第51話 帰宅後
龍星さんにプレゼントを貰った私は、自分の家の方に歩いていた。
「一人で大丈夫か?」と龍星さんに訊かれたが流石にこれ以上迷惑はかけれないと思い「大丈夫です」と答えておいた。あの場で「大丈夫じゃないです」とか言ってしまうと龍星さんのことだ、家まで送ろうとしてくれるだろう。
「はあ。泣いてしまった」
真っ暗な道を一人で歩きながらそんなことを呟く。
龍星さんに出会ってから人前で涙を流してしまうことが増えた気がする。
いじめられていた頃も泣いてはいたものの、人前では泣かなかった。
どうしてだろう。龍星さんの前だと何も気にせず涙を流せる。
「おっかしい」
私はそう言ってクスクス笑った。
「今日だけもっと甘えれば良かった......」
私は誰にも聞こえない声でそう言って一人、のこのこと自分の家の方に歩いた。
家に着くと私は真っ先にリビングに向かう。
龍星さんと会う前におばあちゃんからケーキを貰っていた。
そのケーキを食べるためにリビングにやって来た。
冷蔵庫に入っているケーキを取り出し皿にケーキを乗せる。私一人だけしか食べないのでケーキも丸型をしている物じゃない。
しかしやっぱりおばあちゃんは分かってる。
「ショートケーキだ」
私の大好物のショートケーキを買ってくれていた。
私はフォークにケーキを乗せ口に運ぶ。
ケーキが口に入った瞬間、甘いクリームの味とふわふわした感触が口いっぱいに広がり幸せな気分になった。
「美味しい」
私は頬に両手を当てながらそう言った。
次はケーキの上に乗っているいちごをフォークで刺し口に運ぶ。
いちごもケーキと同様に口いっぱいに甘さが広がる。種がぷつぷつと潰れているのも感じられた。
約五分ほどでケーキを食べ終わる。
するとそんな時ある考えが浮かんだ。
それはいきなりだった。
「お母さんとお父さんがいたらもっと楽しかったのかな......」
これ以上考えたらまた泣いてしまうと思い考えるのを辞めた。
私は龍星さんから貰った財布の入った袋を手に取り中身を見る。
中に入っている財布を目にするたびに心が躍るように嬉しくなった。
無意識に笑顔になる。
袋の中から財布を取り出し数秒眺める。
値札は取られており値段を確認することが出来なかった。
けど私はこの財布の値段をちゃんと覚えていた。
「すごく高いのに、本当にありがとうございます」
あーだめだ。また涙が溢れ出てきそう。
何て幸せな誕生日なのか。
私は財布の中身がどうなっているのか気になりファスナーに手をかけ開けてみた。
するとそこには明らかに財布の付属ではない紙が一枚入っていた。
私は何だろうという疑問を浮かべながらその紙を手に取る。
大きさは便箋と同じ位に感じられた。
何回かに折りたたまれていた紙を広げる。
するとそこには短く文章が書かれていた。
『誕生日おめでと。これからもよろしく』
私はその紙に書かれていた文を見た瞬間龍星さんからの手紙だと分かった。
床に膝をつき顔を手で覆う。
涙が溢れ出て来たからだ。さっきまで我慢していた涙がとうとう溢れ出て来た。
「あーもう、龍星さんったら。涙出てきちゃったよ」
私は震えた声でそう言った。
全く今日は人生で一番最高の日だ。
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