第3話
女の子は既に店を出ていたが、すぐに見つけることができた。女の子の日傘と、腰についた紅のリボンが教えてくれた。走って追いつき、肩を叩いて呼び止める。
「さっきはすみませんでした。お詫びに何か奢らせてください。」
側からしたらただのナンパ野郎だな。女の子も凄い警戒してるし。
「・・・結構です。」
「いやいや、まって、ね?じゃないとこっちの気が済まないんだ。母親から、女子供には優しくしろって言われてるんだ。」
嘘だけど。母親なんていないから。
無言。とにかく無言。3分は経ったかな?
「パフェ。」
「え?」
「カフェまどかのチョコレートパフェ。」
「わかった。」
店まで案内してもらう。落ち着いた雰囲気のアンティーク風のカフェ。入り口から一番遠いテーブル席に向かい合って座り、彼女はチョコレートパフェを、自分はコーヒーを頼んだ。
「ねぇ、名前は?俺は神代蓮。」
知ってるけどね。
「・・・白鳥瞳です。」
「そっか。瞳、さん?」
「さん、はいりません。」
「え?じゃあ、瞳ちゃん。」
やめてよそんなゴミ見るような目は。
「さっき、何の本を購入しました?いや、好奇心で。」
無言で紙袋から分厚い本を取り出した。
「・・・聖書?」
「はい。集めています。」
「へ、へぇー。こんなの読むんだ。」
「本ならなんでも読みますよ。文豪、百科事典、ライトノベルも。」
「本が好きなんですね。」
「あと、敬語、やめてください。私はあなたより年下なので。」
「そうなの?すっごく失礼だと思うけど、何歳?」
「普通女性に歳は聞きませんよ。本当に失礼ですね。16です。」
「今のかなりグサッときたよ。たしかに年下だけど。16ってことは高校生だよね。何処に通ってるの?」
「S校です。」
「え?あっちって、かなりレベル高いよね?すごいな。」
そこに関しては何も言わないんだ。
「じゃあ、お友達もたくさんいるのかな?」
「・・・居ませんよ。そんなもの。」
「えっと、親友しかいないってことかな?」
「違います。そもそも友の漢字が着くような人がいないんです。」
こーゆーときはなんて声をかけたらいいのでしょうか?
「じゃあさ、友達になってよ。俺と。」
「・・・良い心療内科をご紹介しましょうか?」
「遠慮しておくよ。あと、その毛虫でも見るみたいな目はやめてよ。傷つくから。一応言っておくけど、本気で言ってるからね?」
タイミング悪く店員がやって来る。パフェとコーヒーをテーブルに置いて去っていく店員の背中に怨念の眼差しを投げかけてから、彼女に視線を向ける。細いスプーンで一生懸命にパフェを口に運んでいる様子をしばらく眺めることにした。
正直言って、彼女と居て退屈ではない。本当に友達になりたいとか、そんなつもりはない。自分からして彼女はただのターゲット。それ以上でもそれ以下でも無いのだ。
Mortal 黒井 白梅 @kokuihaku
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