第九話 ボスが最後に残ると何かが出てくるのはもはや恒例行事である
新年明けましておめでとうございます。
昨年の6、7月に執筆を始めたばかりですがもう半年が過ぎました、時間が経つのははやいですねぇ。
今年は完結&書籍化を目指して日々更新と新しいお話を考えたりと頑張っていきますのでよろしくお願いします。
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「何ッ、人質だと!?」
(((人質!?)))
女頭領が人質を連れてくるよう指示を出すと、遺跡の奥から三人の手下と肌が白いエルフと肌が黒いエルフが縛られた状態で出てきた。二人のエルフは数日前に捕まってしまったと思われる、精神的にかなり参っているようだった。
「た、助けて……」
「動くんじゃねぇ!」
「ひっ……!?」
「よくもアタシの手下のほとんどをのしてくれたねぇ、ここは一つ大人しくしてもらおうか? さもなくばここにいるハイエルフとダークエルフを殺して、その首を元の場所に手紙付きで返してやんよ!『アースカイ王国はエルフを見殺しにした』ってねぇ!!」
「おいやめろ! そのエルフ達を離すんだ!!」
「離して欲しかったら武器を捨てて投降するんだね。不可視状態の奴らも大人しく言う事を聞いて魔法を解きな! 早くしないと……」
―ザクッ!
「あぐっ!?」
「ほれほれ♪」
―グリグリ
「イヤア゛アアァァァアアアアア!!」
「くっ……わかった」
女頭領が人質になっているハイエルフの鎖骨辺りにナイフを少し突き刺し、傷口を抉る光景を見せられたクラウディアは、女頭領の要求通り剣を地面に放り投げ両手をあげた。優之介とレミリアも不可視状態を解いて投降する。
「畜生……!!」
「人質なんて卑怯です!!」
「盗賊稼業に卑怯もクソもないんだよ坊やに嬢ちゃん。安心しな、お前達は殺さないであげる。不可視の魔法をたっぷり教えてもらってから奴隷送りにしてあげるからね♪ おい、さっさとそいつらふん縛りな!」
「お、お頭……」
「あ? どうした……!?」
女頭領は手下に優之介達を縛るように命じるが、命令された手下は女頭領を見て固まっている。
手下の様子に何かが起きたことは理解しているが、何が起きたかは理解できていない女頭領は周辺を見回した。その結果、手下が固まっている理由がようやく理解できた。
人質に取っていたはずのハイエルフとダークエルフの拘束が解かれ、見張っていた三人の手下の内、二人が地面に伸びていたのだ。そして無事でいる手下が女頭領に向かって拳を突き出してきた。女頭領は腕でガードするが後方に飛ばされてしまった。
「チッ……何をやっているんだい! 裏切りなら容赦しないよ!!」
「裏切り? 何を言ってるんですかお頭、俺は最初ハナからファントムなんて集団のメンバーじゃあないぜ?」
「シバ!!」「お義兄さん!!」「斬波さん!!」
なんと、残っていた手下の正体は斬波だった、亡霊盗賊団の姿に偽装していたのだ。
斬波は偽装を解くと素早く人質を抱え込んでその場から飛び退き、優之介達に檄を飛ばした。
「お前ら、人質は無事だ! 思いっきり暴れてやれ!!」
「ああ!!」「「はい!!」」
「あっ、てめ何勝手に―ぐえっ!?」
「人質が無事になった今、私の動きを制限できるものは何もない!!」
「てめぇあの時の小僧か! 今度はちゃんと殺してやるよ!!」
「そっちがその気なら遠慮はしないぞ!!」
「この女強えぇぞ!?」
「毎日特訓してるんだからぁ!!」
優之介、レミリア、クラウディアの三人は各々で残っていた亡霊盗賊団を倒していった。特に優之介は人を斬ることに対する迷いがなくなったお陰で、最初に亡霊盗賊団と戦った時とは動きが格段に良くなっている。優之介は瞬く間に数人の敵を薙ぎ払うとレミリアの応援に向かい、そこでも剣と魔法を使いこなして敵を倒していく。優之介が倒した敵は悶えていたり痙攣していたりしていたので、優之介は殺人まではしていないようだ。
(剣に鞘を被せるように魔力を覆わせると棍棒みたいになるのか、これで斬り殺す相手を選べるぞ!)
優之介が戦いの最中、ふと思ったその時だった。
―スキル【魔力纏】を取得しました―
優之介の脳内に世界の声が響く、今回はスキル取得の知らせのようだ。
「あっ今世界の声が響いた、【魔力纏】のスキルって斬波さんが使ってる?」
「あぁ、魔力を纏って防具みたいに扱うスキルだ。お前持ってなかったのか……」
「【魔力纏】のスキルは取得しておいたほうが良いぞ、持っているのといないのでは天と地の差ができる」
「うっ、精進します……」
「さて、残っているのは貴様だけだ。大人しく投降しろ!」
亡霊盗賊団のメンバーを全員倒した四人は残っている女頭領を睨みつけた。クラウディアが彼女に投稿するよう要求しているが、女頭領は要求を飲むどころか反発してきた。
「たかが手下が全員やられた程度で、誰が大人しく投稿するもんか!」
「四対一だぞ、勝ち目はねぇだろ?」
「一見するとそうだろうね。でも……」
―ゴゴゴゴゴゴ…………
「きゃっ……!?」
「地震!?」
「地震と言うより地鳴りだな」
女頭領が何かを言おうとしたタイミングで地鳴りが響き、辺り一面の景色を歪ませた。先程まで人質に取られていたハイエルフはこの光景を目の当たりにした途端、顔を真っ青にして女頭領に問い詰めた。
「ま、まさか……あの封印を解いたのですか!?」
「はぁ? 当たり前でしょう? 何の為にお前達を誘拐したと思ってるんだい? お前とお前の血が封印の鍵になっているのは知ってるんだよぉ!」
―ドオオオオオオオオン!!
「話を戻そうか、私一人とお前達六人、状況は一見すると私の方が不利だけど……」
「ゴアアアアアアアアアア!!」
「私とドラゴンならどうかなぁ?」
突然大きな物音を立てて遺跡が崩れたと思いきや、そこから胴の長いドラゴンが二頭出現した。ドラゴンの出現にレミリア、クラウディア、ハイエルフ、ダークエルフの四人は顔を青ざめさせているが、優之介と斬波は目をキラッキラさせて大喜びしていた。
「あぁ……なんてこと…………」
「まずい、各里のエルフを避難させないと!!」
「わぁ、ドラゴンだ! ファンタジーだ!!」
「いやぁ生きてるドラゴンに出会えるとはラッキーだなおい!!」
「「……えっ!?」」
「ふ、二人共何を言ってるんですか!?ドラゴンですよドラゴン! 出会ったら死を意味するんですよ!?」
「ドラゴンを相手に呑気な事を言うな! 気を引き締めろ!!」
「そっちの男二人はドラゴン相手に随分余裕だねぇ♪ その余裕、いつまでもつかな?」
レミリアとクラウディアの口ぶりからして、ドラゴンはとても恐ろしい生物なのだろう。しかし、野郎二人にとってはそんなことより、ドラゴンに会えたことによる感動の方が大きいので恐怖は微塵も感じられなかった。
「斬波さん、あのドラゴンは一人で一頭いきません?」
「おっ、それいいな♪ ドラゴンとのタイマンは勇者の醍醐味だもんな。いっちょやってやるか!」
「「「「「…………」」」」」
優之介と斬波の会話に周りの目は完全に白くなっていたが、そんな事はお構いなしに野郎二人は二頭のドラゴンを相手に闘志を燃やしていた。
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