第5話 中西桃花

私の名前は中西桃花なかにしももかごく普通のJKだ。


普通の人と同じような学校生活を送り、普通に友達もいた。


高校一年生の時までは。


高校二年になると私の学校生活は今までとは全く違う物になった。


そうなった理由を話そうと思う。


高校二年になってすぐの出来事だった。


「桃花~、今日遊ばない?」


私の友達桐谷凛音きりたにりんねは遊ぶことが大好きで毎日のように私を誘ってくる。


もちろん誘われたら遊ぶ。けど、都合が悪い時などは遊ぶことが出来ない。


そしてその日は用事があり遊ぶことが出来なかった。


「ごめん! ちょっと今日用事があるんだ」


「そっか。分かった」


そう言って凛音はこの場から去って行った。


この頃用事が多く、遊びに誘われると高い確率で断っている。


もちろん悪いとは思ってる。けど用事があるのだから仕方がない。


私はそう思いながらそのまま帰宅した。


この時の私はあんなことになるなんて微塵も思っていなかった。


翌日


私はいつもと変わらず学校に登校した。


教室に入って自分の席に座る。


すると何故か、クラスメイトの視線がこちらに向いてるのが分かる。みんなが見ているわけじゃなく女子が見ていた。


そんな光景を目にした私はもちろん困惑してしまう。


そんな私は凛音に何でこんな状況になっているのか聞くために口を開いた。


「凛音! この状況どうしたの?」


私はいつもより大きい声でそう言った。


完璧に私の声は凛音に届いたはずだ。


にもかかわらず、凛音の返事が返ってこなかった。


それに違和感を感じた私はもう一度凛音の名を呼んだ。


「凛音!」


今度は私の声がちゃんと届いたのか凛音が私の方に視線を移した。


しかし私が見た凛音の顔は今までとはまるで違う顔だった。


汚物を見るかのように私のことを見ている。


私はその目を見て驚きを隠せないでいた。


すると次の瞬間凛音が口を開いた。


「うっさい」


たった一言の言葉を口にした。


しかし私はその言葉を聞いて心がえぐられるような感覚に襲われた。


額から汗が垂れてくる。


すると凛音が再び口を開いた。


「もう関わんな」


またしても短い言葉。


けど私はこんなに短くて破壊力のある言葉を今までで一度も聞いたことがなかった。


私は思わず凛音から視線を外してしまう。


そして俯いた。


私はその時嫌な予感がした。


そしてその嫌な予感は見事に的中した。


その日の放課後私は、凛音に声をかけた。


「凛音」


私の声を聞いた凛音は睨みつけるようにして私を見た。


「なに。関わんなって言ったよね?」


そんな態度の凛音に思わずビビってしまう。


けどこんなところで折れるわけのはいかない。


私は恐る恐る口を開いた。


「どうして避けるの?」


私は震えながらもそう言った。


すると凛音はニヤッと笑って私を見た。


しかしその笑顔は初めて見る笑顔だ。


とても怖かった。まるで殺人鬼のような目をしている。


そんな表情の凛音が口を開く。


「決まってるじゃん。一緒にいても楽しくない友達は必要ない。桃花この頃付き合い悪かったしうざかったんだよね」


私はその言葉を聞いた瞬間驚きを隠せなかった。


たったそれだけの理由で避けられていたのだから。


そんなことを考えていると凛音が再び口を開いた。


「なに? 何か不満そうだね。まあいいや。明日からが楽しみだね」


そう言って凛音はこの場から去って行った。


私は『明日からが楽しみだね』という言葉にとても恐怖を感じた。


何かされる。


先ほどとは比べ物にならないほど、体が震えた。


「怖いよ」


私は誰もいないことを確認してそう言った。






翌日


私は自分の席を見て驚きを隠せないでいた。


「何これ......」


思わずそんな言葉を口にしてしまう。


その様子を見ていた凛音が私の下にやって来て口を開いた。


「あれれ~。これどうしたのかな?」


凛音は笑いを堪えながらそう言った。


凛音以外の女子も同じように笑いを堪えている。


そんな態度からこんなことをしたのは凛音達で間違いないだろう。


こんなことというのは......


「その教科書どうしたの~?」


そう、私の教科書が全てビリビリに破かれていた。


私は教科書を学校に置いて帰る。


それが原因でこんなことになった。


「何でこんなこを」


「何? 聞こえないんですけど~」


そう言って凛音は声を上げて笑い始めた。それに続いて他の女子も笑い始める。


「このこと先生に言ったらただじゃ置かないから」


そう言って凛音は元いた場所に戻って行った。


私はその場に膝をついた。


今にも溢れ出てきそうな涙を必死に堪える。


ただ数回誘いを断っただけで始まった『いじめ』。


怖い。


帰りたい。


そんな気持ちが次々と現れ始める。


親に相談しようと思っても今一緒に住んでいない。もし一緒に住んでいたとしても相談なんか出来ない。


私は誰にも助けを求めることも出来ず、学校生活を過ごした。


しかしある時ある男子高校生を見かけた。


最初はただの男子高校生としてしか見ていなかった。


しかしその男子高校生を電車の中で見ているうちに気づいたら一目惚れをしていた。


顔はすごくイケメンだった。少し怖そうだったが。


話してみたいと思ったり、携帯番号を交換したいなとか思っていた。


いじめを受けていた私だったが一日の中で楽しみが出来た。


たまに学校帰りにも見かけることがあった。


その度に何故か、元気が出た。


そしてある日その男子高校生と電車の中で目が合ってしまった。


私は思わず見つめてしまう。


もし上手くいくと話せたりするかも、と思っていた。


しかしその思いは一瞬で打ち砕かれることになる。


その男子高校生は私のことを睨んできた。


その目はどこかで見たことがある目だった。その答えはすぐに思い浮かんだ。


凛音の目と似ていた。


私はその目に恐怖を感じ、思わず目を逸らしてしまった。


その瞬間私の中である思いが現れ始めた。


『死にたい』


一目惚れした男子にもあんな目を向けられてしまう。


そんなの酷すぎる。


そんな考えから生まれた思いだった。


その後私はその男子高校生のことは諦め、何も変わらない日常を過ごした。


お金は取られ、トイレ中には水をかけられる。机には大量の悪口を書かれる。


そんな定番ないじめを毎日された。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る