第26話 クラスの女子が......
中西とデデデパートに行った夜、俺はスマホを開いてあることを確認していた。
スマホ内のメッセージアプリを開いて中西桃花と表示されている部分をタッチする。すると中西の生年月日や性別が確認できるようになっている。自身の設定で確認出来ないようにすることも可能だが、中西は確認出来るようにしていた。
そして俺は中西の生年月日に目をやった。
「7月20日か」
俺はそれを確認するとスマホの電源を落とし眠りについたのだった。
「はああ~」
でかいあくびをしながら学校に足を運んでいる。
今日も電車で中西と会ったが、特別何か会話をすることなく挨拶を交わしてそれぞれの学校に向かった。
この頃ぼっち時代の学校生活に戻りつつある。いや、もう戻っていると言っていいだろう。
そのため学校生活が暇で暇で仕方がない。
「帰りてえ」
俺はそんな独り言を呟いて教室に向かった。
いつもと変わらず退屈な授業を受けてようやく昼休みの時間がやってきた。
友達がいない俺からしてみれば昼休みも退屈だが、授業時間よりかはましだ。
俺は昼飯を食べるべく食堂に向かおうと席を立つ。
するとその時......
「あ、あのぉ」
一人の女子が俺に話しかけてきた。
俺はその女子に目をやり口を開く。
「お前は確か、同じクラスの......」
前の俺なら目の前にいる女子を睨みつけていただろう。
そして逃げられる。
けど今の俺はどうしてかどんな人でも自然に振る舞おうとしている。
これも中西の影響かもしれない。
そんなことを考えていると目の前にいる女子が口を開いた。
「そ、そうです。同じクラスの
「学級委員か」
俺に話しかけてきたのは同じクラスの学級委員長だった。
そんな学級委員長が俺に何の用なのか。
「で、俺に何の用だ」
「い、一緒にお昼なんてどうでしょうか......」
潮田は両手の人差し指をつんつんしてそう言った。
一体どういうことだ。何の関わりもなかった女子からいきなりご飯に誘われるなんて。
俺は一度咳払いをして口を開いた。
「何で俺を誘った?」
俺がそう訊くと潮田は激しく動揺し始め俺から目を逸らした。
俺はそんな様子を不審に思い口を開く。
「一緒に食べるのはいいが、誘った理由を聞かせろ」
すると潮田は顔を真っ赤にして口を開いた。
「は、話してみたいと思ったから......」
赤くなった顔を隠す様に俯いた潮田。
何で俺と話してみたいと思ったかは謎だが理由を話してくれたので一緒に食べることにした。
俺と潮田は二人で食堂に足を運んだ。
それぞれ食べたいメニューの食券を買い、食堂のおばちゃんに食券を渡す。
今日の食堂は意外と空いていたので数分待つだけでご飯が出来上がった。
俺と潮田は席に座りご飯を口にする。
俺はカレーで潮田はうどん。
数分無言の状態が続く。
初めて喋る人と一緒にご飯を食べたらこうなるのも自然なことだろう。
俺はこんな静寂した空気を壊すべく口を開く。
「何で俺と話してみたいと思ったんだ」
超ストレートにそう訊いた。
いきなり質問を投げられた潮田はおどおどして俺を見ている。
「そんなに緊張すんなよ。普段通りでいい」
俺がそう言うと潮田は一度深呼吸をして口を開いた。
「ごめんなさい。私人見知りなもんですからすぐこんなおどおどしちゃって。恥ずかしい」
頭を掻きながら苦笑交じりにそう言った。
「そうか。人見知りといってもちゃんと仲いい奴はいるんだろ?」
「はい。けど今仲良くしている友達とも打ち解けるまで随分と時間がかかりました。あははははは」
「時間がかかろうと友達になれたならいいじゃねえか。俺なんか友達ゼロだぞ」
俺がそう言うと中西は言葉に詰まった。何て言えばいいのか分からないのだろう。
自分が口にした言葉で相手を困らせるのは悪いと思った。
「気使わなくていいぞ。高校2年まで一人でいる俺がおかしいだけだしな」
俺は苦笑交じりにそう言った。
すると潮田は真剣な眼差しを俺に向けて口を開いた。
「おかしくないです! 周りのみんなが鬼頭さんの優しさに気づかないだけです! 気づいていれば今頃鬼頭さんは友達100人くらい余裕ですよ!」
まあ、結果気づいてもらえないからぼっちなんだが。
潮田が俺を励まそうとしてくれているのはよく分かった。
けど実際、俺は一人でいることに不満を感じたことはない。
けど『優しい』と言われたことに関しては悪い気はしない。
「ありがとな」
励ましてもらったんだからお礼を言うのは当たり前だろう。
俺の言葉を聞いた潮田は顔を赤くして小さく頷いた。
さあ、ここから本題にいかせてもらおうか。
「さっきも訊いたが何で俺と話してみたいと思ったんだ?」
「じ、実は私鬼頭さんと他校の生徒が喧嘩しているところを見たんです」
「えっ」
俺は驚きを隠せないでいる。
喧嘩を見たっていつの喧嘩だよ。
今まで喧嘩は数えきれないほどしてきた。
血原とした喧嘩だけは死んでも見られたくない。
その喧嘩が人生で初めての敗北だからな。
俺は意を決して口を開いた。
「いつの喧嘩を見たんだ?」
「私が見た喧嘩は鬼頭さんが女の子を守ってました。そして他校の生徒を圧倒してました!」
潮田は目をきらきらさせながらそう言った。
潮田の言っている喧嘩は恐らく血原が絡んだ喧嘩じゃないだろう。
恐らくその前の健をぼこぼこにした喧嘩のことだ。
俺は安堵の息を吐き口を開く。
「そうか。で、その喧嘩は俺と話をしたい理由と関係あるのか?」
「はい。私その喧嘩の時の鬼頭さん、すごくかっこいいと思いました。だからそんな鬼頭さんとお近づきになりたいと思いまして......」
「そ、そうか」
俺は少し照れてしまった。そのため顔が少し赤くなる。
俺はそんな顔を隠しながら口を開く。
「まあ、俺も友達がいないわけだからこうして話す相手がいるっていうのは正直嬉しい。だから遠慮なんかしないでいつでも話しかけていいから」
俺がそう言うと潮田は顔を真っ赤に染めて俺から顔を背けた。
その瞬間昼休み終了を告げるチャイムがなった。
俺の皿にはまだカレーが残っている。それは潮田も同様だった。
俺らは猛スピードで皿に残った物を口に放り込んだのであった。
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