母なるヒュドラ

ヒュドラはクトゥルフの眷属の一員だ。


同じ眷属とはいえ、深きものと呼ばれる水棲生物とヒュドラには圧倒的な力の差があり、深きものどもはヒュドラを崇拝の対象としている。

これはキリスト教のマリア信仰や、仏教の観音信仰に通じる構造だと協会では説明している。

つまりクトゥルフ教のヒュドラ信仰だ。


母なるヒュドラと称されるこの神性は、父なるダゴンと呼ばれる魔神の配偶神だと考えられているが確証はない。


ヒュドラもダゴンも姿が語られることはなく、名前だけが伝わってきた。


一説には巨大化した深きものどもの種族の長とも、種族という概念とは全く別の個体とも、大いなるクトゥルフが雌雄を顕現する時の応身だという説まであるが全て憶測の域を出ない。


謎が多い女神ヒュドラだがダゴンの配偶神として、ある一時期のニューイングランドで崇拝されていたと記録が残っている。


協会は、はぐれ堂の妃陀羅はこのニューイングランドで崇拝されていたヒュドラと関係があると考察している。

根拠は、はぐれ堂出身者の末裔たちに伝わり詠唱される祝詞だ。


『フングルイ ムグルウナフ クトゥルフ ルルイエ ウガフナグル フタグン』


『イア イア ヒュドラ フタグン』


この呪文は毎年、夏至と冬至に日に妃陀羅の信者たちによって詠唱されるのだが、ニューイングランドで崇拝されていたヒュドラも同じ詠唱によって信者たちに讃えられていた。


ヒュドラという名前は、ギリシャ神話に登場するヘラクレスに退治された怪物から引用されたのだろう。

ちなみにギリシャ神話の中のヒュドラは、巨大な胴体に9本または100本の首をもつ姿で、その中央の首は不死身であった。

首は切られても傷口から2本になって再生するという厄介な特性をもつ。

猛毒も備わっていて、ヒュドラが吐く息を吸うだけで人は死に、その寝床にも毒は残留する。解毒は不可能という凶悪な怪物として表現されている。


クトゥルフの眷属である女神に、何故ヒュドラと名が称されるのか?知る者はいない。

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