第13話 最悪の始まり

俺は走ってある場所に辿り着いた。


そこは中西が通う第11高校。


ここに来たのはまたあいつがいじめられていると思ったからだ。


俺は11高校の校門の前に立ち辺りを見渡した。


しかしどこにも中西の姿がない。校舎の中かと思ったがそれはないだろう。


いじめているところを教師に見られる可能性があるからだ。


俺はすぐに走り出し次の目的地に向かう。


11高校からはそこまで遠くない場所なので数分で辿り着いた。


俺はそこで足を止め状況を確認する。


すると俺の予想は見事に的中した。


俺が今いる場所は前に中西を助けた場所、すなわち細道だ。


そこには多数のヤンキーに囲まれた中西の姿がある。


中西の表情は少し怯えていたものの、何かをされたってわけじゃなさそうだ。


俺は何もなかったことに安心して安堵の息を漏らす。


そして俺は口を開く。


「何やってんだよ」


俺の声を聞いたヤンキー達がこちらに視線を向けてきた。


「来たか」


ヤンキーの一人がそう言った。そのヤンキーとは前に俺の攻撃を一発喰らっただけで気絶した不死原健ふじわらけんだ。


健が立ち上がってこちらに向かってきた。


「雑魚が何やってんだ?」


その言葉を聞いた健は怒りをあらわにするわけでもなく落ち着いた表情でで口を開いた。


「へへ。お前に復讐するんだよ。前にやられたからな」


俺はその言葉を聞いて笑いを堪えることが出来なかった。


「お前が俺に復讐か? 笑わせんなよ。結果は前と同じだ」


俺はガン飛ばしながらそう言った。


しかし健は一切表情を変えずまた口を開く。


「それはどうかな? あの女がどうなってもいいんだな?」


そう言って中西を指さす健。


それを見て俺は確信した。今回の獲物は中西じゃなく俺だ。


中西は俺を誘き出すための餌。


そこまでして俺に復讐をしたかったと考えるとまた笑えてくる。


そこで初めて健の表情が変わった。


「てめえなめんなよ?」


そう言って健は中西の方に歩み寄った。


何かをするかと思ったがただ中西の横に突っ立っているだけ。


しかし次の瞬間健が大声を上げた。


「お願いします!」


健がそう言うとこの場にいたヤンキー達が道を開け始めた。


一体に何が起こるのやら。


俺は口角を上げながらその様子を見守る。


するとあきらかに他のヤンキー達とは雰囲気が違う一人の男が出て来た。


そしてその男を見ながら健が口を開く。


「この方が俺たちのリーダーだ! 名は血原 浩二ちはらこうじさんだ!」


「お前がリーダーじゃなかったのかよ」


俺は健を見ながらそう言った。


「俺はただリーダーという称号を借りてただけ。本当のリーダーはこの血原さんだ」


俺は血原に視線を移す。


確かにリーダーにふさわしそうだ。だが、俺の敵じゃねえ。


俺はゆっくりと血原に近寄った。


その様子を憎たらしい表情で眺める健。


俺は血原の目の前に立ち口を開く。


「よお。モブ。あんま調子に乗るなよ」


次の瞬間俺は血原の腹部目がけて蹴りを繰り出す。


その攻撃をかわすことも防ぐこともせず血原は喰らった。


「ぐっ」


そんなよわよわしい声が血原の口から漏れる。


「何で避けなかった。舐めてんのか? このモブが!」


俺は再び腹部に蹴りを繰り出そうとした。


しかしその時——。


「きゃあ」


そんな声が俺の耳に届く。


俺はその声の方に視線を移した。するとそこには健に踏みつけにされている中西の姿があった。


健がニヤッとして口を開く。


「人質がいることを忘れんなよ」


そう言って先ほどよりも強く踏みつけた。


「うっ」


中西からそんな声が漏れる。


「てめえ」


俺が健の方に歩み寄ろうとした時、背後から一発蹴りを貰った。


しかし俺は倒れることなく後ろを振り返る。


するとそこには血原が笑って立っていた。


俺に蹴りを入れたのは間違いなく血原だ。


「ちっ。めんどいな」


「さっきの蹴りを喰らって確信した。お前大したことないな」


血原が俺に向かってそう言った。


「何だと?」


俺は拳を強く握りしめ血原に近づく。


すると次の瞬間俺の横腹に何かが刺さった。


「かっ」


俺はその場に倒れこむ。


そして痛みがする部分に視線を移す。するとそこには一本のナイフが刺さっていた。


ナイフが刺さっている場所からは血が溢れ出ている。


「く、くそが......」


ヤンキーの下っ端が俺の横腹にナイフを刺したのだろう。その証拠に俺の目の前には怯えながら立っているヤンキーの姿があった。


血原はそのヤンキーを見て『よくやった』と言った。


俺は今すぐにでも反撃したいが体が思うように動かない。


ナイフで刺されたことは初めてだ。


刺された傷口は何故か体温が高いように感じた。どんどん感覚がなくなっていくみたいだ。


俺が動けないことをいいことに健や血原が、俺の体や顔面目掛けて何回も攻撃を繰り出してくる。


そのせいで俺の鼻からは血が出て目の上は青く腫れた。


体の骨も何本かは折れているんじゃないだろうか。


「くそが......」


今残っている力を使って口にした言葉がこれだ。


喋るだけでも体が痛む。


すると血原は俺の顔に自分の顔を近づけて口を開いた。


「お前はもう飽きた。次はあの女だ」


そう言って俺から離れていく血原。


その時俺は嫌な胸騒ぎがした。


「お、お前、な、にするつも、りだ」


俺がそう言うと血原はニヤッと笑い中西の方に向かった。


血原が近づいてきていることに気づいた中西が怯えながら口を開く。


「な、何をするつもり......。変なことは辞めて」


「別に痛いことはしねえよ」


そう言って血原は中西の目の前に腰を下ろした。


俺は最後の力を使い中西の方に顔を向ける。


俺のせいで中西が何かをされる。


「じゃあ始めるか」


そう言って血原は中西の制服のボタンに手をかけた。


「や、やめろクソども」


俺はそう言うのが精一杯。


しかし血原は俺の言葉に耳を傾けることはなかった。


血原は中西の制服のボタンをすべて外し終えた。


すると中から真っ白い清楚な下着が現れる。


「やめて」


中西の声は震えており目からは涙が出ている。


俺はこの状況を目にしても動くことが出来ない。


すると不意に中西と目が合った。


中西の目は俺に助けを求めているような気がした。


「くっそ」


俺は必死に体を起こそうとしたが血を流しすぎたせいか体に力が入らない。


俺がこんなにもたもたしている間も血原の動きは止まらない。


「なかなかの大きさだな」


中西の胸に目をやりながらそう言った血原。


「助けて龍星さん......」


震えた声で俺に助けを求めた。


「クソがぁぁぁぁぁぁ」


俺はそんな雄たけびを上げながら体に力を入れた。


するとてこずったものの体を起き上がらせることに成功した。


「はあはあ」


俺は息切れをしながらも血原の下に歩み寄る。


横腹に刺さったナイフは抜かずにそのまま刺さったまま。


その傷口から溢れ出ている血は一向に止まる気配を見せない。


けど俺は今持っているすべての力を使い歩いた。


「もう少し......」


俺の視界はもうぼやけていてほぼ何も見えない。


そしてついに俺はその場に倒れこんでしまう。


血原まであと5メートル程だったが惜しくも届かなかった。


「龍星さん」


中西の声が辺り一面に響き渡った。




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