第3話【俺のギルティは異世界を創りなおすみたいです②】
前回までのあらすじ
俺、こん棒、殴られる、痛い痛い痛い、死ぬ。
「いや、そんな雑に殺すなやッッ!!!」
あまりに投げやりなあらすじに思わず生き返る俺。
そりゃ、こんな適当なあらすじで俺の人生終わらされたらたまったもんじゃないわ。
いやぁ、それにしても棍棒って殴られるとめちゃくちゃ痛いんだな・・・ほんと。こん棒のレビューがあったら書けるな。
【殴りやすさ☆5】
【コメント 握りやすいように持ち手が付いてるのは良 ただ、背中をえぐる際に一撃で死なないのが難点。改善点はまだまだあるが将来有望なのは間違いなし】とか?
「ふえっ・・・ひっぐ・・・うえぇぇ・・・!」
ふと、胸元を見ると少女はまだ目元を抑えて泣いているみたいだった。おいおい、無事に助かったんだから泣くなよ・・・俺なんか一度死んだんだぜ?
・・・ん?
今、確かに死んだよな、俺?
「ーーな、なな・・・なんで生きてたんだ!俺!?」
あまりに奇想天外な状況に俺の脳みそは混乱状態だ。咄嗟に先程えぐられた右肩を触る。確かに半壊していた俺の身体に傷は一つも見当たらず、破れていた衣服も新品同様に修復されていた。
それに・・・おかしなことはこれだけじゃない。
「さっきの化け物・・・一体、どこに行ったんだ?」
先程まで確かに存在していたはずのオークの姿が見えない。あれだけ巨大な図体をしているのだから、どこかに身を隠しているなんてことはあり得ないだろう。
そう。まるでこの場から。いや、この世界から突如消滅したようにーーあの化け物は、忽然と姿を消してしまったんだ。
何が何やら訳が分からん状態の俺は取り敢えず状況の理解を急ぐためにベルに視線を。当の本人であるベルはというと困ったような表情を浮かべ親指の爪を噛むと、この世の終わりみたいに何度もブツブツと独り言を呟いていた。
「どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう・・・」
まるでイタズラをして叱られた子供だ。
俺は焦ったように彼女ににじり寄り、ブンブンと奴の肩を揺らし状況の説明を促す。
「お、おいおいおいっ!どういうことだよ! これ! 何で俺生きてんの!? それにさっきの化け物は、一体どこに行ったんだよ!!」
だが、ベルは俺が何度肩を揺らしても無反応だ。
「どうしよう。どうしよう。どうしよう・・・」
「さっきからどうしよう。しか言ってないでちゃんと説明してくれよ!おまえ仮にもこのゲームの案内人だろ!?職務怠慢はダメだって俺の姉ちゃんが言ってたぞ!!」
ブンブンブン!!
俺の必殺肩揺らし(効果 20)は更に激しさを増していく。
「どうしよう。どうしよう。どうしよう・・・」
「どうしようじゃないって!お前ちゃんと俺の話し聞いてんのかよ!」
ゴンゴンゴン!
俺の必殺肩揺らし+壁頭打ち(効果 40)は更に激しさを増していく。
瞬間、俺の頭に突如襲いかかる--衝撃。
「痛いわッ!!!!」
ベルは拳を握ると俺の前で仁王立ちで怒りを露わにしている。どうやらはしゃぎすぎたみたいだ。すごく痛いお・・・。
溜息混じりにベルは握った拳をフラフラと揺らすと、再び「これ、ほんと失敗なんてレベルじゃないわよね・・・私、クビ? いや、もしかするともっと酷いペナルティかあるかも・・・」とテンションだだ下がりで嘆いていた。
正直現状は理解出来ていないけど、どうやら俺達の周りで現在何かやばいことが起きているらしい
とりあえずベルに敬語を使おう。低姿勢な態度でいれば顰蹙は買わないって近所のアパートに住むよっちゃん(フリーター)が言ってたし。
「あのー、ベルさん・・・とりあえず現在何が起きているのか説明していただければ私としてもとても助かるのですが・・・」
だが、俺が問いかけてもベルはフル無視。
ノアはずっと泣きじゃくってるし、ベルは何も言わんし、俺は気まずいし・・・。
どうしよう。帰っていいかなぁ。ほんと・・・家でファミチキ食べながらスプラトゥーンしたい。
「柊木禊」
「は、はい」
フルネームで呼ばれ思わず即座に返事をする俺。思わず背筋伸ばしてしまった。つか、帰らなくて良かった。
「あんた・・・今その
やけに芯のある声だ。俺はムムムと首を曲げ、カマキリのように小さい脳みそを絞りまくる。
おそらくではあるけど。
「お、俺の身体のダメージを全回復したとか?」
横に首を振るベル。俺はそこから自分の思いつく限りの答えを全て伝えるが、全部否定されることになってしまった。
いやいや、じゃぁ、一体なんなんだよ、、、。
こんな泣き虫女に、これ以上どんな能力が備えられてるんだっつーの。
「そうね。・・・禊には正直に伝えておくわ。ギルティ・ノアを庇ってあんたはさっき死んだ。アルゴリアオークの棍棒の打撃をモロにくらってね。そこまでは私も確かにこの目で確認していたの」
ふむふむ・・・俺は棍棒で殴られて死んだと・・・。
「はい?」
「だから、あんたは今オークに棍棒で殴られて死んだんだって」
え、ええ!?
つ、つまりその理屈でいくと・・・俺は蘇生されたってことか?
「--つか、めちゃやべえ能力じゃねえか!こいつ!人の命を蘇生するとかチートすぎね!?」
先程まで落ち込み気味だった俺もこれにはニッコリ。蘇生能力があれば死んだって無敵!つまり死んでもニューゲームっつうことだろ!?
もうこれタイトル【異世界ゲームで無限の命を手にした俺はハーレムを築くことにしました】とかに変えた方がいいんじゃねえか?
だが、気分上々の俺と相反しベルは意気消沈な様子だ。
「そんな可愛い能力なら・・・別にここまで思い悩む必要もなかったんだけどねぇ」
続けてベルは自身の足元に手を添える。
先程まで確かにあったはずの魔法陣の上に乗って・・・--
「・・・え?」
魔法陣が、ない?
「・・・どうやら理解してきたみたいね」
ベルは俺が現状の異変に気付き始めたのかギルティ・ノアに近づく。そして彼女の涙を手で拭うと、彼女の背負っている大太刀に触れる。
すると、ベルの手が光り始めた。発光を纏う左手でベルは近くにある椅子のオプジェに触れる。
--シュッ。
瞬間、ベルが触れた椅子が、まるでこの世界から元から存在していなかったように消滅したのだ。
「他人が触れただけでこれだけの力を得ることが出来るんだから・・・この娘が世界の理を書き換えることなんて、簡単よね」
今の一言を、俺は聞き逃さなかった。
「今・・・なんて」
「・・・だから、さっきも言ったでしょう。この娘の名前はギルティ・ノア。★0の一人であり、No.0の称号を持つLCWの世界で災厄のギルティ」
そこで一瞬だけーーこの世界の時間が、止まったような気がした。
「そんな彼女にとってアルゴリアオークが出現する以前の世界に世界を創り直すことなんて・・・簡単なことなのよ」
--★0
--ギルティ・ノア
--そして世界の再生。
あまりに飛躍し過ぎる情報に、俺は全くと言っていいほど理解が追いつかない。
ただ・・・これだけは確かだと言えることがある。
「ふえっ・・・?」
つまり俺の初回ガチャで引いた旅の相棒は--LCW災厄であると同時に最強であるということだ。
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