粉々に崩れていく。

「龍脈の流れを正常にした。これでもう大地から妖魔は生まれない」

 そう言った麗さんは地面に四つん這いになり、肩で息をしている。それで、獅子神たちは麗さんを守るように周りを固めていた。

私たちがやらなければならない。再び生まれ出た妖魔は、最初の数より少し多いいぐらいかしら? これ以上増えないと云うのなら、何とかなる。

私は、サブマシンガンを妖魔に向かって構え直す。

 そして、遅い掛かて来た妖魔に私はサブマシンガンを連射する。動きが早いけれども、今の私の目は悪実に妖魔の動きを捉えていた。私は確実に妖魔の額を打ち抜いていく。どうやら私の目は、予測した動きを映し出しているみたいだ。これこそ、時間さえ超越した五次元の目。

 鈴木部長たち男性は、かなり接近させた後、妖魔を撃っているようだ。自らをおとりにしての殲滅作戦だ。また、の腕に噛みついてきた猿のような妖魔の額をサブマシンガンで滅多撃ちにしている。神水を節約するため、肉を切らせて骨を断つ。

 しかし、見る間に傷だらけになっていく。その傷に神水を掛けて癒してあげているのが彩さんだ。彩さんってまるで聖女みたい。みんなそれぞれの役割を果たしながら、どんどん妖魔の数を削っていく。

 やがて、私の二本目のペットボトルが空になるころ、やっと妖魔を殲滅することが出来た。わずか数分の攻防だったと思うけど、みんな肩で息をして、膝を付いている。

 錬がどうなったけど、私の目には、ライトの届くところ以外は暗闇しか見えない。どうやら、私の目も元に戻ったみたいだ。この瞳になると、目から入ってくる情報量が半端じゃないから、しばらくは頭痛に悩まされる。

そんな状態の時、鈴木部長が麗さんに問いかける声が頭に響いた。

「沢登さん、一体何をしたんだ?!」

「この土地に流れる龍脈が詰まっていたから、その詰まりを取り除いた」

「なるほど龍脈か。この京都は風水を最大限に利用して建設された土地だったな。でも、それなのにどうして流れが滞ったんだ? これも十七夜教のせいなのか?」

「うーん。手ごたえが違った。龍脈は血管の動脈と静脈のように陰脈と陽脈がある。そして、陽脈の方が、詰まっていたから、どんどん悪い気が溜まっていた。そこを十七夜教に利用された」

「陽脈の流れが滞ったのは、たぶん廃仏殷釈によって、龍脈の流れをコントロールしていた法具が破壊され、信仰を失ったために起こったんだろうな」

「うん。きっと、そう」

「後は、沢村がハッカイを破壊し、十七夜教の企みを防いでくれれば……」

 その言葉に、みんなは錬が消えた暗闇に目を向けた。


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