第二話 出発予定時間がズレちまったぜ……


 優之介、斬波、レミリアはララノアからの依頼を受け、アースカイ王都から北の方角にあるエルの大森林に向かうこととなった。


 三人は王都で必要な物の買い出しに向かったが、魔法鞄の容量がいかんせん物足りなくなってきていた。王都内にある道具屋に何か良い方法はないか? と聞くと道具屋の店主が「魔法鞄は【魔力操作】のスキルを持っている人なら拡張と縮小の両方が可能ですぞ」と教えてくれたので、優之介と斬波が早速その場でやってみると魔法鞄の容量がぐんぐん広くなり、魔法鞄の鑑定結果が変わった。




 【魔法鞄 大】


 マジックバッグとも言う、鞄の中は空間魔法によって広げられている為、鞄よりも大きな物を収納して持ち運びする事が可能。


 収納サイズは二十メートル四方。




 ソフィーリアからもらった【魔法鞄 小】は容量が五メートル四方だったので、今回の拡張で四倍の容量を得たことになる。これでたくさん荷物を抱えつつ素材採集もできるようになり、優之介と斬波はテンションが上がった。


 必要な道具を買い揃え、服を追加購入し、防具も新しく頑丈で機能性に優れたものに新調して準備が整い、エルの大森林にいざ行かんとする優之介、斬波、レミリアだったが……。






――――――――――――――――――――






「私も行きますわ!!」


「殿下、いけません。今回ユウノスケ様がお受けになられた依頼は大変危険なものです、そのような依頼に殿下を同行させるわけにはいきません」


「タマキの言う通りだソフィー、ソフィーがついていけば間違いなく足でまといになるし、一国の王女である君に何かがあっては私達の首も危うくなるのだぞ」


「うぅ……」




 優之介と斬波がもらった防具を返しに王城に行ったついでに、ソフィーリアに今回の依頼の事を話したらソフィーリアが私も同行すると言いだしたのだ。


 タマキとクラウディアが止めにかかるがソフィーリアは諦める様子を見せない。




「お父様には弟か妹が欲しい、なるべく弟が欲しいと言ってありますから何も問題ありませんわ!」


「殿下ェ……」


「そう言う問題ではない!」


「私も同行できるようにお父様に直談判しますわ!!」


「……おい! 殿下をこの部屋から一歩も出すな!!」




 半分暴走状態のソフィーリアを見て何かやらかしかねないと判断したクラウディアが部屋の外側にいる兵士に命令し、何が何でもソフィーリアには大人しくなってもらうように体勢を整える。ソフィーリアが「いーーやぁーーー!!」と喚くがタマキもクラウディアも聞く耳を持たなかった。




「はぁ……すまない、ユウノスケ、シバ、レミリア嬢。ソフィーが駄々をこねてしまった」




 優之介、斬波、レミリア、クラウディアの四人はひとまずソフィーリア、タマキと二人の兵士を置いて部屋から出て大きく息を吐いて肩の力を抜いた。


 優之介、斬波、レミリアは苦笑い程度で済んだが、ソフィーリアに振り回された経験があるクラウディアは超絶美しい顔には疲れが出ていた。




「あはは……、大変そうですね…………」


「別にお前が謝る事じゃないだろ、気にすんな。胃に穴が開かないようにストレスは程良く発散しとけよ」


「レミリア嬢なんてお止めくださいクラウディア様、私は平民ですよ? 私は全然気にしておりませんのでお気遣いなく」


「そうか、それではレミリアと呼ばせてもらおうか、私の事は好きに呼んでもらっても構わないぞ。はぁ……、私は少し休憩してくるとしよう。君達はこれからエルの大森林に向かうのか?」


「はい、距離がかなりあるらしいの「でしたら明日の明朝に出発なさっては!?せめて今日は泊まってくださいまし!!」」




 ララノア曰く、エルの大森林に向かう為には街を三つほど経由しなければならないほどの距離があるらしい。優之介達は三人で話し合った結果準備が整えば直ぐにでも出発する予定だったが、ソフィーリアが駄々をこね、優之介達を引き止めたせいで出発は明日の明朝になってしまった。


 クラウディア曰く「今現在、エルの大森林とエルフの里を行き来する事に規制がかかっているから明日の明朝でも問題ない、むしろそっちの方が野宿せずに街に到着できるから都合が良いだろう」との事なので三人は(まぁ、いいんじゃないか?)と空を遠い目で眺めて考えることをやめた。


 因みにこの日も王城で一夜を過ごした。王都に来たとたん、自分の娘が王城に泊まる事に理解が追い付かないウラドは頭痛に悩まされっぱなしだとか……。






――――――――――――――――――――






 翌日、日が昇り始まる頃、優之介、斬波、レミリアの三人は王城の正門前にいた。




「あ゛ぁ゛……、ソフィーもレミィも俺の取り合いはよしてよ…………」


「す、すみません……」




 前日、例に漏れることなくソフィーリアとレミリアによる優之介の取り合いが発生したようだ。取り合いの最中、ソフィーリアとレミリアが優之介に対し自分の事を愛称で呼ぶことを強要したため、彼女達に対する優之介の呼び方が少し変わっている。ソフィーリアに関しては”さん”付けしてないだけだが……。




「それにしても、なんか懐かしいな……」


「俺もそう思ってたところだ、城を抜け出した頃を思い出すな……」


「今度は私もいますよ♪」


「そうだね、それじゃあ行こうか」


「おう!」「はい♪」




 優之介の合図で出発しようと歩き出したその時だった。




「待ちたまえ」




 突然後ろから声がかけられたので三人が振り返ると、そこには荷馬車に乗っているクラウディアの姿があった。




「突然で申し訳ないが、君達の依頼に同行させてもらう」


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