十一話 完成!
レミリアと実質ピクニックに出掛けた次の日、優之介と斬波はガリアス工房に訪れていた。
「おはぁよ~ございま~~す…………」
「おう! お前らか、朝早くからご苦労さんな事だな。そっちの兄ちゃんはユウノスケだっけか、なんだか眠そうだな!」
「いやぁ、昨日は晒されまして……」
優之介と斬波は安心亭で起きた昨日の出来事をガリアスに話した。
レミリアが公衆の目を気にしないで優之介にアプローチを仕掛けたこと、その一部始終を目撃した安心亭のラコネス一家と宿泊客にもみくちゃにされながら、彼女との出会いのきっかけを根掘り葉掘り尋問されたこと等を大まかに説明すると、ガリアスは「ガハハ! それは俺も見たかったなぁ!!」と愉快に笑っていた。
「そうか、ウラドんとこの娘がゴブリン共に攫われたが、二人組の冒険者が助けたお陰で傷モノにされずに無事に帰ってきたって話は、お前らだったのか……」
ガリアスの口からウラドの名前が出てきたので二人の関係を尋ねると、ガリアス工房で生産したものをソヘル商会で売ったりしてる所謂ビジネスパートナー的関係があるらしい。ウラドがティユールの街に来た時は、よく二人で飲みに行く飲み友達にもなりつつあるそうだ。
「確かに俺達ですけど傷モノって……」
「バッキャロー! 女がゴブリンに攫われちまったら最後、助けることが出来ても既に犯された後で、社会に復帰できねぇ程精神が壊されちまってるのが主なんだぜ? 俺も何度かそんな女を見た事があるが、みんな目が死んじまってて可哀想だったなぁ……」
「ほう、レミリアはかなりの強運だったって事だな。あの時の俺達の目的はゴブリン討伐で、レミリア救出は予想外の出来事だった」
「全くその通りだ、ほんとにレミリアの嬢ちゃんはラッキーだったよ……。おっと、話がそれちまったな。例の物はできてるぜ!」
「そうかい、早速見せてもらおうじゃないか♪」
優之介と斬波はガリアスと一緒に工房の中央付近にやってくると、作業台の上に置かれた試作のガチャポンプが目に入った。
出来栄えはとても良く、きちんと錆止めもしてあったので、ガリアスの仕事がどれだけ丁寧かがこのガチャポンプを見れば優之介と斬波も理解できた。
「配管の部品とフート弁まで綺麗に仕上がってるじゃないか! それに……うん、動作に何の不備も無い! 流石名工と名高いドワーフの一品だ!!」
「おいおい! そんなに褒めても何も出ねぇぞ!?」
優之介と斬波がガチャポンプの出来栄えを褒めまくるので、ガリアスが照れくさそうに頭を掻いていたが、ガチャポンプを作ったガリアス本人は一体これが何の道具かわからない。ガリアスは優之介と斬波の興奮が冷めるの待ってから野郎二人に質問した。
「しかし、そんな道具見たこともないんだが……一体何に使うんだ?」
ガリアスの質問を聞いた優之介と斬波はお互いに顔を見合わせてから……。
「「それは今後のお楽しみ♪」」
とにっこり笑って答えたのであった。
――――――――――――――――――――
「なんだ親方もついてきたのか?」
「ガリアスでいい、初めて見る道具だからどう使うのか気になるじゃねぇか! 品物と釣り銭渡してはいさよならはないぜ?」
「わかったわかった、じゃあコレの使い方は安心亭でお披露目してやんよ」
ガチャポンプと渡した代金のお釣りをもらった優之介と斬波はガリアスをつれて安心亭に戻っていた。
因みにお釣りの代金は大銀貨六枚だった。初めての製作で苦労した部分もあったとの事で実質ガチャポンプの値段は大銀貨四枚だ。
「あ、ユウノスケさんとシバさん、ガリアスさんもおはようございます♪」
「おはよう♪」
「おう! 嬢ちゃん、元気そうで何よりだ!」
「おはようレミリア、ここで待ってたのかい?」
「はい♪ 本日はどのようなご予定なのでしょう? もしよろしければ私も同行させてください♪」
