第27話 面接

「お名前と学校名、学年を」


「鬼頭龍星。第3高校2年生です」


「何故ここのスーパーでバイトをしようと思ったんですか?」


「えっと......」


俺は言葉に詰まる。


今日6月1日。


俺は今スーパーでバイトをするべく面接を受けている。


面接官はここのスーパーの店長だ。


鋭い目つきで俺を直視する。


俺はその目力に負けないように店長に視線を向けているが、どうしたものか全く勝てる気がしない。


俺は一度咳払いをして口を開く。


「スーパーの仕組みに興味がありまして......」


頭をフル回転させて浮かび上がってきた考えがこんな間抜けな回答だった。


どんな質問をされるか分かっていたら面接前にしっかり対策はしていた。


しかしどんな質問が飛んでくるか分からない以上、対策を立てることを諦めてしまっていた。


俺の回答を聞いた店長は鋭い目つきで俺を睨んできた。


このような目つきを向けられることに慣れている俺でさえも少しビビってしまう。


しかし次の瞬間驚きの言葉が返ってきた。


「採用だ」


「え」


思わずそのような言葉を口にしてしまう。


「元々人手が足りなかったんだよ。だからちょっとでも人手が増えてくれるのなら大歓迎さ!」


面接の時とは全く違う態度で俺と会話をする店長。


しかし気になる点が一つある。


こんな優しい口調なのに目がすごく怖いという点だ。


この店長とは目を瞑って話すといいだろう。


その後店長とシフトの話などをした。


俺はスーパーでの用事が終わったので帰宅しようとした。


しかしその時、潮田の時と同じように一人の女子に声をかけられた。


「あんたうちの高校の2年じゃね?」


俺は声のした方に視線を移し口を開く。


「何だお前」


俺が怪訝そうな顔をしているとその女子は腕を組んで偉そうに話を始めた。


「あんたうちの学校では有名人じゃない。他校の奴らボコボコにして女子高生を救ったとか。かっこいいねぇー」


全く感情が籠っていない言葉を口にした。特に最後の言葉は棒読み。


「お前がどこの誰かは知らんがその話のことはあんま他言すんなよ」


もしこの話が色んな人への耳に入ったら中西がいじめられていたことも知ってしまうかもしれない。それは中西にとって良いことではないだろう。


「はいはい。てか、私のこと知らないとか。私あんたと同じ高校の1年なんですけど。1年の林ねね!」


俺に向かってやや強い口調でそう言ってきた。


林は自分のことを知られていないことに少しムカッとしたのだろう。確かに自分のことを「誰だ」とか言われたら少しムカつくかもしれん。


しかし俺はそんなことより違う部分に引っかかっていた。


「お前1年なら先輩には敬語だろ」


「は? あんたみたいなぼっちに敬語とか使いたくないし」


「ぼ、ぼっち......ぼっちだと」


——こいつは一度ガツンと言ってやらねえとな......。


俺は怒りをあらわにして口を開いた。


「お前......」


俺が言葉を発した瞬間店長の声が俺の声を遮った。


「林君こっち手伝ってくれないかい?」


「はーい! 今行きまーす!」


そう言って林は俺のことなんて無視して店長のもとに歩いて行った。


しかしその途中足を止めた林。そしてゆっくりと俺の方を振り返った。


「じゃあなぼっち後輩。ここでは私が先輩だからな」


そう言って林は足早に俺の目の前からいなくなった。


「あの野郎、ぶっ殺してやる」


俺は力強く拳を握りそんなことを呟いたのであった。



















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