第六章 再び王都へ、嫌な予感しかしないのだが……

第一話 王都に向けて出発! そしていきなり究極のお願いをされる


 翌朝の早朝、優之介と斬波は依頼遂行の為、街の門の外で今回の依頼主であるソヘル商会御一行を待っていた。




「優之介」


「何ですか?」


「寒い、あと敬語になってる」


「寒いなら毛布羽織ればいいじゃないですか、あと敬語なのは変わってないですよね?」


「ダンジョンの中じゃ敬語じゃなかったくせに……」


「以後気をつけます」


「気をつけるな、敬語をやめろ、今すぐやめろ、せっかく優之介と一緒に兄弟盃を交わそうと思ったのに、レミリアに追い越されるんだもんなぁ~優之介も男の子だなぁ」


「はぁ……今更何言ってんですか、身体に染み付いてるからやめられないよ斬波さん」


「―――優之介兄弟!!」




 優之介が斬波の事を”兄さん”と呼んだら斬波はそれが嬉しかったらしく、彼は優之介の事を”兄弟”と呼んで優之介に抱きついた。


 優之介は少し照れくさそうにもがくが力は斬波の方が圧倒的に上の為解けない、野郎二人が抱きあったり肩を組んだりはしゃいでいると商隊を引き連れたウラドとレミリアが苦笑いしながらやって来た。




「二人共おはよう、若いっていいねぇ元気があって」


「ユウノスケさん、シバさん、おはようございます。まだ朝早いのに随分とお元気ですね」


「あ、ウラドさん、レミリア、おはようございます。王都までよろしくお願いします」


「おはようございます、護衛なら任せてください」


「あぁ、王都までじゃなくて王城で商品説明もしてもらうかもしれないからそのつもりでいてくれ」


「「あ、あははは……」」


「ユウノスケさん、シバさん、王家の方々に直接会うわけではないと思うので緊張しなくても大丈夫ですよ♪」


「「ソウデスネ……」」




 王城のくだりから優之介と斬波の挙動が変になったので、ウラドとレミリアは(平民が立ち入れる場所じゃないから緊張してるのだろう)と勝手に解釈しているが実はそうではない。野郎二人の心境としては(意気揚々と旅に出ると言っておきながら二週間程度で戻ってきてソフィーリア達に後ろ指を指されるのではないか?)と不安になっているのだ。


 事情はさて置き仕事で王都に向かわなければならないので、優之介と斬波はソヘル商会の護衛四人と簡単な自己紹介をして王都に向けて出発した。






――――――――――――――――――――






「いやはや、お二人には適いませんなぁ~」




 旅の道中、ウラドがいきなり優之介と斬波に向かって言い出した。ウラドの突然の発言に一同の視線がウラドに集められた。しかし、ウラドは何事もなかったように話を続けた。




「ダンジョンにてスケルトンオーガの討伐、そして平民でも入れる風呂の発明、将来が楽しみではないか」


「安心亭のゴエモンブロですね、私達もこっそり体験したのですがとても気持ちよかったです♪」


「あの風呂が生まれたおかけで平民も清潔感を保てるようになるし、何より疲れが取れて健康的になれる。そんな素敵な品物までうちで取り扱わせて頂けて感謝しきれないな」


「なぁに、規定通りのアイディア料をくれればいいさ」




 ウラドはちゃっかり五右衛門風呂の流通販売にも一枚かんでいるようです、ソヘル商会にはレミリアがいるので野郎二人の行動はある程度筒抜けなのは承知ではあるが、流石は豪商と言ったところか、お金の匂いにはかなり敏感だ。


 王都まで一泊二日の道のりで、一日目の日中はモンスターや盗賊の類の襲撃もなく予定よりもずっと先に進めることができたので、早めに野営地を決めテントを張って拠点作りをした。






――――――――――――――――――――






 テントを三つ張り終えた頃には日がすっかり暮れてしまい、上を見上げるとそこには満天の星空が広がっていた。


 一行は焚き火を囲んで夕食を食べる事にした、この日のメニューはレミリアお手製のシチューとパンだった。




「うん、美味しい!」


「お口に合ったようで良かったです♪」


「お嬢様の手料理は絶品ですから間違いありません」




 優之介がレミリアの手料理を美味しそうに食べていると、商会の護衛達も乗っかってレミリアの事を褒めるのでレミリアは少し恥ずかしそうにもじもじしていたら、優之介が「レミリアは将来、良い奥さんになれそうだね」と言い放ったのでレミリアは顔を真っ赤にして縮こまってしまった。




「いやぁ、娘にそう言ってくれる殿方がいてくれて父親としては嬉しいような寂しいような、複雑な気分だなぁ……。でも良かったじゃないかレミリア、ユウノスケ君は君の事を一人の女性として見てくれているようだ」


「ちょ、お父様!?」


「それはもうこんなに綺麗で明るくて、お淑やかで優しいお人ですから♪」


「ユウノスケさん……///」


「そうかそうか、ようやく私の悩みの種がなくなったようだな」


「え、会頭それって……」


「うむ……」




 ウラドは真剣な表情で少し俯いた。


 ウラドの言葉に護衛達は緊張が走ったのか、そわそわし始めた。護衛達の様子を見た優之介とレミリアも何か重大な事をウラドに告げられると思い緊張して唾を飲み込む、護衛達も緊張して行く末を見守っている。斬波だけはシチューを黙って食べている。




「ユウノスケ君、もし君さえ良ければレミリアを貰ってはくれないか?」


「「「「「「!?!?!?!?!?」」」」」」




 ウラドは優之介に対し真剣な表情、声で自分の娘を貰ってくれないかとお願いしてきた。


 まさかのウラドが自分の娘を嫁に貰ってくれ発言をしたことによって、優之介とレミリアは顔を真っ赤にして固まり、護衛達はあんぐりと開いた口がふさがらない様子、そしてウラドは真剣な眼差しで優之介とレミリアを見つめている。




「…………」(異世界に来て二週間で嫁を貰うか否かの選択を迫られる十八歳か、大変だな……)




 しばらくの間この空間には燃える木がパチパチと弾ける音と、斬波が食事をする際に食器がコツコツ当たる音以外、彼らには何も聞こえなかった。


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