第8話 めんどくさい女

桃花という女子高生を助けてから数日が経った。


あれから俺はめんどくさい事に巻き込まれている。


そのめんどくさい事というのは......。


「龍星さん! おはようございます!」


朝、俺が電車に乗ると必ずその桃花がいる。


「何で毎回毎回お前はいるんだよ」


俺は少し怒ったようにそう言った。


しかしその桃花は怖がることなく俺に話しかけてくる。


「龍星さんと電車で会えるなんてラッキーだな〜」


その桃花は満面の笑みを浮かべて俺に近づいてきた。


ラッキーと言っているが、絶対俺と一緒の電車に乗るために時間を合わせている。


「離れろ。女」


俺がそう言うとその桃花は頬をぷくーっと膨らませて口を開いた。


「女じゃありません! 桃花です!」


「お前なんか女でいいんだよ」


俺はややきつい口調でそう言ったが、その女は『にひひ』と笑みを浮かべた。


何が面白いのか全く分からない。


程なくして目的の駅に着いた。


俺は電車を降りて学校に向かう。


すると後ろから肩を掴まれた。いつもなら警戒するものの、今はもう誰か分かっているので警戒する必要はなかった。


「何なんだよお前は」


俺は後ろを振り向きながらそう言った。


そこにはさっきの女の姿がある。


その桃花は満面の笑みを浮かべて口を開いた。


「行ってらっしゃい龍星さん!」


「うっ」


流石の俺でも可愛い女子に『行ってらっしゃい』とか言われると照れてしまう。けど、顔には出さずにそのまま学校に向かった。


こんな風に『行ってらっしゃい』と言われたのは今日が初めてじゃない。助けたあの日から毎日のように言われている。


こうして俺のちょっとした朝が終わった。



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