第三話 どこの世界でも人妻ってえっちいな

 優之介と斬波は夕食を終えると再び水浴び場に来ていた、安心亭のラコネス一家を擬似お風呂に入れる為だ。




「よぉし! 斬波さん、準備OKですか?」


「おう、こっちはいつでもいいぞ~♪ 後は一家が来るだけなんだが……」


「お待たせしましたぁ~♪」




 優之介と斬波が準備を終えると同時に、コネリーが両親のラコネスとシャンリーを連れてやって来た。きちんと営業を終了したけど時間が少し早かったのだろう、宿の食堂からなんだなんだと見物客がこちらをちらほらと覗いていた。




「ちょっと! 何平気でこっち見てんのよ!?」


「ちゃんと仕切りはあるから大丈夫でしょう♪」


「そう言う問題じゃないのよお母さん! 乙女の肌は簡単に見せちゃいけないの!!」


「野郎二人に頼んどいて何言ってんだ……。うちの娘が悪いな、ちゃっちゃとやってくれい!」


「あ、はい! わかりました!!」「OK!」




 優之介と斬波はお互いに向き合って手を前に出して魔力を練り、ドラム缶を横に伸ばしたような形をした湯球を作り出すと、見物客から「おぉ~!」「湯気が上がってるぞ!」「あれお湯なのか!?すげぇ!」と歓声が上がった。


 野郎二人が湯球を作るとラコネス一家は下着姿のような服装になり、早速湯球の中には入った。湯球に入った一家三人一同は、全身から疲れが抜け落ちたかのような緩みきった表情で、擬似お風呂を楽しんでいた。




「「「ああぁぁぁ~~~~♪」」」


「お湯加減いかがですか~?」


「気持ちいぃ~♪」


「とてもいいです♪ はぁ~~ん……♥ あっ……♥」


「~~~~っ……///」




 優之介が湯加減を聞くと、コネリーは純粋に気持ち良いと喜んでくれているようなので、やったかいがあったと内心喜んでいた。そして、シャンリーも便乗して気持ち良いと言ってくれているが、気の抜けた声がどこか色っぽくて、その声を聞いた優之介は心臓がドキドキしていた。


 更に、見事なプロポーションを惜しみなく披露し、気持ちよさそうにしているシャンリーは優之介の目の前で寛いでる、彼の心臓はドキドキからバクバクになって集中力は乱れ放題だ。




(やべぇ! シャンリーさんスタイル良すぎるッ!!そして何よりエロい!!!)


「おい優之介! 魔力制御乱れてるぞ! そんなんじゃ練習にならねぇ!!」


「斬波さぁん! 俺にはキツイっす! いろんな意味で!!」




 優之介と斬波は距離をとって並び、その間を大縄跳びのようにラコネス一家が並んでいる。横から見れば優之介、シャンリー、コネリー、ラコネス、斬波の順番で一例に並んでいるように見える。


 そして、優之介の目の前にはシャンリーが、斬波の目の前にはラコネスがいることになるのだが、斬波は優之介がシャンリーの見事なプロポーションに、悩殺されてるとは露知らず激を飛ばす。




「あら、魔力の制御はそんなに大変なんですか?」


「い、いえ! 大変じゃないと制御の練習にならないのでこれくらい平気ですよ!!」


「まぁ! 頼もしいのねぇ♪ ふぅ……いいお湯だわ♥」


「ブフォッ!?」


「…………優之介さんのえっち」


「おいおい! 俺の嫁だぞ!!」




 優之介の魔力制御が乱れてる理由がシャンリーの色気にやられているからだと判明すると、コネリーは優之介にジト目を向けてドン引きし、ラコネスは少しヤキモチ妬いて怒っていた。優之介だって男の子なのだからこれくらいは多めに見て欲しいものだ。




