第32話 林ねねの裏

私は今、先ほどの電話の相手の家に足を運んでいる。


さっき校門にいる時にかかってきた電話の内容はこうだ。


『今からうちに来い。いいことしてやる』


電話の相手は男で、いいこととは考えれば分かるだろう。


こんな内容の電話は初めてじゃない。


高校に入学してからこのような電話は毎日のようにかかって来る。


「はあ。嫌だな」


そんな独り言を呟き足を動かした。


程なくして男の家に着きインターホンを鳴らす。


男の家は古びたアパートの二階。毎回ここのアパートの階段を上る時は体が震える。


恐怖でだ。こんな風に男に誘われたのは初めてじゃないのに慣れないもんだ。


何回誘われようが恐怖で体が震える。


インターホンの音を聞いた男がドアを開け顔を見せた。


今まで色々な男とヤってきたがこの男とヤった回数が一番多い。


「来たな。誰にも見られなかっただろうな?」


「はい。この時間は学生が多いですけど見つからないようにしました」


「ならいい。入れ」


そう言って男は私を強引に家の中に入れ込んだ。


言い忘れていたが相手の男の年齢は20代後半だ。


他の男もみんなこれに似た歳だった。


「さあ、始めるか」


「はい......」


男は私の服を1枚ずつ脱がしていく。


最初はカッターシャツ。次にスカート。


結果、私はブラとパンツだけの状態となった。


「んん」


ついそんな声を漏らしてしまう私。


「おいおい、そんな声出すなよ。興奮するじゃねえか」


そう言って男は私のへその辺りから胸の部分まで右手の人差し指でなぞった。


「んん、い、いや」


生身の肌を触られるとそんな声が自然と出てしまう。


「へへ。いいねぇ。興奮するねえ」


そう言って男は私の腹部を舌で舐め始めた。


それと同時に私の下の部分に手を当てた。


「あ、ああ......んん」


私はこんな状況の中、あることを考えていた。


——どうしてこんなことになってしまったのだろう。


私は過去を振り返る。


あれは確か入学してすぐの出来事だった。


実はこの私、あることにすごく快感を覚えた。


そのあることとは男子から好意を持たれることだ。


自分で言うのもなんだけど私はモテる。誰が見てもそう思うんじゃないだろうか。


中学の頃の友達からも「ねねモテすぎ!」や「いいなぁ~」とか言われてきた。


高校に入学したての時にも「一目惚れしました。付き合ってください」と告白をされた。もちろん断った。一目惚れしただけで告って来る男子とは流石の私でも付き合いたくない。


けど告白されたことは嬉しかった。快感を覚えた。


この男子は私の事が好きなんだと分かっただけでもすごく気分がいい。


そんな男子を振ることにも快感を覚えた。


そんな私はあることを考えた。


それは違う方法で男子を落としたい。


そんな考えだ。


私はやると決めたらすぐに実行させるタイプの人間だ。


私が通っている第3高校の先輩に声をかけた。


『私に着いてきてください! いいことしましょ!』


こんな感じで誘った。まるでぼっち先輩を誘う時みたいに。


するとその先輩はまんまと着いてきた。やはり男だ。頭の中はエッチなことだらけだろう。


私自身もこの先輩とヤったのが初体験だった。


少し怖かったし初体験が好きな人じゃないというのはどうかと思うが、慣れるとそんなことは考えなくなった。


そして私の計画は無事に成功し、この先輩も私に告って来た。


その時の快感は今でも覚えている。


この快感のせいでその後も色んな男子とヤった。


辞めないとって思ったけど辞められなかった。


まるでこの快感は私にとっての薬だ。


しかしある日を境にこの快感を味わうことはなくなった。


学校が終わり帰宅しようとしていた時。


「お前かヤリマン女は」


「誰?」


急に見知らぬ大人の男性に声をかけられた。


「てか、何であんたが私の秘密を知ってるのよ」


「聞いたんだよ。お前の学校の奴にな」


「うそ......」


私は色んな男子とヤってきた。その中に情報を漏らした人がいる。


「いいから着いてこい」


そう言って私の腕を強引に引っ張る男。


抵抗しようとしても力が強く抵抗出来ない。流石は大人だ。


私は何も出来ないまま男の家に辿り着いてしまった。


ここに来る途中誰かに助けを求めようと思ったが、運が悪く誰ともすれ違うことがなかった。


こうして私は初めて大人とエッチをした。


この日から同じ高校の男子とは一切ヤらなくなり大人としかヤっていない。


そしてどんどん時間は過ぎ今はこの男の相手をしているということだ。


「へへ。最終局面だ。誰にも言うんじゃねえぞ」


そうだ。全ての男は口をそろえてこう言った。


『誰にも言うんじゃねえぞ』と。


「はい」


どんなに嫌でも大人の男には勝てない。抵抗するだけ無駄だ。


「ああ、ああ......」


「へへ。気持ちいだろ」


「はい。気持ちい......んん」


今となって後悔する私。


何であんなことしちゃったんだろ。


あんなことしなければこんなことにはなってなかった。


それと何でぼっち先輩気づいてくれなかったんだろ。


ぼっち先輩のバイト初日、私はぼっち先輩をトイレで誘惑した。


あれも私の作戦だ。


ぼっち先輩の強さは私も知っている。


滅茶苦茶強い先輩を彼氏にしたらこんな大人は寄って来なくなると思った。


ボッチ先輩を私の彼氏にするためにあのように誘惑して落とそうとした。


けどその作戦は失敗に終わった。


——誰か助けて


心中でそのようなことを思った私だった。






















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