第6話 中西桃花後編
学校が終わり私は凛音達に呼ばれた。
「ちょっと付き合ってよ」
関わってくるなって言ってきたくせに、向こうから関わって来る。
それを不満に感じた私だったが逆らえるわけもなく黙って従った。
そして私たちが向かった先は駅だ。
私が毎日利用している駅。
何が目的でここに来たのかは分からなかった。
するとそんな時ある人物が私の隣に現れた。
それは私が電車で一目惚れした男子高校生。
その男子が私の存在に気づきこちらを見てきた。
私も思わず視線をその男子に移してしまう。
すると凛音がこの状況を不審に思ったのか口を開いた。
「この人桃花の知り合いなの?」
そんな質問が私に飛んできた。
私はその質問に答えようとして口を開くが、話の途中で凛音に遮られてしまう。
そして凛音はその男子の下に歩み寄り口を開いた。
「ねえ、携帯の番号教えてよ!」
そう言った凛音。
すると男子高校生は迷わず口を開いた。
——やっぱ男子って、凛音みたいな可愛い女子を好きになるのかな......。
そんなことを考えた。
こんなにいじめられている私でも凛音の顔はとても可愛いと思う。
その男子は凛音に携帯の番号を教える。
そう思った時だった。
「興味ない。離れろ」
男子高校生はそんな言葉を言った。
その瞬間、心がスカッとした。
私のことをいじめていた女子が『興味ない』や『離れろ』と言われたんだ。
もしかしたらこの男子高校生に助けを求めたらどうにかなるかもしれない。
そう思った私は思い切って口を開く。
「あの! た......」
助けてって言おうとした時だった。またしても私の言葉が一人の女子に遮られた。
「行こうよ桃花! あんな人ほっといて」
そう言われ私は凛音達のあとをついて行った。
せっかく助かるチャンスだったかもしれないのに。
恐らく私が助けを求めることが分かったからこの場から離れたのだろう。
こうなったからには次会ったときにもう一度助けを求める。
私の中でそう決めた。
あの駅の出来事から数日が過ぎたある日、またしても凛音に呼び出された。
人っ子一人いない薄暗い細道に。
「金よこせや」
今回は女子だけじゃなく男子もいる。それもバリバリのヤンキー。
「今持ってないです」
同級生にもかかわらず、怖くて敬語を使ってしまった。
「そんなの信じられるかよ」
そう言ってヤンキーの一人が私を蹴り飛ばした。
そして私の鞄を探り財布を取り出す。
「本当に持ってないんです」
「目で確認しねえと分かんねえよ」
そう言ったヤンキーは財布を勝手に開け、中身を確認した。
中身を見たヤンキーは不服そうに口を開いた。
「本当にねえじゃねえか」
「嘘なんかつかない......」
私はわざとお金を持ってきていなかった。
お金があると取られてしまうからだ。
お金がなかったと分かれば早く解放してほしい。
ずっとそう思っていた。
しかし私の期待通りに事が進むことはなかった。
ヤンキー達が私の目の前まで歩み寄ってきた。
そして口を開く。
「金がないなら代わりにお仕置きしないとな。へへ」
それを聞いた瞬間私の目からは大量の涙が溢れ出て来た。
そして次の瞬間、ヤンキーが私の頬目がけて殴りかかってきた。
私はビビって目を瞑ってしまう。
すると、ヤンキーの拳が私の頬に届くより先にある声が聞こえてきた。
「そこ邪魔なんだけど」
その声を聞いた瞬間、そこに誰がいるか分かった。
そこにいたのは例の男子高校生。
「ああ? 何だてめえわ」
「だから邪魔だって言ってんだよ」
「んだとてめえ!」
そう言ったヤンキー達はその男子の下に歩み寄った。
しかしその男子高校生はピクリとも動かなかった。
ビビっているのだろうか。
そんなことを考えているとその男子は口を開いた。
「そういうことか」
それに反応してヤンキーも口を開く。
「ああ?」
「あんまそういうことはすんなよ」
そう言って男子高校生はこの場から去って行った。
助けを求めようと思ったがあっという間にどこかへ行ってしまった。
——またチャンスを逃してしまったな。
そう思った。
その後も私は酷い仕打ちを受けたのであった。
そして現在に至る。
「金くれよ」
前と同じヤンキーが私に向かってそう言った。
「嫌です」
今回は呼ばれたのではなく無理やり連れてこられた。
前と同じ細道だ。
しかし前と違う点があるとすれば、この場にヤンキーをまとめるリーダーがいることだろう。
そのリーダーの名前は
過去に軽く50人ほどの不良を半殺しにしたという。
まさかただのいじめからこんなやばい連中と関わることになるとは思ってもなかった。
「健さん。こいつどうしましょう」
一人のヤンキーがそう言った。
すると健が立ち上がり私の下まで歩み寄った。
そして口を開く。
「半殺しだ。あれよこせ」
その命令に従い一人のヤンキーが金属バッドを持ってきて健に渡した。
「本当はこんな武器は使いたくないが、お前は特別だ。喜べ」
そう言って健は思い切りバッドを振りかぶった。
こんな物で殴られたら骨が跡形もなく消し飛ぶだろう。
怖い。
誰か助けて。
そう思ったが口に出すことが出来なかった。
そしてバッドが私の頭上まで振り下ろされた時だった。
「ガンッ」
そのような鈍い音が辺り一面に響き渡る。私の頭は無傷だ。
「何だ」
当然健もこの状況に困惑している。
私も顔を上げ何が起こったのか確認した。
するとそこには驚くべき人物の姿があった。
「おいおい、女子にバッドはねえだろ」
「嘘......」
私は思わずそんな言葉を漏らしてしまった。
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