第3話 出会い

とりあえず喉がカラカラなので自販機を・・・って、森の中だから自販機がある所まで遠そうだな。もしかしたらワンチャンでかい公園の森の中ならすぐ近くにあるかも知れないけど、見渡す限り木、木、木・・・テレビで見た富士の樹海ぽい雰囲気だ




まずは喉を潤して、そこから色々考えよう・・・夢の可能性もあるし・・・多分現実だけど・・・




とりあえず気の向くままに歩いてみる




こんなに歩いたのは何年振りだろうか




しばらく歩くと川のせせらぎが聞こえてきた。とりあえず飲めりゃあなんでも良い・・・俺はパンパンになった足を強引に動かし音がする方へと走り出す




見えて来たのはやはり川・・・ドブ川とかだったらどうしようかと思ったけど透き通るような色の川だ。飲める・・・飲めるぞ!と勢いよく飛び出すと先客が居たようで驚きこちらを見ていた




あーねー、そうそうベタなお約束ね・・・誰も居ないと思った場所に居たのは茶髪の少女・・・もちろん全裸だ




俺に気付いて大事な部分を隠したけど、すまん、バッチリ見てしまった




「キャー!!」




うん、そりゃあ叫ぶよね。俺も君の立場だったら普通に叫ぶ。でもね・・・喉が乾いてるのだよ・・・だからまず飲ませてくれ・・・下流で飲むのは少女のダシが・・・とか考えてないからね




悲鳴を上げ続ける少女を横目に俺は流れる水の中に顔を入れてゴクゴクと飲んだ。川を飲み干すぐらいの勢いで・・・こうすれば少女も、あー喉乾いてたんだね・・・仕方ないね・・・って思ってくれる・・・はず




しかしいつもより上手いな・・・何とかの天然水とか嘘だなアレ。それともマジで少女のダシが・・・歳は16、7くらいかな・・・ピチピチだったな・・・もう服着たかな・・・逃亡生活は懲り懲りなんだが・・・




飲んでいると少女の気配が動くのが分かった。目論見通り飲んでいる内に服を着てくれている事を願おう・・・そしたら、言うんだ・・・『いやー、喉乾いちゃってさ』って。コミュ力激低の俺でもそれくらいは言えるさ・・・そこで素敵な笑顔でもかませば惚れて・・・ないな




立ち上がり腕で口を拭うと服を着ているか確かめる・・・よしよし着ているぞ。ここでさっきのセリフを・・・なんだっけ・・・




「いやー・・・あまりに美味しそうで・・・」




あれ?違うぞ・・・これじゃあ通報案件だ・・・少女はドン引きした顔で俺を指さしている。あっ、これ騒がれるやつだ・・・




ブブブブ




「!#$&¥☆○§!!」




???・・・英語・・・じゃないよな?フランス語・・・でもなさそうだし・・・なんて言っているか全く分からん




ブブブブ




「*ヾゝヾ&¥#@$$!!」




中国語・・・ドイツ語・・・韓国語・・・どれも違いそうだな・・・てか、どの国の言葉か分かった所でどうしたって話だよな・・・うーん、困った




ブブブブ




さっきからブブブブ、ブブブブうるさいな・・・そう思ってよくよく考えると、音は俺の真後ろからしている。少女の指も俺と言うより俺の後ろを指しているみたいだ。気になって後ろを振り向くと・・・あー、うん。夢確定




俺の身長程ある巨大なハチが俺の真後ろでホバリングしてやがる




夢のくせに妙にリアルなそのハチは、ぶっといケツに付いた針を引いて俺に狙いを定めているような状態だ




刺されたら死ぬな・・・夢でもそれじゃあ悪夢やんけ・・・せっかくいいもの見た後で刺されて死ぬ夢なんて最悪・・・




だが、ふと思った




夢ならなんでも出来るのでは?と




現実で初めて使った超能力・・・俺の能力は念動力で念じるだけで物体を動かしたり出来る




ぶっちゃけ自分が持てる位の重さの物しか持てないから、だったら自分で持てよと総ツッコミを受けそうなくらいの能力だけど、これが夢ならこんなバカでかいハチにだって通用するはず




俺は集中する為にハチに手のひらを向けて念じた・・・まずはそのうるさい羽根からだ




ブブ・・・ブ・・・ポチャン・・・




流れていきよる流れていきよる・・・え?なんで?




忙しなく動かす羽根を念動力で止めた・・・そこから地上戦が始まると思いきやハチは川に落ちると流されていく。膝までしかないから、普通に立つと思ったんだが、デカくても所詮ハチか・・・なんか拍子抜けだな




「・・・」




どんぶらこどんぶらこと流れていくハチを見届けた後、俺は少女の方に振り返る




改めて見るとかなり可愛い・・・高校時代なら学年で・・・いや、学校内でトップクラスだろう。ハーフなのか目の色も日本人とは違う水色?・・・もしかしてカラコンかな?髪の色は茶髪と言うよりクリーム色って言うのか?




「@◎$◎&●ゝ<□*↑!」




うん、分からん。言語は全く分からないけど、裸を見た事への怒りはないようだ。しきりに頭を下げて感謝している様子・・・どうやら俺がハチを退治しに飛び込んだと思っているらしい・・・これは役得役得




彼女はどうやら俺をどこかへ案内しようとしているらしい。川と反対側を指さして、訳の分からん言葉を発している。まさか美人局ではないよな・・・こんな純朴そうな子が・・・まあ、行く宛てもないしついて行くか




1歩足を踏み出した瞬間に疑問が湧いた




本当に・・・夢だよな?




もし夢じゃなければ、美人局は美人局でも、出て来るのは怖いお兄さんじゃなくて対能・・・夢だと思って無警戒に超能力を使ったが、夢じゃなければ通報されて俺もあの姿に・・・




立ち止まって考えていると彼女が止まっている俺に気付き首を傾げる




・・・こんな子に騙されるんだったら仕方ないか・・・




俺は夢じゃなかった時、どんな仕打ちが待っていようと悔いはないと1人頷き彼女について行く事に決めた

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