第12話よし、やるかッ!!
久々に実家で夜を過ごした翌日。みそ汁の匂いで目が覚めた。
ソファーから起き上がると、凝り固まった体をほぐすために体を伸ばす。
匂いの方に目を向けると、オープンキッチンで料理をしている姉の姿が目に入った。
俺より遅く寝たのに早く起きて料理をしていることに驚く。
そんな姉の姿を見て、ダラダラしてはいられないと意識をはっきりさせて挨拶をすることにした。
「おはよう」
「おはよう。よく寝れた?」
疲れなどみじんも感じさせない、明るい声だった。
「うん。ソファーでも熟睡できたよ」
姉とはいえ美人な女性と一つ屋根の下で暮らしているなんて、少し前の俺には考えられないほどの大きな変化だ。
親父と母さんが結婚したときも、そういった戸惑いや変化があったのだろうか?
想像がつかない。俺が小さい頃に母さんが亡くなったから、夫婦の姿を見たことがないのだ。姉が出現するまでは、そのことについて何も感じていなかったけど、今は少し寂しく思う。
もし、母さんが生きていたらどんな生活をしていたのだろうか興味が湧いてきた。自然と過去の改変に意欲が湧いてくる。
「姉さんはお仕事?」
「そう。もう出かけるよ。朝ごはん作ったから食べてね。お小遣いを置いておいたから、お昼はそこから使ってね」
「気を使ってくれてありがとう。そうさせてもらうね」
「素直に従って偉い! 夜は豪勢にしてあげるから、帰ったらダメ……だよ?」
「わかってるって。約束は守るから安心して」
俺の言葉に安心した姉が近づくと、軽く抱き着いてから、行ってきますと言って出かけてしまった。
アメリカのホームドラマのような自然な流れに俺は一切反応できずに終わる。
一緒に成長した記憶がないから勘違いしてしまいそうだが、姉……だよな?
「グゥ」
腹の音で思考が中断されてしまった……。仕方がない。まずは空腹を満たすか。
朝食にしては豪華な和食を食べることにした。
美味しい。体に優しい味がする。
仕事も料理もこなせる上に美人な姉が独身なのが不思議だ。そのおかげで俺が得をしているのだから文句はないけどね。
あまりにも快適すぎて堕落してしまいそうなのが問題で、このままヒモになってしまうのもいいかな? と妥協してしまいそうだけど、母さんは助けたい。さて、そろそろ気合を入れて行動するか。
「よし、やるかッ!!」
あえて声を出して立ち上がると、過去の手掛かりを探すために、親父の部屋だった場所に入る。
姉さんが片付けていたようで、物はほとんどない。俺の記憶にはない家族四人がうつった写真たてがテーブルの上に置かれているぐらいだ。
俺の成長具合からして、最後の家族写真かもしれない。
確か、社会人になってすぐに妊娠して俺が生まれたという話だった。写真を見る限りそのタイミングは変わってなさそうて、髪型といった見た目が記憶に残っていた母さんそのものだった。
部屋中を探したけど、結局、なにも見つからなかった。だが、もともと親父の部屋は期待していなかったので、落胆することはない。
入った痕跡を消すと、俺は姉の部屋に向かうことにした。
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