第2話 ボールでストレス解消
「はい、今から二人一組のグループを作ってラリーをしてください」
今は4限目の授業体育だ。
体育ではバレーをしている。
試合をする前のウォーミングアップとしてラリーをするってわけだ。
で、もちろん俺のペアは......
「鬼頭、また一人か。どうする?」
「一人で壁当てでもしますよ」
そう言って俺はボールを手に取り体育館の端っこまで移動した。移動している途中、他のクラスメイトからくすくすと笑い声が聞こえる。
まあ、こんなのは初めてじゃないし慣れているが。
ラリーをする時間はおよそ5分ほど。それが終わると試合が始まる。体育の試合ということもあり、レベルが低い。
けど俺は、そのレベルが低いことをいいように使い『ある』ことを毎回する。
程なくしてラリーの時間が終わり試合が開始された。
ぼっちの俺だが一応チームには入れさせてもらっている。自分から入れてと頼んだわけじゃなく先生が入れって言ったんだけど。
「ピー」
試合開始の合図が鳴る。
今回は相手からのサーブ。初心者ということもあり、コントロールが滅茶苦茶なボールが飛んできた。それも俺の所に。
まあ、これはわざとじゃないと思うが......。
けどボールが来たからにはちゃんと拾わないといけない。
俺は綺麗なフォームでボールをレシーブした。
そのボールは見事にセッターの真上に飛んで行った。
こんな風にバレーが出来るが、俺はバレー未経験者だ。自分で言うのは何だが、結構運動は出来る方だと思っている。
そんなことを思っているとセッターが珍しく俺の方へとボールを上げた。
普段全然俺の方へは上げないのに。恐らくミスだろう。
けど上げたからには俺が打つ。
そう思い俺は思い切りジャンプをした。
バレー未経験者にしてはなかなかのフォームなんじゃないだろうか。
そして俺は思い切りボールを打った。
床を目がけて......ではなく相手チームのプレイヤー目がけてだ。
俺の打ったボールは見事に一人のプレイヤーにヒットした。
「いって」
そんな声が体育館に響いた。
「そんなんもよけられねえのかよ。だせえな」
俺がそう言うとボールを当てられた生徒ではなく、そいつと同じチームだった生徒や俺と同じチームの生徒が色々なことを言ってきた。
「ぼっちがイキってんじゃねえぞ!」
「お前はただ人数合わせで入れただけなんだよ! 勝手な行動すんなや!」
色々な言葉が俺の方へ飛んでくる。
しかし俺は口角を上げニヤッと笑い口を開いた。
「黙れやモブども。ぴーぴーうるせえな! 次は俺のサーブだ。ボールよこせ」
俺はその場にいた生徒を見ながらそう言った。
そんな俺にビビったのか黙ってボールを渡してきた。
そのボールを手に取り、サーブを打つためにエンドラインまで移動する。
そしてまたもや俺は口角を上げにやりと笑った。
「ドンッ」
俺の手のひらが思い切りボールに当たった。そしてネットよりだいぶ低い高さのボールが一直線に飛んでいく。そのボールはまたしても一人のプレイヤーの後頭部にさく裂した。
「いって」
そんな声が俺の耳に届く。
そう、俺は端から相手チームのコートにボールを入れる気などなかった。
同じチームの奴の後頭部に当てるのが狙い。
これが先ほど俺が言っていた『ある』ことだ。同じチームの生徒にボールを当てて日頃のストレスを解消している。
「鬼頭!」
先生が俺の名を大声で叫んだ。
こんなことは初めてじゃない。コートから出ろという合図だ。
俺はそれに従いコートから退場した。
こうして俺の体育の時間は終わったのであった。
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