第23話 停学明けの学校

「ピーンポーン」


朝早くからインターホンの音が鳴った。


「誰だよ。こんな時間に」


俺は玄関に向かいドアを開ける。


「げっ」


ドアを開けた先にいた人物を見て思わずそのような声を漏らしてしまう。


「おはようございます! 龍星さん!」


ドアを開けた先には中西が立っていた。


こんな朝早くから中西に会うのは初めてだ。


ニコッと笑って俺を見つめる中西。


「何でいるんだよ」


「一緒に学校行きましょ!」


少し前のめりになって俺に顔を近づけてきた。


今起きたばかりでまだ何も準備をしていない。


そんな中ずっと外で待たせるわけにもいかない。


「はいはい。中で待っとけ」


俺は中西に家に入るように促す。中西は満面の笑みを浮かべながら家に入った。


「龍星さんの朝の様子を見られるとはラッキーです!」


物凄くうきうきしている中西。


そんな様子の中西をリビングに残し俺は洗面所に向かった。


歯ブラシを手に取り歯を磨く。


朝は口に中が気持ち悪いからな。歯を磨かないと一日が始まらない。


歯を磨き終わると顔を洗う。


洗面所での用事を済ませると次は朝食だ。


キッチンにあるパンの中から適当に選び、それを食べる。


食べている最中、中西の視線が気になったがあえて触れないでおいた。


「龍星さん朝はパン派なんですね!」


俺の様子を眺めていた中西が急に口を開いた。


俺は肩をビクッと震わせ中西の質問に答える。


「ああ。一人暮らしだからな。飯を作る時間がねえんだよ」


「私も朝はパンなんです!」


俺と同じだったことがどんだけ嬉しいのか俺に満面の笑みを向けてくる。


「そうかい」


俺はそんな一言を残し席を立つ。


自分の部屋に向かうためだ。


「お前はここで待っといてくれ」


そう言うと中西は大きく頷いた。


俺は自分の部屋で制服に着替える。


カッターシャツとズボンを着るだけ。


それから鞄を手に取りリビングに向かう。


「お待たせ」


「龍星さんって準備が早いんですね!」


少し感心した様子で手をパチパチさせる中西。


準備にかかった時間は約20分。早くもなく遅くもないタイムなんじゃないだろうか。


「行くぞ」


「はい!」


俺と中西は一緒に家を出た。それから駅まで歩く。


駅に向かっている途中、中西が話しかけてきた。


「こんな早くから龍星さんと一緒にいられるなんて嬉しいです!」


ニコッと笑ってそう言った中西。


それを聞いた俺の顔は当然赤くなる。


俺はそれを隠すために中西から顔を背け口を開く。


「そうかいそうかい」


そんな何気ない会話をしているとあっという間に駅に着いた。一人で駅に向かっている時よりも早く感じる。


やはり誰かと一緒にいると時間が経つのが早い。


それから程なくして電車に乗車し学校に向かう。この感じも一か月ぶりだ。


電車に乗ると同じ学校の奴や違う学校の奴が視界に入る。


他の奴らは俺が休んでいる間にも学校に行っていた。休んでいたのは俺だけ。そう考えると何故か不思議な気持ちになる。


そんなくだらないことを考えていると目的の駅に着いた。


俺と中西は電車から降りてそれぞれの学校に向かう。


「それでは龍星さん! 久しぶりの学校、頑張ってください!」


中西はガッツポーズをしながらそう言った。


「お前もな」


俺はそんな言葉を残しこの場から去った。


数分後、懐かしい建物を目にする。


第3高校の校舎だ。


辺りを見渡すと同じクラスの生徒の姿もちらほらある。


しかしその生徒らに挨拶をされることはなかった。


まあ長期間休んでいたわけだ。話しかけづらいのだろう。


俺はそのまま靴箱に向かい上履きに履き替え教室に向かう。


教室の前に着くと入口の取っ手に手をやり扉を開ける。


するとクラスメイトの視線が一斉に俺に向いた。一か月前なら気軽に挨拶してくれるものの、今回のクラスメイトは俺と目を合わせてちょっと口角を上げるくらいだった。


俺はそんな様子のクラスメイトを目にしながら自分の席に腰を下ろしホームルームまで時間を潰したのだった。


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