第24話 気づけないんだよ
ぼっち生活が戻りつつあった今日も校門で中西が俺のことを待っていた。
「こんにちは! 龍星さん!」
相変わらず俺と出会ってからの第一声は変わらないまま。
毎日毎日他校の校門まで来て飽きないのだろうか。
俺は中西の姿を横目で見ながら口を開く。
「はいはい。こんにちは~」
そんな俺のめんどくさそうな態度に不満を感じたのか中西が俺の袖を思い切り引っ張って口を開いた。
「何か冷たくないですか?」
唇を尖らせてそっぽを向いた中西。
何故か俺はそんな彼女の態度に戸惑ってしまい、つい弱気になってしまう。
「悪かった」
俺は少し頭を下げそう言った。
「よろしいです!」
中西はそう言ってニコッと笑う。
今気づいたが中西の様子がいつもと違う気がする。
俺は顎に手をやり少し考える。
その様子を不審に感じたのか中西が首を傾げて口を開く。
「どうかしました?」
「何かお前いつもとどこか違う?」
その言葉を聞いた中西は頬を赤らめて俺から視線を外した。
そして前髪を整え始める。
「何してんの?」
俺の言葉を聞いた中西は肩をビクッとさせこちらに視線をよこした。
前のめりなり上目遣いで俺を見てくる中西。そのせいで制服の隙間から胸の谷間が俺の視界に入ってきた。
俺は慌てて視線を谷間から外す。
幸いなことに中西に気づかれることはなかった。
俺は安堵の息を漏らす。そんなことをしていると中西は先ほどの俺の質問に答えるためか口を開いた。
「ま、まさか龍星さんが気づいてくれるとは思わなかったもので」
嬉しそうに笑みを浮かべる中西。
俺は一体何のことなのかさっぱり分からないでいた。
俺は今疑問に思っていることをそのまま中西にぶつける。
「気づくって何のことだ?」
「さっき龍星さん、『お前いつもとどこか違う?』って言ってくれたじゃないですか!」
「は、はあ」
さっぱり分からん。
俺はただ様子が変だなと思っただけでそれ以上何かを思ったってわけじゃない。
俺が難しい顔をしていると中西が少し不満そうな顔をして口を開いた。
「一応確認しておきますが龍星さんが違うと感じたのは何故ですか?」
真剣な眼差しを俺に向けてくる。
「何かいつもより楽しそうにしてたから何かあったのかと......」
俺がそう言うと中西は一度溜め息を吐き鋭い目つきで俺を見た。
その目つきは今ままで俺が喧嘩してきた誰の目よりも恐ろしいものだった。
俺はつい中西と距離をとってしまう。すると中西はすかさず俺との距離を縮めてくる。
俺が女にビビるとは......。初めての経験だ。
俺は動揺しながらも口を開く。
「な、何でそんなに怒ってるんだよ......」
「龍星さんが変な期待をさせるからです」
「へ、変な期待?」
「そうです! いつもと違うって言われたときとても嬉しかったんですよ!」
俺は目を細めて今中西が言った言葉の意味を必死に理解しようとした。
しかしどれだけ考えても理解することが出来なかった。
俺は中西に視線を向ける。どういう意味か教えてくださいという気持ちを込めて。
すると中西は一度重い溜め息を吐き口を開く。
「実は今日、学校が早く終わったので髪を切ったんです」
頬をぷくーっと膨らませてそう言った。
それを聞いたことで俺はようやく理解することが出来た。
「そういうことか」
「そういうことです! いつもと違うって言われた時髪を切ったことに気づいてくれたんだと思いましたよ」
「それに関しては俺が悪い。すまん」
俺がそう言うと中西は顔に少し笑みを浮かばせ口を開いた。
「龍星さんだから許します! けど一つだけ言わせてください」
俺は首を傾げて中西の言葉を待つ。
「女の子っていうのはこんな何気ないことに気づいてもらいたいんですよ!」
中西は満面の笑みを浮かべてそう言った。
「そ、そうか」
俺がそう言うと再び中西が口を開く。
「......特に好きな人には」
「ん?」
中西の声が小さく、今言った言葉を聞き取れなかった。
「何でもありません! 行きましょ!」
そう言って足を動かした中西。
それに着いて行くべく俺も足を動かした。
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