第48話 7月19日の中西桃花
龍星さんから誘いを断られた私は一人で駅に向かっていた。
「あーあ、用事ってなんだろう」
ふとそんなことを口にしてしまう。
龍星さんが用事ってすごく珍しい。私に教えられないことってどんなことなんだろう。
「もしかして彼女が出来たとか......」
私は額に冷や汗を掻きながらそう言った。
もし本当に龍星さんに彼女が出来ていたら......。
「ダメだダメだ。そんなことを考えちゃダメだ。まだ確定したんじゃないし......」
私は首を横にびゅんびゅん振った。
しかし彼女じゃなかったら他に何があるだろうか。
私は頭をフル回転させて色々考える。
——普通に杉山君とかと遊ぶ予定だったり。いやいや、それなら隠す必要ないじゃん。やっぱり彼女かなぁ......。あーもぉーわかんなーい!
私は心の中で滅茶苦茶な考えを浮かべていた。
するとそんな時、ふとあることを思い出した。
「そういえば明日私の......」
そう、明日は私の誕生日だ。
「おばあちゃんケーキ買ってくれてるかな」
おばあちゃんは病院に入院しているにも関わらず私の誕生日の日には忘れずにケーキを用意してくれる。
両親二人ともいない私にとってはおばあちゃんが大切な家族なのだ。
「早くケーキ食べたいな!」
私は満面の笑みを浮かべ、誰にも聞こえない声でそう言った。
こうして私は高いテンションのまま家に辿り着いたのであった。
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