第三話 満天の星空の下、三人は語らう


 夕食が終わって片付けを済ませたら就寝するわけだが、今回は優之介、斬波、レミリアの三人と、護衛二人ずつの三班編成で見張り番をすることになった。




「三人で毛布にくるまっていると暖かいですね♪」


「あぁ、そうだな……」


「そうだね」




 三人は横一列に右から優之介、斬波、レミリアの順番に並んで丸太にもたれかかっていた。見張り番とは言え斬波が【魔力反響定位エコーロケーション】の魔法を常時発動させているので、何かが起これば斬波がいち早く察知するので緊張感は全くない。




「似たような魔法で【周囲索敵サーチ】がありますけど、シバさんの魔法は完全に上位互換ですね……。どんなイメージなんですか?」


「超音波だ、コウモリ等が発生する人が聴くことができない音で物体間の距離、方向、速さ、大きさを測るようにそれを魔力で代用しているんだ」


「シバさんはすらすらとお話しているようですけど、私には理解できませんね……」


「後で教えてやるさ」


「そういえば青い炎の出し方もまだ教わってません」


「……」(ギクッ)


「ゴロツキ達を眠らせた魔法のイメージもまだ教わってません」


「……わかったわかった、ちょうど良い機会だから全部教えてやる」




 この機会に斬波はレミリアに酸素についていろいろ教えてあげた、最初は「え? 私達は吸っているのは空気じゃないんですか?」と理解に苦しんでいたが、斬波が優しく丁寧に教えたかいあってレミリアは空気と言うものが理解できた。




「大体の割合を占める窒素と言う気体と二割くらいの酸素、そして僅かな二酸化炭素とアルゴンって言う気体の集まりを空気と呼ぶのですね♪」


「exactly! そして今俺達している息のことはそんな空気の中から肺に酸素を取り込む行動を"呼吸"と呼ばれているんだ」


「ただ単に息をする事を呼吸するとは言わないんですね」


「その通りだ、レミリアは覚えるのが早いな♪」


「えへへ……/// 少しでも早くお二人の会話に入れるようになりたいんです。それにしてもこのような知識は何処で学べるのでしょうか?」




 レミリアは不思議そうにまじまじと優之介と斬波を交互に見つめて野郎二人からの答えを待った。


数秒の間野郎二人がアイコンタクトを交わしお互いに頷くと優之介が口を開いた。




「レミリアには全てを話しても良いかな。いいかいレミリア、実は俺達はね……」




 優之介はレミリアに自分と斬波の全てを話した。自分達が別の世界から召喚されてきたこと、召喚された後、いきなり国王から勇者として魔王を討伐して欲しいと言われた事に嫌気が差して、王女の協力で城から出て行って冒険者になった事、冒険者になったからには自由に旅して回ってこの世界を見てみたい夢がある事等を話した。


 優之介の話を聞いたレミリアは目を丸くして驚いていたが、規格内ではあるが常識を外れた強さを持ち、自分達の知らない知識や技術を持っている部分を目の当たりにしたことを思い出して信じてくれた。




「暮らしやすい街が見つかればそこに拠点を築くのも良いし、どこか人気のない場所でスローライフも悪くないと思っている。ただ今は自由を謳歌させてもらうさ」


「どこか住みやすい場所が見つかると良いですよね♪」


「~~~……///」


「レミリア?」


「お二人が勇者様だったなんて……、私はとっても幸せ者です♥ まるで御伽噺のお姫様みたい♪」


「王子様は優之介かな?」


「はい! 王女殿下がライバルみたいですけど私負けません!!」


「そうか、優之介と結婚したらレミリアは俺の義妹だな♪ 俺の事はお義兄さんと呼んでくれて構わないんだぜ?」




 斬波が優之介とレミリアをくっつけるように話をし始め、レミリアはそれに乗っかってきた。優之介自身はこんなに可愛いくて優しい子と縁談話が舞い込んでくるのは大変ありがたいことではあるが、恋人関係でイチャイチャするのと結婚して夫婦になるのとでは生活が変わることを知っているつもりでいた。




「はい、これからもよろしくお願いします、お義兄さん♪ ふふっ、私には弟がいますけどまさかお義兄さんができるとは思っていませんでした。しかも私が知らないことをたくさん教えてくれる優しいお義兄さんが♪」




 レミリアが斬波の事をお義兄さんと呼び始めた、斬波はニコニコ笑顔で嬉しそうだ。この光景を間近で見ている優之介は自分の外堀が埋められようとしていると嫌でも感じ取ったのでストップをかけるが……。




「あのぉ、外堀を埋めようとしないでほしいのですが?」


「まぁこのくらいは良いだろう。あ、それよりもだ、王都に戻ってもしソフィーに優之介とレミリアの関係を聞かれた時にはなんて答えるんだ?」


「「あっ……」」




 少し間に合わなかった上に更なる問題を突きつけられ、優之介は心の中で泣いた。




「「「………………」」」


「作戦会議だな」




 この後優之介、斬波、レミリアの三人はソフィーリアに関係性を問われたらどう対処すべきかを朝日が昇るまで話し合った。


 見張りの交代時間などそっちのけでずぅっと話し合いをしていたせいで三人は目の下にクマを作ってすっかり寝不足になり、王都の入口までずっと馬車の中で三人仲良く川の字でぐっすり眠ったのだった。


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