俺に彼女は必要ない

平翔

第1話 電車の中での出会い

俺こと鬼頭 龍星には仲の良い友達がいない。


高校二年にもなるが一人も友達がいない。


友達が出来ない理由が自分にも分からない。


学校では一人で昼飯を食って、一人静かに授業を受けるだけ。


他の奴らが楽しそうに昼飯を食っているのを見るとちょっと腹が立つ。


他の奴らが授業中わいわいしているのを見ると腹が立つ。


お前らだけ楽しみやがってとちょっと憎む。


まあ、こんな風に一人になったのは全部自分のせいなんだが。


けど何故か友達が欲しいとは微塵も思わない。


他の奴らが楽しそうにしていることを羨ましいとは思わない。


おかしな話だよな。


腹が立つのに羨ましいと感じないなんて。


そんな退屈な日々を送っている俺だったがある出来事をきっかけに大きく変わることになる。


それはある日突然の出来事。


いつも通り一人で学校に登校している時だった。


俺の家から学校はちょっと距離があり電車で登校している。


その電車の中で一人の女性に視線を奪われた。


全く見覚えのない女性だった。


しかし見た目は俺とためか一個下に見えた。


外見はとても可愛かった。美人というより可愛い系。


その女性をついガン見してしまう。するとその女性は俺からの視線に気づきこっちを見てきた。


俺の目と彼女の目が合う。


それに気づいた俺は目を逸らさず、睨みつけた。


自分から彼女に視線を向けていたのに気づかれたらといって、睨みつけるなど失礼にもほどがある。


しかし俺は彼女が目を逸らすまで睨み続けた。


すると彼女は慌てて俺から目を逸らした。それも普通に逸らすのではなくどこか怯えている様子で。


まあ、全く知らない男子にいきなり睨まれたら怯えるのが普通だろう。


彼女が目を逸らしたことを確認して俺は睨むのを辞めた。


その後、何事もなく電車を降り学校に向かおうとした。


しかし、またしても嫌な偶然が起こる。


「あ」


ある人物を見てそんな声を漏らしてしまう。


そう、俺の目の前には先ほど電車で目が合った女性がいた。


その女性は俺の声を聞くとびくびくしながら口を開いた。


「先ほどは失礼しました」


何回も頭を下げそう言ってきた。よっぽど俺に睨まれたのが怖かったのだろう。


けどこんな公共の場で謝られると人の目についてしまう。


それが嫌だった俺は無言でこの場から去った。


背中を向けていても彼女がこちらを見ているのが分かった。


しかし俺は無視をして学校の方へ歩いて行った。




あれから程なくして学校に辿り着いた。


学校に着くと毎回起こる恒例イベントがある。


それは......


「よぉ~龍ちゃんじゃなーい! 一人でどうしたのかな?」


俺はあだ名で龍ちゃんと呼ばれている。


大して仲が良いわけでもないのにそう呼ばれている。


で、俺のことを龍ちゃんと呼ぶこの男は杉山 光輝。俺と同じクラスだ。


俺がぼっちということを知っているくせに、一人でいる理由を茶化す様に聞いてくる。


それも朝だけ。学校生活では話しかけて来ることはない。


しかし朝だけでも俺はイライラしていた。むしろ朝だからイライラしていた。


俺はガンを飛ばしながら口を開く。


「失せろカス」


そう言って俺は教室の方に歩いた。


杉山もこれ以上言い返してくることはなかった。


まあ毎日こんな感じで会話は終わるんだが。そして次の日になると懲りずに茶化してくる。


そんなことを考えながら俺は口を開いた。


「今日も退屈な一日になりそうだ」









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