第9話 放課後もめんどくさい

学校が終わり俺は靴箱で靴を履いている。


靴を履き終わると学校から出るために校門に向かう。


すると......。


「あ」


俺は思わずそのような声を漏らしてしまう。


その理由はというと......。


「こんにちは! 龍星さん!」


そう、俺が通っている学校の校門前に例の桃花が立っていた。


「何でお前がここにいるんだよ!」


「何でって、そりゃあ龍星さんを迎えに来たんですよ!」


その女は満面の笑みを浮かべてそう言った。


全く俺からしたら迷惑でしかない。


周りの視線も痛い。俺がそんな風に周りの視線が痛いと感じることは滅多にない。


「なんで鬼頭なんかが女と一緒にいるの」


「鬼頭きも」


「あの女の子可哀想」


そんな声が色々な所から聞こえてくる。


俺がこの桃花を呼び出したわけじゃないのに、何で俺がきもいとか思われないといけないのか。


そんな俺への悪口がこの桃花にも聞こえたのか首を傾げて口を開いた。


「何で龍星さんがあんなこと言われてるんですか?」


「俺もお前みたいにいじめられてるんだよ」


俺が冗談交じりにそう言うと、その桃花には冗談が通じらなかったらしく悪口を言っていた生徒の方へ歩いて行った。


俺はその様子をぼーっとしながら眺めた。


するとその女は何か話し始めた。


「龍星さんは悪い人じゃありません! とても優しい方です! だから今後、龍星さんの悪口は言わないで下さい!」


やや怒った口調でそう言った女。


「何この女。むかつくんだけど。てか、龍星って誰?」


相手の生徒もキレた口調で話している。


俺はこの状況をまずいと感じその桃花を引っ張って学校を出た。


「どうしました?」


学校から離れた場所に着くと女はそう訊いてきた。


俺はそんな表情に少しむかつき強い口調で話し始めた。


「余計なことすんな!」


俺がそう言うとその桃花は俯き口を開いた。


「すみません。龍星さんの悪口を言っている人が許せなくて......」


今にも泣き出しそうな声でそう言った。


けど俺はそんなことは気にせずに口を開いた。


「二度とこんな真似はするなよ。今日は帰れ」


そう言って俺は駅の方に歩いた。


するとその女が急に俺の鞄を掴んできた。


「何だよ!」


俺は少しキレ気味にそう言った。


するとその女はか弱い声で話を始めた。


「見捨てないで下さい。私龍星さんがいなくなったらどうすればいいか分からないです」


涙目で俺を見てくる。


俺は額に冷や汗を掻きながら桃花を見た。


——何なんだよこの女は。めんどくせえ。


俺はそんなことを思いながら口を開く。


「わーったよ。駅までなら一緒に行ってやってもいい」


そう言うとその女は満面の笑みを浮かべて『ありがとうございます』と言ってきた。


こうして俺のめんどくさい放課後が終わった。




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