第二話 イェクムオラムの学問は遅れてるッ!!
優之介、斬波、レミリアの三人は優之介を先頭にして道中出てくるモンスターを倒しながらダンジョンを進んでいた。
「【
「じゃあ……」
「私の出番ですね! はぁっ!!」
「え、ちょ、レミリア!?」
三人の中で一番乗り気でいるレミリアは積極的にモンスターと戦い、討伐していく。最初は血を見るのでさえビビっていたのに、今では敵を斬りつけることに全く抵抗がなくなっていた。まぁ、今目の前にいるスケルトンに血は流れていないだろうけど……。
ダンジョンの浅い階層は出現するモンスターのレベルも低く、戦い易いらしいので、出現するモンスターの討伐はレミリアの役割になってしまった。女性に戦わせて自分達は観戦と罪悪感に苛まれる優之介と斬波だったが……。
「えいっ!」―ガシャン!
「ほっ!」―バチィィン!
「せいやっ!」―ズシャッ!
「あぁ、強くなるって素敵な事なんですね♪ ゴブリンの群れに怯えていた頃が嘘のようです!!」
「「アァ、ソウダネ……」」
喜々としてモンスターを討伐しまくるレミリアの様子を見た野郎二人は、彼女の強くなりたいと言う願いを純粋に叶えてあげただけだと現実逃避した。
「斬波さん、レミリアが強くなったというよりバトルジャンキーになっているような気がするのは気のせいですかね? あと、ウラドさんにこれを見せられますか?」
「まぁ、今はこれで良いと思う。ウラドには自衛の特訓したら目覚めてしまったと言っておけば良いだろう……。それよりもだ優之介、一つ気になることがある」
「何ですか?」
「レミリアがモンスターをバッサバッサ倒すのは良いんだが、倒されたモンスターが霧になって消えてくのは何でだ?」
「さあ?」
「あらぁ、それはダンジョンに吸収されているからですよ」
斬波の疑問には優之介ではなくレミリアが答えた。モンスターを討伐し終えた彼女は優雅な足取りで野郎二人の元へ歩み寄るが、狂戦士みたいな一面を見てしまった後ではキャラクターが崩壊してないか不安になる。
「お疲れ様、ダンジョンに吸収されるとはこれ如何に?」
「ざっくり言ってしまえば、ダンジョンは生きています。山が肉体、私達がいる洞窟は血管や食道で、出現する魔物はえぇ~っと血? ですかね? ともかくダンジョン内で死んだ生き物はダンジョンに吸収されて、また新たな魔物を生成するためのエネルギーとなるんです。前に元冒険者の従業員に聞きました」
「想像はできるけど石や砂等の無機物がエネルギーを必要としないだろう」
「シバさんの言うむきぶつ? がなんなのかわかりませんが、エネルギーを必要としているのはダンジョンコアです」
((え、無機物がわからないの? そもそも無機物って単語がないの……?))
優之介と斬波はダンジョンコアなる物が単語からしてダンジョンの心臓部であることは察せたのでこれ以上は追求しなかった、それよりもレミリアが無機物がわからないと言った方が問題だ。
優之介と斬波は二人揃って「え? 嘘でしょ!?」みたいな表情をしたので、レミリアはわけがわからず頭にはてなマークを浮かべるばかり、そこで野郎二人はレミリアに幅広く科学に関する事を話しながらダンジョンを進んで行くことにした。
「無機物は燃えない物のことを言うのですね」
「逆に燃える物を有機物って言うんだよ」
「ダンジョン内でモンスターを倒すと死体がアイテムを残して消えるのはわかった。非科学的すぎて少し理解に苦しむが……」
「ひかがくてき、ですか?」
「あぁ、もっと細かく言えば物理的な部分が理解に苦しむと言ったところか……」
「ぶつりてき?」
「「…………」」
「な、なぁレミリア。レミリアは学校とかで学問を学んだことはあるのか?」
「ありますよ、歴史や読み書きに計算、商売の仕方、交渉の仕方、経営等を学びました♪ 私個人的には冒険科の授業を選択したかったのですが、家柄が家柄なので経営を選択したんですよね。ですからこうして冒険に出かけられることがとても嬉しいです♪」
「「…………」」
「あの、先程からどうしたのですか?」
優之介と斬波はソフィーリア達からこの世界におけるある程度の常識を教えてもらってはいたが、子供がどのような学問を学んで世の中を生きていくのかは聞いていなかったので、レミリアに聞いてみると野郎二人にとっては驚きの答えがレミリアから帰ってきた。
「基本はこの世界全体の歴史とアースカイ王国の歴史、読み書き、計算、魔法を学んで、自分の将来に合わせて経営、商売、冒険、鍛冶、農業等の授業を選択して受けるんです。治癒魔法の才能がある人は治癒魔法の勉強を先行したり、貴族の子息は社交界の礼儀作法を学んだりしますね」
「「科学や化学や物理学や医学は勉強しないの……?」」
「……? そのような学問は初めて聞きました…………」
レミリアの言葉を聞いた優之介はレミリアの右肩に手を置き、可哀想な子を見つめる様な目でレミリアを見つめ、斬波はレミリアの左肩に手を置き、涙を流しながら可哀想な子を見つめる様な目でレミリアを見つめ、野郎二人同時に声を揃えてこう嘆いた。
「「オムニア、これじゃあこの世界発展しねぇよ……」」
野郎二人に肩を掴まれているレミリアは「えっ? えっ?」と戸惑う事しかできなかった。
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