安心亭に戻るとレミリアが優之介と斬波に会いに来ていたらしく、野郎二人の姿を見つけると元気よく駆け寄ってきた。今日のレミリアも可愛くて美しいぜ。
レミリアに今日の予定を聞かれた優之介と斬波は「「とりあえずついてくればわかる」」と言ってすたこらさっさと井戸がある場所に行ってしまった。一体何をするのか理解できないレミリアとガリアスは同じ方向を向いて首をかしげ、とりあえず野郎二人の背中を追いかけた。
――――――――――――――――――――
「おーし、設置終わったぞー! 引き上げてくれぇ!!」
優之介、斬波、レミリア、ガリアスの四人は安心亭の中庭にある井戸に集合していた。野郎二人が井戸にガチャポンプを設置し、ガリアスとレミリアは近くで作業を見守っている。
その様子を宿から覗いていたラコネス一家が何事かと井戸にやって来ては、井戸に設置されているガチャポンプを見ては「何これ?」と言いたそうな不思議な表情をしていた。
「そんじゃあガリアス、答え合わせと行こうか。今回俺達がガリアスに製作を依頼したこの道具はガチャポンプと言ってな、井戸から水を吸い上げて吐き出す道具なんだ」
「「「「「……はぁ?」」」」」
斬波がガチャポンプがどんな道具かを説明したが、皆理解できていないらしいので実際に使って見せることにした。
「優之介、ちょっと使ってみろ」
「OK、まずはレバーを上下に動かしながら水を入れていきます、そうすることでこのポンプの下を通っているパイプの中の空気が抜けます。空気が抜けたパイプは空気を取り込もうとしますが、パイプの先端は水中にあるので実際に取り込まれるのは空気ではなく水が吸い上げられて……」
―ドバァァッ!
優之介がガチャポンプを使いながら水が吸い上げられる原理を説明してると、ガチャポンプの水口から勢い良く水が出てきた。
レバーを上下するだけで大量の水が出てくる光景を目の当たりにした異世界の皆は、目を丸くして驚いていた。
「わぁっ! 水が出し放題!?すごいすごい!!」
「まぁ……井戸からの水汲みは重労働だったのに…………」
「こ、こんな道具初めて見ました……」
「俺は夢を見てるのか!?」
「なるほど……レバーの先についた穴があいた弁付きの栓はこういう事だったのか…………」
「ガリアスさん、その部分はピストンと呼ぶんです♪」
この後、優之介と斬波がデモンストレーションを行いながら皆に使い方を教えると、皆興奮しながら口を揃えて「この道具は生活を変える(わ)!!」と言うので、気を良くした優之介と斬波が「このガチャポンプはこのまま安心亭にプレゼントしよう」と宣言すると、野郎二人はラコネス一家に抱きつかれ、ぎゅうぎゅうのおしくらまんじゅう状態になりながらも感謝された。
「ユウノスケ、シバ、こんなすげぇもん貰っていいのかよ!?」
「ここの飯は美味いし、部屋も快適だからそのお礼だ♪」
「ユウノスケさんシバさん、本当にありがとう! 生活がかなり楽になるわ」
「私からもお礼言わせてください! 本当にありがとう!!」
「どういたしまして、皆の嬉しそうな顔が見られて良かったよ♪」
やいのやいのと野郎二人とラコネス一家が談笑してる中、ガリアスとレミリアが真剣な表情でガチャポンプを見つめていた。
それに気づいた優之介と斬波はガリアスとレミリアに声をかける。
「ガリアスさん、レミリア、どうかしたかな? どこか悪いところでもあった?」
「なぁユウノスケ! シバ!」「ユウノスケさん! シバさん!」
「あの……お二人さん?」
「どうしたんだそんな改まって?」
「話がある!」「お話があります!」
「「は、はい……!?」」
ガチャポンプのお披露目に成功したは良いが、ガリアスとレミリアが怒涛の勢いで食いついてきたことで、また何かイベントが発生しそうな予感がした野郎二人であった。
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