第三話 神様達は意外とフレンドリー

 神々から魔法に頼らない生活水準の向上を取り計らって欲しい、(ほとんど斬波の推察だが)との依頼を聞いた斬波は「了承半分、拒否半分」と曖昧な返事を返した。




「にしても、さっきからそこのジュノンとやらがマイペース過ぎて全然話にならないんだが……」


「斬波さん、神様相手にそれはまずいんじゃ……?」




 優之介が斬波を諌めようとするが、斬波は神様を相手に全く恐れをなさない、むしろ少し怒っている様子だ。いくら神様とは言え、ここまで振り回されてしまいには頼み事を押し付けられそうになっている始末、斬波の心の中で怒りの感情が確実に込上がっていた。




「はぁ、申し訳ございません。全くこの子は……」




 険悪な空気が漂う中、白い修道服のような衣装に身を包んだ女性がぺこりと頭を下げて謝罪した。


 神様がそんな簡単に頭を下げていいのか?




「私は生命と輪廻を司る神、ローリエと申します。まずは私達の召喚に応じていただき、ありがとうございます」


「は、はぁ……」


「本来、私達はここから下界を見守り、下界の異変に対して私達の助言が必要だった場合、神託を下界の聖女に伝えて対処させてきました。シバさん、貴方は先程『神は見守るだけ、何もしない』と言いましたが、概ねご想像通りです、私達は聖女に神託を伝える以外は下界に干渉しません。ですが、今回はこのように貴方達をここに召喚しました。教会に来てもらった理由は貴方達を召喚する際、私達への信仰が集まる場所に居てもらわないとこちら側へ呼べないからなのです」




 ローリエは優之介と斬波を教会へ来るように伝えた理由をわかりやすく教えてくれたので野郎二人の機嫌は少し直った。




「はぁ、それでジュノン様は教会に祈りに来いってメッセージしたんですね」


「最初から説明してくれれば嫌々来なくて済んだかもな」


「後でジュノンにはキツく言っておきます。そして、ここでオムニア様が貴方達に『このイェクムオラムを発展させて欲しい』とお願いをした経緯なのですが……イェクムオラム創世以来、私達九柱の神々は世界の均衡を見守りつつ、人間、魔族、亜人族の文明が開花する様子も見守ってきたのですが、ここ四百年くらい文化が発展せず停滞したままでした。理由は様々なのですが、一番は魔法に頼りきりになってしまっていて、魔力の扱いに長けてない者は生活すことすら難しい状況にあります」




 優之介と斬波はローリエの存在に感謝した。この神様がいなければきっと訳がわからないまま面倒事を押し付けられたであろうと……。


 ローリエの言葉に優之介は、生活すことすら難しい状況の例えを言い出して補足した。




「使う道具が不便だったり、水をわざわざ井戸から汲んだり、火を起こすのも?」


「道具に関しては魔法を付与する事で、ある程度補助はできますが限界があります。井戸からの水汲みもそうですし、火起こしも一苦労です。そして、人々がどのようにして知識を活かして行くのか見守れど、一向に改善される気配が見られないのです」


「そこで、俺らに白羽の矢を立てたと……」


「その通りです、そしてここに呼んだ理由は貴方達から了承と意見を貰いたかったからなのです」




 ローリエの言葉で野郎二人はどうして自分がこんな目にあってるのかようやく納得できた。しかし、先程斬波が曖昧な返事をしたせいで、ローリエは少し苦笑いをしながら斬波に質問した。




「それで先程シバさんは了承と拒否が半々だと言っていましたけれど、理由を教えてくれますか?」


「難しい事じゃない、一つ、魔法ありきで発展してきた世界に、いきなり科学技術を取り入れるとどうなるのか想像がつかない。二つ、広められる部分はかなり限られている、特に放射性物質を教える事は絶対にできない。三つ、この世界の人間に科学技術を教えたら間違いなく魔法は衰退するがそれでもいいのか?」




 斬波が理由を述べると神様達は真剣な表情で俯き、考え込んだ。しばらく沈黙した後ジュノンが真面目な表情をして優之介と斬波に言った。




「確かに君の言う通りだシバ君、私は事前に君達が元居た世界のことを色々調べておいたが、科学の全てが全てを取り入れたいわけではない、さっき君が言った放射性物質なんて物は大反対だ。あのね、我々は自動車とか、飛行機とか、そんなものを望んでるわけじゃないんだ。ほんの少し身の回りの生活が楽になる程度でいいんだよ、だから頼めないかな?」


「そのくらいならいいんじゃないですか?」


「はぁ、まぁいいだろう。だけど俺らにできる範囲内だけだからな」




 優之介と斬波はジュノン、もとい神様達の頼みを了承した。野郎二人が頼みを引き受けてくれることを確認した神様達は皆表情が緩んだ。どれだけ心配症なのか、神様なんだからもっと堂々として欲しいものである。




