第4話【俺のギルティは色々な能力が使えるみたいです①】

【五分前仮説】というタイムパラドックスがある。


簡単に説明すると5分前仮説とは、『現在自分達が存在している地球は五分前に出来たものであるかもしれない』というある種の逆説論だ。


古来代々人間達が築いてきた文化遺産や長年の歴史も、もしかすると五分前に出来たものかもしれない。


今現在喋っている俺の身体だって、五分前に創られた可能性もある。


まぁ、そんなことを言い出したらどうにもキリがないのだが、つまり俺が言いたいことはそんな夢のような話しはありえないということだ。


いや・・・逆か。


仮にソレが現実に本当に起きていたとしても、世界はその変化にただ気付いていないだけなのかもしれない。


何故ならそんな異常な出来事はーー神の領域に近付かなければ、誰にも分からないことだからだ。


森林に吹くなだらかな風の騒めきに伴い、木々がクスクスと嘲笑う。


現在俺が居るフィールドは東の外れに存在するエリア【ビギン森林】


LCWを始めたばかりのプレイヤーがまず初めに訪れると言われる言わば初心者ステージだ。


いくら☆5のキャラを引こうと、レベルに関してはどのキャラに関しても最初は低い。


そのため誰もがこのエリアで雑魚狩りをしてレベル上げに専念しようとするだろう。


ただ、俺の罪歌はめちゃくちゃ強いから、最初の雑魚なんてほんの二秒でフルボッコに出来るンゴwww


なんてまぁ、最初は思ってたわけなんですけどね。


「ひっ・・・む、虫ぃ・・・!むりぃ・・・!」


女は虫が大嫌い。


それはLCW史上最強災厄のギルティであるノアも例外なく一緒だった。


俺でも簡単に蹴り殺せそうな毛虫のデイズに背を向け、奴は子供みたいにプルプル震えている。


「おい、早く戦えよ! デイズって言ってもたかが虫だろ!? それにお前の能力スキル使えば、こんな雑魚一発で倒せるだろーが!」


「無理ですよぉ・・・! だって、虫じゃないですかぁ・・・! ゲジゲジのやつじゃないですかぁ・・・!」


いくら虫相手でも人間だってここまでビビッたりはしない。むしろ驚いてるのは俺の方かもしれない。だって、ノアちゃん、たかが虫にビビりすぎやん。


「キシャァァァァアッッッ!」


つか、おいおいおい。虫型のデイズ、襲いかかってきましたけど!?


「ひっ・・・!?」


瞬間、ノアの背負っている大太刀が眩い光を放つ。あのエフェクトはノアがスキルを発動する時の合図だ。


「よーし!よしよしよし!」(犬を褒めるように)


ノアは性格はアレだがスキルに関しては最強中の最強!


おそらく今回も以前の世界を創り直した時のように相当やべえ能力を披露してくれるはずだろう・・・よーし!やっちまえ、ノア!その毛糸ごと、虫タイプのデイズを消滅し尽くしちまえ!


「やめてええぇぇえっ!!!」


「あぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!!!!!!」


バリバリバリッ!


俺の頭上に突如落下する雷。避雷針として雷の直撃を受けた俺の身体は漫画みたいに骨や臓物を透視させると、ブスブスと黒い煙を身体から舞い上がらせていた。


所持スキルNo.54【反攻の落雷ライバルティック・ドロー

『効果 相手の攻撃を無効化し、敵味方ランダム一体に雷属性のダメージを与える』


俺は地面に倒れたまま震える手をノアに指差し、震え声を何とか喉元から絞り出す。


「お、おい・・・お前これで今日4度目だぞ・・・! いい加減にしろよ・・・! マジで殺すぞ・・・!」


「だ、だってぇ・・・虫、こわいんですよぉぉぉぉ・・・!」


虫型のデイズよりもお前のチートスキルの方が恐ろしいわ!


俺はプルプルと震える腕を揺らし、余裕綽々のデイズに狙いをチェック。このままでは虫より先に俺が死んでしまう。


「い、いいから早くやれよ・・・! そして早くこいつを倒して、回復スキルで俺を癒してくれ・・・!」


「わ、分かりましたぁぁ・・・」


今度は背負っていた大太刀を両手に構え、再び虫型デイズと向き合う形になるノア。


だが、虫型デイズは先程のノアの失態から「お、こりゃ余裕やん?」と調子に乗ったのか、猪突猛進の勢いで突っ込んでくる。


「キシャァァァァァァァアッ!」ドドドドドッ


「うっ・・・」


「キシャァァァァァァァアッ!」ドドドドドッ


「ひっ・・・!」


「やめてええぇぇぇええっっ!!!」


そこで再び俺に遅いかかるノアのスキル。今度は落雷じゃなくて灼熱みたいだ。「あづぁぁぁぁぁぁあッッッ!!」という悲鳴を発しながら、俺は森の中を火ダルマになりながら走り回る。


それから2分くらい森林を走り回っていたらーー俺は気がつくと息絶えていた。


所持スキルNo.9【獄炎の薔薇プロミネンス・ロゼ

『効果 敵単体に炎の極大ダメージを与える。相手は2分の1で火傷状態になる』

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