第十二話 新製品を見たらテンション上がるよね!


「この道具をうちで作らせてくれ!」「この道具を商会で売らせてください!」




 ガチャポンプの価値を見出したガリアスとレミリアが優之介と斬波に圧をかけてお願いしてきた。二人共顔と顔の距離が僅か数センチしか隙間がないくらい詰め寄ってきたので、とりあえず離れてもらい呼吸を整えてもらってから話を進めることにした。




「え~っと、ガチャポンプをガリアスさんの工房で生産して、それをソヘル商会で売りたいと……」


「「是非!!」」


「お、俺は別に大丈夫ですよ♪ 皆の暮らしが豊かになればそれでいいです」


「俺も無駄に高い値段をつけなければ構わない」




 優之介と斬波はガチャポンプの製造販売をガリアスとレミリアに許可した。神様達からの依頼でこの世界を発展させるための第一歩として、このガチャポンプを広めて人々の生活を少しでも楽になってくれれば幸いだ。


 この後、レミリアがダッシュでウラドを連れてきて彼にガチャポンプを見せたら、レミリアよりもガチャポンプに食い付き、直ぐにでも契約したそうな表情で野郎二人に迫ってきた。商売魂がみなぎってるな!




「娘を助けてくれただけでなく、あのガチャポンプと呼ばれる道具をうちで扱わせて頂けるとは……。もうお二人に足を向けて寝れませんな♪」


「その台詞はガチャポンプが売れてから言ってもらいたいだな」


「いや、あのガチャポンプは間違いなく売れます! そこでお二人にはアイディア料として初月の利益から二十五パーセントの金額をお支払いさせて頂きます」


「俺達としてはガチャポンプを広めて頂ければそれで十分なので、そこまでしていただかなくても……」


「いいえ、こればかりは受け取っていただきますぞぉ! 法律なので!!」




 ウラド曰く、新製品を開発した者は初月に計算された粗利益の四分の一の金額を、アイディア料として商会から受け取れる法律がアースカイ王国にあるらしい。


 この話を聞いた優之介と斬波はそれならとアイディア料を受け取ることにしたが、暴利を利かせて荒稼ぎをするのはやめてくれと改めて釘を刺しておいた。




「そんじゃあ値段交渉と行こうぜ! ガチャポンプをうちで作るには材料費で銀貨二十五枚、経費で銀貨四枚、利益で銀貨七枚、合計で銀貨三十六枚は欲しいな」


「それではソヘル商会はガリアス工房からガチャポンプを大銀貨四枚で買います。そして、市場に流す時は大銀貨五枚で販売しますがそれでよろしいですかな?」




 安心亭の食堂で優之介、斬波、ガリアス、レミリア、ウラドの五人がテーブルを囲んで金銭交渉を進めていく、こんな開けたところで話して良い話ではないが他の客が誰一人といないので構わないと、どんどん話を進めていった。




「ガリアス、今の話だとガリアスが作って直接大銀貨五枚で売ればいいんじゃないのか?」


「入る金だけを考えればな、だが俺らぁ商売は正直苦手だし、何より職人は金で仕事をするんじゃねぇ、気持ちの入った仕事を金に変えるもんだ」


「職人の鑑だな、俺達からは何も無い。何度も言うが上手く広めてくれればそれでいい」


「じゃあ、決まりだな!」


「決まりですな♪」




 ウラドは懐から契約書を取り出すとそこに自分の名前をサインした。ウラドがサインを記入し終えると次はガリアスが契約書にサインをし、斬波、優之介の順番でサインして契約書に書かれた書類上の契約が成立した。




「後はこの契約書と奉納用のガチャポンプを祭壇に捧げれば、商業神様と鍛冶神様によって契約が正式に成立し、半年間、ガリアス工房以外の工房はガチャポンプが複製できなくなり、ソヘル商会以外の者が転売する事ができなくなります。では私はこれにて失礼します、急いで奉納しなければなりませんので!」


「俺もお暇させてもらうぜ! 奉納用のガチャポンプを仕上げなきゃなんねぇんでな!!」


「焦りすぎて事故んなよ~」


「お気をつけて~……」




 そう言い残してウラドとガリアスは猛ダッシュで帰って行ってしまった。嵐のような出来事だったけど神様達からの依頼達成に向けて一歩全身できたことは、野郎二人にとって大きな収穫だった。




「でも、品物を奉納して複製や無断転売を防ぐなんてファンタジーな著作権法ですね」


「著作権利が半年ってのは短いな、人間の法律で管理できないもんなのかね?」




 ガリアスとウラドがいなくなってから優之介と斬波が他愛のない会話をしていると、金銭交渉中は無言だったレミリアが口を開いた。




「お父様もガリアスさんもはしゃぎすぎです……。あの、ひとまずこれでガチャポンプのお話は解決しましたよね? この後は何か予定がありますか?」




 レミリアが優之介と斬波に質問してきた。この後の予定は何も無いのでもうお昼ご飯にしようとするも、お昼を食べるにはまだ時間が早いので、どう答えたら良いのかはっきり言ってわからない野郎二人は、しばらく考え込んだ後、斬波がある事を言い出した。




「優之介、お前はレミリアと一緒にデートでもしてこい。俺は部屋でゆっくりしてるからよ」


「「で、デート……///」」




 斬波の言葉を聞いた優之介とレミリアはお互いに顔を見合わせたら、二人して頬を染めてうずくまってしまった。




(二人共ウブだなぁ~♪)


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