第七章 エルフの森へ

第一話 グランドマスターからの依頼


「ささっ、座って頂戴♪」


「「「失礼します(する)」」」




 ララノアの案内で彼女の執務室に通された優之介、斬波、レミリアの三人は中央にある長いソファに三人並んで座る。三人がソファに座った事を確認したララノアは、三人とは向かいになっているソファに優雅に座り背伸びをした。




「さて、本題に入る前にほんの少しだけ待ってね、今お茶を淹れるから♪」




 ―コンコンコン




「失礼します、ソヘル商会護衛並びに王城での商品説明依頼完了手続きが完了したので報酬をお渡ししに来ました」


「まぁ、もう終わったのですか?」


「ユウノスケさんとシバさんと言い合ってる間に事務処理はしていたので♪ こちらが報酬です」




 ララノアがお茶を淹れてる最中に手続きを終えたマリィが報酬を渡しに執務室に入り、三つの革袋をそれぞれ優之介達の前に置いて報酬の説明をした。




「依頼主のウラド会頭からユウノスケさんとシバさんには大銀貨二十枚ずつ、レミリアさんには大銀貨十枚と金貨五枚が用意されています」


「えっ、私にだけ金貨五枚も……!?」


「ウラド会頭はこう仰言いっていました。『成り行きになるだろうけど、これから娘はあの二人の青年と行動をするだろうから支度金として渡してやってくれ』と」


「お父様……」


「お二人への伝言も預かっていますよ、『娘をよろしくお願いします』ですって♪」


「おいおい、俺らの旅にレミリアがついてくるのは確定かよ。まぁ今更無理矢理ここでお別れだなんて言えないしな……」


「そうですよお義兄さん♪ 私、どこまでもついていきますからね!!」




 ウラドが根回ししてあった結果、レミリアが正式に優之介と斬波の旅に加わる事になった。野郎二人のパーティに一輪の花が咲いた瞬間である。




「パーティ名は後で考えてね。はい、私特製のミルクティーよ♪」


「「「いただきます」」」


「それじゃ、報酬の受け渡しもおわったからいよいよ本題に入らせてもらうわ。お茶を飲みながらで結構よ。私からの話は……」




 ララノアからの話の内容は要約すると優之介と斬波の実力を測る為の依頼を受けて欲しいと言うものであった。


 ララノア曰く”飛び級の昇格は珍しくないが冒険者登録をして、僅か二日目でCランクに飛び級は規則的に問題ないけど異例である事”、”オーガやホブゴブリンウォリアーの様な高ランクの魔物を討伐した実績はあるが、こなした依頼数が少ないが故に実力とランクが合っていない疑念がかけられている事”等を踏まえて認定試験がてら、ララノアからの依頼を受けて欲しいとのことだった。




「王都に傷なしオーガの死体が運ばれた時には驚いたわ、でもやっぱりグランドマスターとして貴方達の実力をはっきりと見ておきたいのよ」


「「グランドマスター?」」


「ユウノスケさん、お義兄さん、グランドマスターとはギルド本部のマスターの事で、国内の冒険者ギルド支部のギルドマスター達の統括でもあるんですよ」


「レミリアさんの言うとおり、私はギルドマスターの統括もしてるの。貴方達の事はセドリックからの手紙に書いてあったわ、まるで子供の様に好奇心旺盛ですって」


「あはは……」「お、おぅ……」


「そんな好奇心旺盛な二人とお淑やかなお嬢様に受けてもらう私からの依頼はこれよ♪」




 ララノアがそう言うと一枚の紙を優之介達の前に差し出した、紙にはこう書かれている。




 依頼名:エルの大森林調査


 依頼人:ララノア・エル・ユグドラシル


 依頼内容


 アースカイ王国はアースカイ王都から北の方角にあるエルの大森林に里を築くエルフ達と交易を結んでいるが、ここ数日エルの大森林で異変が起こっている。


 エルフの里に向かう商人やエルフの里から出ようとするエルフが森林内で何者かによる襲撃に会い、商品や人的に被害が出ているのだ。既に行方不明者や死者が発生している現状に王国も事態を重く見ている。


 よって王国はエルの大森林で何が起きているのかを調査、そして解決して欲しいとこれを冒険者ギルドに依頼する事とした。


 この依頼を受ける冒険者は心して依頼に臨んでほしい。




 報酬:ランクアップ、パーティ各員に一人ずつ金貨十枚の配布、その他実績によって応じた報酬を支払う




 三人はララノアから出された依頼書を読み終えると、ふぅと一息ついて考え込む。少し時間が経って一番最初に口を開いたのはレミリアだった。




「認定試験に国からの依頼を持ち出すのは重過ぎです」


「そのへんの心配はしないでいいわ、認定試験は私が勝手にそう呼んでるだけだから」


「でも……「待ってレミリア」」


「ララノアさん、俺達三人で森林の調査なんて無謀過ぎませんか?」


「エルの大森林は広いわ、三人ではとても調査しきれないのは事実。でも実際はエルフの里までの道の安全を確保してくれればいいのよ。勿論、失敗しても有益な情報を持ち帰れたら情報料を払うわよ」


「俺ら以外の冒険者がこの依頼を受けた事は?」


「BランクのパーティとCランクのパーティが受けたけど失敗に終わったわ」




 優之介達が受ける前に二つの冒険者パーティが依頼を受けたが全滅してしまい、今現在ではこの依頼を自ら受けてくれる冒険者はいないらしい。


 ララノアは「どうする? 受けて欲しいとは言ったけど強制じゃないわ」と優之介達に問いかけ、レミリアは「ユウノスケさんとシバさんにお任せします」とだけ答えた。この依頼を受けるか受けないかは優之介と斬波に委ねられたわけだが、野郎二人の答えは決まっていた。 




「「この依頼、受けさせてもらいますよ!」」


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