「ウブだなぁ~優之介ぇ~~♪ 次ソフィーに会ったらどうなるんだよ」


「なぁシバ、ソフィーってのは誰なんだ? この辺にゃいねぇ名前だよな?」


「ん? ソフィーはソフィーだ。ソフィーリア・レイ・アースカイ」


「え……?」


「まぁ……!」




 斬波の口から自国の王女様と会ったことがある感じを匂わせる発言を聞いた、ラコネス一家と見物客は一斉に静まり返ってしまった。ラコネス曰く、ソフィーリアは平民の前には滅多に姿を見せることはないレアキャラのようで、王城勤めでもしない限り会えないらしい。


 皆、過去にソフィーリアと会ったことがあるらしい優之介と斬波のことを、目を丸くして見ている。




「嘘!?ユウノスケさんとシバさんは王女様に会ったことがあるんですか!?」


「会ったも何も、一緒にお茶したりしたなぁ」




 斬波がしれっとこの国の王女様とお茶をした事を言うと、その話を聞いたラコネス一家と見物客は十秒くらい固まり……。




「「「「「えええええええええええええ!!!」」」」」




 と街全体に広がるくらい大きな声で絶叫した。




「「やかましい!!」」






――――――――――――――――――――






 優之介と斬波はラコネス一家を擬似お風呂に入れた後、再び食堂で飲み物片手に寛いでいた。しかし、斬波が水浴び場で、この国の王女との繋がりがあることをしれっとカミングアウトしてしまったので、擬似お風呂に入ったラコネス一家は勿論、その見物客達の間で交わされた話はその話題で持ちきりだった。


 因みに、ガチャポンプを知ってるかどうかを皆に質問したら「そんなもの見たことも聞いたこともない」と口を揃えて言うので、この世界にはガチャポンプが存在しないと断定した。




「ふぁ~あれがお風呂ってもんか、なかなか気持ち良かったぞ! サンキューな!!」


「いえ、満足いただけたようで何よりです」


「どういたしまして」


「それにしてもびっくりしたぜ、お前さんらが王女殿下と友達だなんてよぉ……」


「更に王女の紋章まで持ってるなんて……」




 斬波の話が信じられないと言い出した輩がいたので、優之介と斬波はソフィーリアからもらったブローチを見せてあげたら、その輩は「しっ失礼しました! 不敬罪だけはご勘弁を!!」などと腰を抜かしてしまったので(このブローチ権力チートアイテムじゃね?)と野郎二人は改めて思った。人前に出すときは理不尽と衝突した時だけにしよう。




「俺達がソフィーと友達なのは普通に話してもいいけど、おおっぴらにするなよなぁ」


「俺達が居づらくなっちゃいますしね……」


「そんなことしないですよ! むしろウチを選んでくれてありがとうございます!!」


「コネリーの言うとおりです、殿下の名代が泊まられたと宣伝になりますから♪」


「みょ、名代とか言わないでください! 俺達は自由がいいんです!!」




 ブローチのせいで優之介と斬波は、王家と繋がりがあるお偉いさんと見られがちだが実際は違う。彼らはあくまでただ単にブローチを餞別としてもらっただけで、現在の職業はただの新人冒険者(Cランク)だ。


 斬波は、自分達とソフィーリアのことはあまり広めるなと釘を刺しつつ、優之介と無駄話をしながらラコネス一家の興奮が収まるのを見守った。


 夜が更けて眠る時間帯になると、安心亭の食堂を出て帰宅する人がいたり、泊まってる部屋に移動したりと人がぞろぞろと捌けていき、最終的に食堂には野郎二人とラコネス一家の五人だけが残った。


 斬波は人がいなくなったことを確認すると、いきなり言い出した。




「よし! 明日は鍛冶屋に行ってガチャポンプを作ってもらうように言ってみるか!!」




 斬波の言葉に優之介は「待ってました!」と言わんばかりの期待の眼差しを斬波に向け、ラコネス一家は「さっきも言ってたけどガチャポンプって何?」と言わんばかりの不思議そうな表情を浮かべた。


 そんなラコネス一家に斬波は「ま、できてからのお楽しみだ♪」とウィンクを決めて、この日は解散となった。

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