第六話 ウザ絡みする冒険者がウザい時は相手にしないようにしましょう


 オーガスケルトンを討伐した優之介、斬波、レミリアの三人はダンジョンから脱出した後、自分のステータスを確認していた。




「オーガスケルトンでレベル四十になった!」


「私はレベル二十五になりました、あと【恐怖耐性】と【鞭打術】のスキルを覚えましたよ!」


「俺はレベルがようやく一つ上がったのと【身体装甲】の魔法を覚えた」




 優之介とレミリアは嬉しそうに自分のステータスを見ていたが、斬波はマンネリ気味でステータスをぼんやり見つめていた。




「ようやく一つって、斬波さんあと少しで七十じゃないですか……俺なんてまだ四十ですよ」


「ユウノスケさん、ユウノスケさんもいずれ追いつけますから頑張って行きましょ!」


「優之介一人でオーガスケルトンマラソンでもすればすぐに追いつけるんじゃないか?」


「じゃあ、明日は一人でオーガスケルトン倒しますよ! あの倒し方なら俺でもできる!!」


「硝酸の化学式を知ってればできるぞ~」


「ユウノスケさんファイトですよ!!」


「おい待てよ」




 他愛もない会話をしている三人に向かって声が掛けられた。三人は声がした方を振り向くと、そこにはダンジョン十階層で絡んできた冒険者パーティ、黒の狩人の五人が雁首揃えてこちらを睨んでいた。


 ダンジョンの中で優之介に殴りかかってきたリーダー格が一歩前に出てきて優之介、斬波、レミリアに向かって不機嫌そうに話しかけてきた。




「話の途中で逃げるなんていい度胸してんじゃねーか、こりゃ先輩冒険者としてみっちり教育しねぇとな……」


「教育? 何を教えてくれるんだい?」


「ぁあ? 舐めてんのか!?ルーキーがでけぇ顔をしてんじゃねぇーよ!」


「ウザイルの言う通りだぜ、ルーキーの癖にいきなりCランクになってイキってんじゃねぇ!!」


「おまけにあんな大金せしめやがって、俺達にも回せよ!」




 黒の狩人のリーダーの名前はウザイルと言うらしい、ウザイルを筆頭に黒の狩人のメンバーは優之介達に言いがかりをつけてくる、その内容は最近の自分達の活躍を妬んだものばかりだった。




「いきなり出てきて何を言って「優之介」」


「斬波さん……」


「おい、黒の狩人だっけか、てめぇらこんな場所で喧嘩を売るとはいい度胸だ。他の人の目があるのによ」


「ルーキーが粋がっているとどんな目に遭うかを見せしめるいい機会だからちょうど良いぜ!」


「自分の実力も知らずによく言えたものだな」


「んだとてめぇ……」




 斬波がウザイルを相手に軽く挑発するとウザイルは顔を真っ赤にして今にでも殴りかかりそうな勢いで斬波を睨みつけた。黒の狩人のメンバーもウザイルと同様に怒り爆発寸前だ。




「まぁ、暴れ足りないようだから遊んでやるよ。俺は一歩もここから動かないでやるからお前らで動かしに来いよ、俺を一歩でも動かせたらお前らの勝ちだ。勝てたら金貨を一人一枚ずつやろう」


「「「「「てめぇぶっ殺す!!!」」」」」」




 斬波に挑発されまくった黒の狩人達はついにプッツンして全員一斉に斬波に殴りにかかるが……。




「【死神が奏でる子守唄】(Lullaby from Mr, Death)」


「あっ……」「がっ……」「くっ……」


「えっ!?」


「あ~……」


「「「「「………………」」」」」


「まぁ、こんなもんか。優之介、レミリア帰るぞ」


「あ、あのシバさん? 全員寝ているようですが魔法ですか?」


「あぁ、魔法でゴロツキ共周辺の酸素濃度を下げてやったんだ♪」




 斬波が直に魔法を発動して黒の狩人達を眠らせてしまった。どのような魔法か説明すると、空気中の酸素濃度を下げることによって酸素欠乏症に陥れ、対象を昏睡に追い込む魔法だ。 




「さんそのうど?」


「今のレミリアに言っても理解できないだろうからまた明日じっくり教えてやるよ」


「は、はぁ……」




 優之介、斬波、レミリアは昏睡状態の黒の狩人のメンバー達をこのまま広場に放置してこの場を後にした。結局このゴロツキ共は一体何がしたいのやら……。


 ダンジョン入口の広場には優之介達と黒の狩人以外にも冒険者達がいたわけで、彼らの揉め事(黒の狩人が一方的に絡んでるだけだが)の一部始終を見ていた冒険者は後に斬波の事を「死神」と呼ぶようになったらしい。






――――――――――――――――――――






 次の日、優之介、斬波、レミリアの三人は冒険者ギルドに顔を出していた。




「わぁ~、たくさん依頼が貼ってありますね!」


「今日はレミリアが初依頼を受ける日だね」


「依頼者がウラドさんだから緊張感が沸いてこない」


「斬波さん……」




 三人は掲示板に貼られている依頼を眺めているが、この中から依頼を受ける気は毛頭なかった。理由はもう既に受ける依頼が決まっているからだ。


 三人が冒険者ギルドに到着した途端、三人を見つけたエマが駆け寄って「ソヘル商会の会頭から貴方達に氏名依頼が入りましたよ!」と興奮した状態で教えてくれたのは良いが、依頼内容は依頼主のウラドから説明される予定でそのウラドはまだ冒険者ギルドに来ていない。つまりウラドが冒険者ギルドに来るまで三人は暇を潰さなければいけないので、依頼を受けるわけでもないのに掲示板を眺めていたのだ。


 やがて掲示板を眺めるのも飽きた三人は、ギルドのテーブルを囲み席に着いて飲み物とつまみを注文してウラドを待つことにした。


 注文した飲み物が三人に行き渡り、優之介が乾杯の音頭をとろうと木製ジョッキを持ち上げた時……。




「それじゃ、特に何もないし午前中だから果物ジュースだけどかんぱ―」


―バシャァァッ!!


「きゃぁ! ユウノスケさん!!」


「よぉ、朝からいいご身分だなぁ? クソガキにはこれがお似合いだ」


「ギャハハハ! 頭から被ってやんの、ダッセェな!!」




 誰かが優之介が持っていたジョッキの底に蹴りを入れ、ジョッキの中身を盛大に優之介の顔面へとぶちまけた。それと同時にギルドのホールにレミリアの悲鳴が響く。


 三人は蹴りを入れた犯人に視線をやると、そこには昨日斬波が眠らせた黒の狩人のメンバーとウザイルが立っていた。


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