閑話 私の名前はタマキさん、趣味は色恋を応援してあげることです♪
五年ぶりの再会を機に斬波と葵は話に花を咲かせるが、一区切りした段階で斬波は足早に退室してしまった。
葵は「もう少し話したかったのに……」と寂しそうにぽつりと言うと、タマキが自分の分の紅茶を淹れて葵の正面にスッと座って「それでは私がお話相手になりましょう」と薄く微笑んだ。
タマキは紅茶を一口飲んでから言い出した。
「シバ様は近いうちにクラウ様から求婚されるでしょう」
「どっ、どどどどうして!?」
「クラウ様の求める男性像がシバ様そのものだからです」
「い、いぃぃやいやいや。クラウは公爵家令嬢ですよね? そして彼女自身も貴族当主だよね!?」
タマキが発言した第一声がまさかのトンデモ発言だった。いきなり爆弾のようなものをパスされた葵は慌て蓋く、彼女の口の中に紅茶が含まれていなくて良かった。
「貴族の女性で二十歳になりながらも未婚は行き遅れとのお考えが主な王侯貴族の男子たちは、二十歳以上の女性と婚姻を基本結ぼうとしません。しかし、貴族の中で最も位の高い公爵家の長女で国内で一、二を争う美しさを誇るクラウ様ならば話は別でした」
「……別でした?」
何やら含みのある言い方をするタマキに対して、葵は「詳しく!」と話の続きを要求した。
タマキは紅茶を一口飲んで一息ついてから話を続けた。
「二、三年程前まではクラウ様に縁談の話が山のように来ていました。しかし、クラウ様はそれらの話を全て蹴って次のように述べました……」
「『私を娶りたいのであるならば、私に一騎打ちで挑み勝つ事、私の問いに完璧に答える事、この二つの条件を見事に果たし私を惚れさせてみよ』と……」
「それで斬波がお眼鏡にかなったって事?」
「はい、クラウ様との婚姻を望む男子は挑みますが一騎打ちでは勝てず、問いにも答えられず、数多の脱落者を出す結果となりました。やがてこの試練に挑む方もいなくなってしまった中で、斬波様は見事に果たされました。星が光る原理、地平線が弧を描いて見える理由、シバ様から聞いたときは私も感心しました。一見冷静に見えるクラウ様ですが、心の中はメロメロかもしれませんね。アオイ様、早くしないとシバ様に振り向いてもらえなくなりますよ」
確かに斬波は先程タマキが言ったクラウディアの結婚相手の条件にあてはまる。一騎打ちに関しては訓練だったこともあり再戦もありえるが、問いに関しては文句なしの合格だ。
タマキから「早くしないとシバ様に振り向いてもらえなくなりますよ」と言われた葵が内心焦り出す中、タマキはにっこりと笑って葵に微笑んでこう言った。
「私、アオイ様の事は応援しています。真面目で心が綺麗なアオイ様の色恋、ぜひ実らせてみたく存じます」
「ちょ、ちょっとやめてよ……!!」
「あら、違わないのですか?」
「ち、違わなく……ない、けど…………」
「でしたら、その気持ちは前面に出していきましょう。この国の恋愛は男性も女性も好きな人ができれば積極的ですから♪」
「そ、そうなの?」
斬波と葵のやり取りや会話を見て聞いてたタマキから見れば、葵は斬波に対しある程度の好意を持っていることは明白だった。斬波も楽しそうに話していて満更でもなさそうだ。
しかし、異世界から来た勇者達は色恋沙汰には鈍い、消極的であると思っているタマキは、関係が発展する方法を楽しそうにアドバイスしてあげた。
「はい♪ 先ずは手始めにこのままシバ様のお部屋に行って……」
タマキは葵の耳元で囁いた。タマキの提案した手段を聞いた葵は恥ずかしさが一周して冷静になりタマキに突っ込む。
「手始めにやることが大胆すぎる」
「何をおっしゃるのですか? 結婚すればお互いに生まれたまm「いいからいいから! そういうのは言わなくていいから!!」」
「では、できますね?」
「うぅぅ……」
「無理して告白する必要はありません、ただ黙ってすれば良いのです♪」
タマキは葵に斬波が泊まっている部屋に忍び込み、ある事をするよう指示した。タマキから指示を受けた葵は顔を赤くしながらも「わかった! 頑張る!!」と言って、カップに入っていた紅茶を一気に飲み干して部屋から出て行った。
「行ってらっしゃいませ♪」
「…………」
「自由に恋愛が出来るのに想いを素直に伝えられないなんて贅沢ですね、王侯貴族階級の方々は親が決めた相手と政略結婚を強いられる事が多いのに……」
「それを考えれば殿下もクラウ様も幸せ者ですねぇ……しかもお相手は異世界の勇者様ときました、これでは物語の中に登場するお姫様そのものではありませんか。羨ましいです……」
「ですがまだ確定したわけではありません、私が敬愛し親愛する方々がハッピーウェディングになるよう私が全力でサポート致します!!」
私の名前はタマキさん、王女専属のメイドさんです、恋のサポートもできるメイドさんです♪ 色恋に悩みのある方、私がご相談にのりますよ♪
「うーん……、そろそろ私のところにも王子様が来てくれませんかね…………」
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