第九話 レミリアの決意と申し出

 ゴブリン討伐依頼とレミリアを親元に送り終え、安心亭に戻った優之介と斬波はさっさとお風呂に入ってご飯を食べて寝ようとしたがそうはいかず、ラコネス一家にまたお風呂をねだられお湯を出してあげてると、他の宿泊客からもお湯をねだられてしまったので、仕方なく大銅貨一枚でお湯を出してあげる一時の小遣い稼ぎをする羽目になった。


 まぁお湯を出すだけでお金がもらえて、宿の食事をおまけしてくれるので少し骨だが悪い気はしなかった。




「こりゃ五右衛門風呂か長州風呂を作ってやらないとダメか……」


「ですね……このままだと俺達が辛いっす…………」




 この出来事をきっかけに優之介と斬波は、ガチャポンプの次は簡単に作れるお風呂を広めようと心に決めたのだった。






――――――――――――――――――――






 翌日、優之介と斬波はティユールの街を出て直ぐ近くにある森の入口付近で自然の美味しい空気を堪能していた。




「「すぅ~~はぁ~~~~」」


「空気が美味しい!」


「身体の内側がスッキリするな♪」


「もう本当に♪」


「「ぬおっ!?」」




 優之介と斬波は自分達の会話に続くように後ろから声をかけられたので、びっくりして後ろを振り返るとそこには冒険者風のコスチュームに身を包んだレミリアが、手を後ろに組んで野郎二人に爽やかな笑顔を見せていた。レミリアはスタイルが良いので、冒険者の格好もすごく似合っていて正直ずるくね? とこの時野郎二人は思った。




「おはようございます♪ ユウノスケ様、シバ様♪」


「お……おはよう、昨日ぶりだな」


「お、おはようございますレミリアさん。あの、様付はやめていただきたいのですが……」


「あら、貴方方は私にとって命の恩人、様をつけて呼ぶのは至極当然です!」




 出会った当初は状況が状況だったので言えなかったが、優之介と斬波の事をレミリアは様付で呼んでいたので、いつものように様付はやめてくれと優之介はレミリアにお願いした。しかし、レミリアが両手に拳を作って胸元でギュッと寄せながら、上目遣いで優之介に詰め寄って熱く語ってくる。可愛い&眼福。




「そう思っていただけるのは嬉しいのですが、俺達が恥ずかしいので勘弁してください……」


「むぅ……わかりました。様はつけないようにしますから、お二人は私に敬語を使わないでください。私を呼ぶときも、呼び捨てでお願いします!」




 レミリアは自分に対してよそよそしい態度は止めるよう人差し指をピンと立てて、優之介の鼻先をタッチして要求してきた。可愛さをアピールしつつ、本気でお願いしているようだったので、優之介と斬波はレミリアの熱意に押されながら了承の返事をした。




「わかりま―わかったよ、レミリア……」


「俺はいつも通りで良いな。そんで、どうして一人でこんなところにいるんだ? 親父さんと護衛は?」


「ユウノスケさんとシバさんに会いにいくと言ったら二つ返事で許可をくれました♪」




 優之介が様付けを遠慮したら、レミリアはさん付けで呼ぶようになった。野郎二人には呼び捨てを要求したくせに……。


 それにしても、ウラドと会ったのは昨日が初めてなのだが、彼が持つ野郎二人への信頼が厚いようだ。豪商の会頭と言う立場でありながら、自分の娘に護衛をつけずに人に会わせる事はしないはず。ましてや娘は魔物に襲われたばかり、普通はもっと側に居させたくなるものなんだが……。


 と、そんなふうに斬波が指摘するとレミリアは決意に満ちた表情で野郎二人に言った。




「確かに、最初は父も反対していました。でも……ゴブリンと遭遇してしまった時、私は護衛の後ろで小さく怯えることしか出来ませんでした。父がホブゴブリンウォリアーに殴り飛ばされた時の絶望は忘れることができません、それに護衛の方も私を守るためにあんなにボロボロになって……。だから私は決めたのです! 強くなって、守られるだけじゃなく、守れるようになると……!!」


「「おぉ~…………」」




 レミリア熱弁に優之介と斬波はパチパチと拍手するが、その決意と自分達についてくる事に何の関係があるのか斬波がレミリアに質問すると、レミリアがとんでもない事を言い出した。




「私をユウノスケさんとシバさんの弟子にしてください!!」




 なんと、レミリアが優之介と斬波に弟子入りを申し込んできたのだった。


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