第八話 副団長と不可視チーム、無双する


(隠れていることがバレた……!?)




 遺跡から出てきた女頭領がクラウディアに対し、出てくるよう要求をしてくる。しかもきちんとクラウディアが隠れている方向を見て言うのだからハッタリではないだろう。女頭領の言葉に乗るように亡霊盗賊団ファンタズマの見張り役も武器を構えて警戒心を顕にしている。ごまかすことは不可能と考えたクラウディアは剣を鞘から抜きながら木陰から姿を見せ、堂々と遺跡に近づいた。




「よくわかったな」


「探知系の魔法は大得意さね。ふーん噂以上の美人だねぇ」


「だったらなんだ?」


「ドルジの奴も言ってただろうけど、お前も奴隷として売り飛ばせばたんまり金が入ってくるだろうねぇ♪ お前達、生け捕りにしな!!」


「「「へい!!」」」


「……ッ!?」




 女頭領の号令で遺跡からゾロゾロと亡霊盗賊団のメンバーが出てきてクラウディアを取り囲んだ、その数はおおよそ三十から四十の間くらいだ。しかし、クラウディアの表情は余裕のままだ。




「これだけの大人数なら暴れ甲斐がありそうだな、我が名はアースカイ王国近衛騎士団副団長クラウディア・フォン・ローゼン。亡霊盗賊団で良かったかな? 貴様らは私達が成敗してくれよう!」


「あ、やっぱりお仲間が居るのね? でも変ね?気配は感じるけど姿が全然見えないのよ。でもいいわ、やっておしまい!!」


「「「おおおおおおお!!」」」


「一人で乗り込むとは良い度胸だぜぇ!」




 女頭領の号令で亡霊盗賊団が一斉にクラウディアに襲いかかる。全方向から敵が攻めてくるこの状況に、普通の人間なら硬直してしまうはずだがクラウディアは呼吸を整えたら剣を構え、神経を集中させタイミングを見極めると瞬時に魔法を発動させた。




「【肌を切り裂く冷酷な強風サイスウィーゼルブリザード】」




―ザシュ! ザシュ!




「ぐわああああ!?」


「つ、冷てぇ!?」


「【身体強化】、【魔力纏】はああああっ!!」




―ザンッ! ザシュッゥ!!




(クラウさんすごっ!?)


(王国最強なだけありますね……)


(俺らいらねぇんじゃねぇか?)




 クラウディアは四十人近い盗賊を相手に、魔法で自身を中心に冷たい強風を巻き起こし牽制すると、今度は【身体強化】の魔法と【魔力纏】のスキルを重ね合わせ、自身を強化してからバッサバッサと敵を切り伏せていく。剣で向かって来る敵には剣を、魔法を撃ってくる敵には同系統の魔法で相殺か返り討ちにしていてまさに無双状態だった。アナタ六人はキツいとか言ってませんでしたっけ?




「あぎゃあっ!?」


「へ? 何やってんだ? おごっ!?」


「なんだなんだ!?急に仲間が倒れていくぞ!?」


(ユウノスケ達か、私の邪魔にならないように気遣ってくれいるのか? 助かる)「余所見をするな! 貴様らの相手はこの私だぁ!!」


「「「ぎゃあああああああああああ!!」」」




 本気になったクラウディアは敵味方関係なく巻き込む癖があると考えた不可視状態の優之介、レミリア、斬波もクラウディアの援護をするため、戦いの輪に入っては次々と亡霊盗賊団のメンバーをなぎ倒していく。何もないところからいきなり攻撃が繰り出されるその光景は、奴ら亡霊盗賊団の統制を奪うのには十分で、既に亡霊盗賊団の面々は混乱状態に陥っていた。




「チッ……。いるのはわかっている! なのに姿が全然見えない!!何故だ!?お前達! そことそこに誰かがいる! 殺れ!!」


「そりゃっ!!」




―ヒュンッ!




「あれ……? ゴフッ!?」


「痛ぇ! 俺は味方だ!!」




 女頭領が指示する場所に向かって手下が武器を振るが、空振りしたり他の手下に攻撃が当たってしまい益々収集がつかなってしまった。不可視状態組みも常に移動しながら戦っているので当てずっぽうな攻撃が簡単に当たるはずがなかった。


 イラつきが込み上がる女頭領は次の手を打つ。




「おのれちょこまかと……。こうなったら、おい! 人質を出せ!!」

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