「感謝するぞ、ユウノスケにシバよ。礼とこれからの活躍を願って二人に儂から加護を与えよう」


「あ、私からも加護をあげちゃうよ♪ 君達の世界にあるあーるぴーじーげぇむ? みたいな魔法をどんどん開発してくれたまえ!」


「では私からも加護を与えましょう、きっとお役に立てますよ♪」




 オムニアは頼みを聞いてくれた優之介と斬波に対し、お礼だと言って加護を与えると、ジュノンやローリエも後に続いて野郎二人に加護を与え始め、最終的にはこの場にいる神様全員から加護をもらってしまった。




名前:夢咲 優之介


種族:人間/性別:男/年齢:18


レベル:30


称号:異世界人、神々の寵愛を受けし者


攻撃力:1200


耐久力:900


魔力:650


敏捷:400


運:250


スキル:【鑑定】【鑑定妨害】【魔力操作】【魔力制御】【言語理解】


魔法:【土魔法(中級)】【水魔法(中級)】【火魔法(中級)】【風魔法(中級)】【身体強化】


加護:九神の加護(創造神、言語魔法神、生命輪廻神、自然神、戦神、農業神、鍛冶神、商業神、愛神)






名前:叶 斬波


種族:人間/性別:男/年齢:23


レベル:67


称号:異世界人、知識を追い求める者、神々の寵愛を受けし者、


攻撃力:2100


耐久力:1900


魔力:3000


敏捷:650


運:300


スキル:【鑑定】【鑑定妨害】【魔力操作】【魔力制御】【高速思考回路】【読心術】【言語理解】


魔法:【土魔法(中級)】【水魔法(中級)】【火魔法(中級)】【風魔法(中級)】【身体強化】【空間魔法(禁忌)】


加護:九神の加護(創造神、言語魔法神、生命輪廻神、自然神、戦神、農業神、鍛冶神、商業神、愛神)




 一気に神様達から加護をもらった優之介と斬波は、加護をもらった事で何か変化はないかと思いステータスを見てみると、今まで???だった加護が九神の加護に変わっていた。


 ステータスもレベリングのお陰で、転移したばかりの頃よりかなり成長できていた。斬波に至ってはオーガを倒したからか、レベルが五十を超えていた。


 ただ……。




「加護ってこんなに貰って大丈夫なんですか?」




 優之介がボソッと疑問を口にする。そして、優之介の疑問に答えたのは、これまたスタイルが抜群で、ピンク色と水色の髪が幻想的に美しいのが印象な女神様だった。




「ふふっ、貴方達は元々勇者としてアースカイの王女に召喚されたから問題ないのよ♪ 私の名前はアハヴァース、愛を司る神をしているわ。よろしくね、ユウノスケ君♥ シバ君♥」


「あ、そうでした……。よ、よろしくお願いします、アハヴァース様」


「よろしくお願いします」


「あらあら、貴方達はイェクムオラム生まれの人間じゃないんだから、私達に様なんて付けなくていいのよ?」


「そうなんですか?」


「そうだぞ坊主! 神々俺達も面向かって話してて”様”なんて付けられたらむず痒いじゃねーか!!あ、俺は鍛冶の神をやっているウエルドってんだ、よろしく頼むぜ!」




 神様達は優之介と斬波に畏まらなくて良いと言っている(斬波は元々畏まってないが)ので、野郎二人は神様達の事は普通に○○さんと呼ぶことにした。


 この後もまだ自己紹介してない神様達が自己紹介をして挨拶してくれたので、和気あいあいとした雰囲気になって和やかムードで雑談を交わした。


 雑談の中で斬波が「今回俺らに頼んだことって農工商神が頼むのが筋だろ?」と言った時には、当の神様はぷいっとそっぽを向き話そうとしないので、ローリエが「そこの三柱は俺が一番だ私が一番だと喧嘩したので」と機嫌悪そうに言うと、優之介と斬波は苦笑いをして農工商の三柱はしょぼんと肩を落としてしまった出来事は、これからも野郎二人の記憶に残ることだろう。


 因みにイェクムオラムを見守る神様は九柱いる。




創造神       オムニア


言語と魔法を司る神 ジュノン


生命と輪廻司る神  ローリエ


自然を司る神    ナトレーザ


戦いを司る神    ニルハム


商業を司る神    マルシャン


鍛冶を司る神    ウエルド


農業を司る神    バウアー


愛を司る神     アハヴァース    




 創造神のオムニアを中心として、それぞれの神様がそれぞれ分野を担当しているのだそうだ。例えば、戦いの才能がある人には、戦神ニルハムが加護が与えて才能を開花させたりするらしい。


 雑談もキリが良いところで優之介と斬波がそろそろ戻りたいと神様達に告げると、ジュノンが「最後に一つだけお願いが!」と待ったをかけた。この神様も他の八柱みたいに大人しくならないのだろうか。




「ユウノスケ君、シバ君、君達のスマホを見せて欲しい!」




 ジュノンが野郎二人のスマホを見せて欲しいと頼んできた。


 ジュノンの頼みに優之介と斬波は「また何か面倒な事を仕出かしそうな気がする」と苦笑いし、そもそもスマホが何なのか知らない他の神様達は、ただ不思議そうな顔をして首をかしげるのだった。


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