暗雲
25日、夕刻。
舎人と比留間は、小早川を連れてドラッグストアへ行き白昼夢の男性の面通しをする。
資料館での調査による報告で、男は今頭礼央と判明していた。
資料館の調査では上井戸鷹人という『妃陀羅の神子』が今頭礼央に先んじて崎原に住んでいたことが判った。
しかし上井戸鷹人は現在行方不明だという。
妃陀羅を崇拝する『はぐれ堂の末裔』たちにとって、崎原には何かしらの意味があるのだろう。
それは今後調査しなくてはならない。
舎人の報告では今頭礼央は、はぐれ堂出身者特有の突き出し気味の目とクセが強い巻毛の青年で細身の短身。こちらに気づいた様子はなく、気になるような怪しい素振りはなかったという。
中島はこの後、小早川は帰宅させて舎人と比留間には聡太郎の監視警護を命じた。
2人は山村邸に待機となる。
舎人と比留間が山村邸に入るタイミングで、小暮と榎本は日下と合流。
3人はそのまま、はぐれ堂に向かう。
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この後、中島はグールに接触するため瀬越丘陵北部の森に向かう。これを最後に中島とは連絡が取れなくなる。
23時53分、舎人から聡太郎が自室にいないと連絡が入る。
リビングに待機していた舎人と比留間は、23時45分頃に聡太郎の部屋から女性の声が聞こえてきたという。
聡太郎はその声と会話をしていた様子で声色からは通常通りの落ち着いた声だったらしい。
とはいえ事態は異常だ。
日下はいないし、私が訪ねてきた訳でもない。
2人は慌てて聡太郎の自室に飛び込んだ、しかし部屋は物毛の殻。
直様、中島に連絡するが応答がない。
そこで私に直接連絡してきた次第だ。
聡太郎には発信機を持たせており、GPSで所在の確認ができるようになっていた。
しかし受信機に反応はないという。とにかく2人には聡太郎の捜索を続けるように指示する。
都心部にいた私は車で崎原に駆けつけたが、到着した時は2時を回っていた。
途中、小暮に何度か連絡するが携帯は圏外になっているのか繋がらなかった。
私が崎原に到着して山村邸に入るのと略同時に舎人から連絡があり、GPS受信機に反応があったという。
場所は山村邸から直線距離で5キロほど離れている木津川の河原。
2人からの『現場に向かう』という報告を最後に、舎人と比留間とも連絡が取れなくなった。
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私は報告を待ち身動きが取れないまま、山村邸で夜明けを迎えた。
26日の早朝、留守番電話を確認した小暮から連絡が入る。
私は小暮に状況を説明、山村邸にて合流することにした。
3人が崎原に戻ってくる前に米国にいる北条に連絡するが、北条とも連絡が取れない。
北条は米国ボストンに住む協会の重鎮、ビリースタインに会いに行っていた。
ビリーとは直接連絡は取れないので、 日本での取り次ぎ役である藤原政宗に連絡を入れる。
藤原からビリー陣営に連絡を取ってもらうと、北条は現地時刻で23日には会談を済ませて24日には帰国しているはずだと回答があった。
もちろんビリー陣営は北条がそう言っていたという話を教えてくれただけで、直接北条が飛行機に搭乗したのを見た訳ではない。
北条から最後に連絡があったのが23日の21時、ボストンの時刻では8時だった。
北条も消息が絶えた。
中島も、舎人、比留間も。
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