第三話 絡まれる時は大体ゴロツキだよね


 この世界では理系を殆ど勉強しない事実をレミリアから聞いてしまった優之介と斬波は、小学生レベルの理科をレミリアに教えてあげることにした。


 ただ今はダンジョン攻略中、三人はひたすらダンジョンの中を進みながらモンスターを倒し、ドロップ品を回収していく。ドロップ品はポーションだったり、素材だったりが主だ。


 前衛は優之介とレミリアで敵を翻弄し、斬波は後ろから指示を出して二人のバックアップしつつ魔法で援護していく戦闘スタイルが結構様になっていて三人は息ぴったりだった。




「ふぅ、だいぶ進んだな、十階層まで来たけど出てくるモンスターはさほど強くなかったな」


「ユウノスケさんとシバさんが強すぎるんです! 特に火魔法の火力がおかしいんです!!青色の火なんて見たことありませんよ……」




 レミリアは優之介と斬波の魔法を見てその威力の高さに驚き、呆れていた。特に火魔法に関しては炎はオレンジ色と思い込んでいた彼女だが、野郎二人に「炎は温度によって色が変わる」と言われたときは「そのような知識はどこから得たのよ……」とただ呆然とするだけだった。




「そんなに珍しいものじゃないよ、火に酸素を加えてあげると火は強く燃えるようになるんだ。そして火は強くなれば強くなるほど、温度が高くなるほど青色に変化していくんだよ」


「そのような知識は学んだことはありませんわ……」


「俺と優之介の属性魔法が強力なのは、自然現象がどのようにして発生するかをきちんと理解してるからだ。レミリアもちゃんと勉強すれば青色の炎を撃てるようになるぞ」(炎色反応を応用すれば様々な色の炎が出せるけど、ここで話すことじゃないな……)


「ではそれを私にご教授ください!」




 レミリアが学習意欲を出すのは良い事だが、斬波が「ダンジョンを出てからな~」と言ったので今現在いる十階層を攻略したらダンジョンを出ることにした。元々ダンジョンとはどのような場所か、レミリアの実戦経験を習得する事が目的だったので完全攻略はまたの今度の機会に後回しになった。


 十階層は一本道になっていて、ひたすら真っ直ぐ進んでいくと大きな開いた扉の前に到着した。扉の先は何も無い空間が広がっているのが扉の外側からでも確認できたが、嫌な予感しかしない。




「この扉の先はボスモンスターがいるのかな?」


「雰囲気はそんな感じだな、公になってる情報では十階層はハントウルフ四体とグレートウルフ一体の群れか、スケルトンソルジャーらしいが……」


「おいおい、扉の前で屯ってんじゃねぇよ。行かねぇんならそこを退きな」




 三人がボスモンスターに挑むかどうか相談していると、後ろから声が掛けられた。三人は後ろを振り向くとそこには男五人組の冒険者らしきパーティが横一列に並んで三人にガンを飛ばしていた。




「何で退く必要があるんだ? 先に来たのは俺達なんだから俺達が進むか帰るかを決めるのが先だろ?」




 初対面でいきなり上から目線で言われた腹が立った優之介は、少しキツめの言葉で反論した。優之介の言葉に男達は顔を顰め、露骨に不機嫌な態度を取って来た。




「あ? てめぇらがモタモタしてっから後がつっかえてんだろーが! あんまり舐めた口聞いてっとぶっ飛ばすぞルーキーが!!」




 リーダー格の男が優之介を睨み付ける、しかし、優之介も負けじと睨み返して応戦する。




「おうおう! 俺ら黒の狩人に逆らおうってのか、ああん!?」


「痛い目を見たくなきゃ、そこの女を置いて帰んな!」




 五人組の冒険者パーティの名前は黒の狩人と言う名前らしい。黒の狩人の男共はいちゃもんをつけたり、レミリアを置いて消えろと言ったり、言動が完全に下心丸出しのゴロツキそのものだ。




「あの人達、下衆ですね……」


「俺達がここに到着してから屯したたのは長くて一分程度、てめぇらハナから俺達の後をつけてたな? 目的は何だ?」


「目的ぃ? そんなの決まってんだろ。とっとと十階層のボスを倒して転移魔法陣で帰るんだよ!」


「お前は馬鹿か? そんな言い訳が通じる筈がないだろ。だったら俺達より先にここに来くればいいじゃんか!」


「んだとこのガキィ!」


「よっと」




 優之介に馬鹿呼ばわりされたリーダー格が怒りを露にし優之介に殴りかかるが、優之介は難なく躱しリーダー格の男を手で押し返した。リーダー格の男は大きく後ろに仰け反り転倒しそうになったが仲間に支えられたお陰で転倒は免れた。




「レミリア、斬波さん! 今の内に!!」


「はい!!」「ああ!!」




 黒の狩人の陣形が崩れた隙を突いて優之介、斬波、レミリアは一斉に扉の中へと走り込んだ。隙を突かれた黒の狩人のメンバー達は追いかけようとしたが扉が閉じてしまった為、三人の追跡はできなくなってしまった。


 リーダー格が何やら叫んでいたが、扉の向こうの三人にはその叫び声が届くことはなかった。






――――――――――――――――――――






「「「はぁ、はぁ……」」」


「レミリア、大丈夫かい?」


「ありがとうございます、ユウノスケさん。私は大丈夫です……」


「それにしても何だったんですかね? あのゴロツキ集団……」


「俺らのことをルーキーと言っていたから冒険者ではあるが……」


「あのぉユウノスケさん、シバさん、それよりも私達ボス部屋に入ってしまいましたよね? アレ……」




 優之介、斬波、レミリアに絡んできた黒の狩人の事は気になったが、レミリアの一言で優之介と斬波は我に帰った。


 レミリアが指差した方向にはボスモンスターと思わしきモンスターが佇んでいた。


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