第六話 エルフ飯は素材の味


「作戦会議と言っても具体的な案が出ませんね」


「……そうだな。敵の戦力が把握できない以上、先ずは偵察して情報を探る他ないだろう」


「私もシバと同じ意見だ、私達を襲撃してきた輩は二十人程いたがあれが全員だとは限らない。それに今現在我々が持っている情報が少なすぎる、やはりここは偵察だな」


「でもどうやってこの広い森の中を探すのですか? 犯人はおそらく【隠匿魔法ステルス】の使い手ですよ?」




 レミリアが「ローブ仮面集団は【隠匿魔法ステルス】が使えるのでは?」と意見した。【隠匿魔法ステルス】とは文字通り自分の存在を認識されにくくなる魔法で、野郎二人の【魔力反響定位エコーロケーション】やレミリアの【探索サーチ】等と言った探し出す魔法とは真逆の効果をもたらす魔法だ。




「ユウノスケの【魔力反響定位】とレミリアの【探索】魔法に何の反応もさせず接近してみせた奴らだ、きっと【探索】も使えるだろうな……」


「ではどうすれば……」


「「「う~ん……」」」




 優之介、斬波、レミリア、クラウディアの四人は頭の悩ませる。誰も言葉を発しないまま数分が過ぎた頃、優之介がポツりと言い出した。




「あ……、あれならいけるかも」


「「「…………?」」」




 優之介は何かを閃いたようだが、どのようなことを閃いたかはわからない。一人でニコニコしている優之介に対し、他の三人には不思議そうな表情で優之介を見つめるばかり、優之介は小さな声で皆に耳を近づけるように指示をしてそっと耳打ちをした。




「俺、面白い魔法考えついちゃいました♪」






――――――――――――――――――――






 作戦会議を終えた優之介、斬波、レミリア、クラウディアはアインに呼ばれて村の広場にやって来た。そこではエルフ達が楽しそうに食事の準備をしている様子だった。まるで絵本の中の一ページの様な光景に四人は目を輝かせながら眺めていると、アイン、カイン親子がやって来て四人に声を掛けた。




「今日はささやかではありますが宴の席を設けました、どうぞ食べていってください」


「気持ちはありがたいが、よいのか?」


「貴重な物資を支給してくださった礼と、ここ最近里の女子供は里の外に出してないので少しストレスになってましてね。宜しければ森の外の話し等を聞かせてやってくれませんか?」


「そう言う事ならご相伴にあずかろうか、なぁクラウ?」


「あぁ、そうだな。ご馳走になるよ」


「わぁっ、実は私エルフの料理は初めてなんです。楽しみです♪」


「へぇ、どんな味がするのか俺も楽しみになってきたかも♪」




 四人は今日の晩御飯をエルフ達からご馳走になった。エルフが作る食事は見た目こそ殆ど人間が作る料理と大差なかったが、味付けは薄めの味付けだった。カイン曰く「人族と調味料の交易をする前は素材の味だけの料理だった」らしく、それを聞いた斬波は「俺も時々ドレッシング無しサラダを食うから問題ない」と言って周囲を笑わせて雰囲気を和ませていた。


 クラウディアはクラウディアでエルフの女性たちに囲まれ、恋バナ? に花を咲かせながら食事をしている様子だ。




「クラウディアさんは恋人はいないんですかー?」


「恋人はいないな、私は貴族の家柄なので自由に恋愛ができないんだ」


「それはつまらなそう~」


「ふふっ、だが私は自分の意思を強く主張した結果、半ば独立したから恋愛は自由にできるぞ♪」


「「おぉ~!」」


「早く恋人ができると良いですね~♪」


「あぁ、そうだな」




 エルフの女性達は他にも「どうしたら胸が大きくなるの?」「人族なのにすっごい美人! なにか綺麗になる方法はあるの?」とクラウディアに質問しているようで、その質問に対しクラウディアは完璧な答えを返答してみせた。




「物知り~♪」


「私は様々な知識を頭に入れてきたつもりだがまだまだのようでな、今言ったことも教えてもらったものだ」


「教えた人はもっと物知りなんですね♪」


「そうだな、教えてくれた人は私が知らないことをもっと知ってるだろうな。私はそんな知識が豊富な人を伴侶にしたいんだが、これがなかなかいなくてなぁ~?」(チラッ)


「…………ングッフ!」




 優之介は(こっちの医学は進歩してるのかな?)と思いきや、クラウディアがわざとらしく言い、横耳で聞いていた斬波がいきなりむせるので、クラウディアに知識を吹き込んだ犯人をお察しした優之介は苦笑いだ。




「……ご馳走さん、明日は早いからもう寝る」




 クラウディアの言葉を聞いた斬波はいたたまれなくなったのか、輪を外れてアインの家に戻ってしまった。




「シバ……全く、お前ってやつは」




 クラウディアはアインの家に戻っていく斬波の背中を寂しく切なそう見つめ、ただ見送ることしかできなかった。




「ユウノスケさん、クラウ様はお義兄さんの事……」


「好きなんだろうね」


「あれじゃあクラウ様が可哀想です!」


「斬波さんも気づいてないわけじゃないと思うけど……」






――――――――――――――――――――






「俺には恋だの愛だの、そんなもんは要らないんだ……」

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