第二話 神様も万能ではないのだよ!
「わざわざそれを言うためだけに俺らをここに呼んだのか?」
オムニアの言葉に優之介は頭にはてなマークを浮かべ、斬波は理解はできたものの、わざわざこんな事する必要あるか? と疑問を呈している。
二人の様子を見て少し長くなるが一から話したほうが良いだろうと、判断したオムニアは隣に座っているセクシーな衣装に身を包まれたダイナマイトボディな美女に、これまでの経緯を説明させた。
「うんうん、いきなり頼まれても話が見えないというものだよオムニア様。はぁい♪ 昨日の夜ぶりだねお二人さん、ちゃんと言ったことを守ってくれてお姉さんは嬉しいよ♪」
「貴女がジュノン様?」
「LINEのメッセージじゃ声とか性別とかわからないもんな、俺も一瞬あれ? って思ったぞ」
「あっはっは! いかにも、私が言語と魔法を司る神ジュノンだ。よろしくぅ♪」
ジュノンは椅子に座ったまま軽快に自己紹介をしたが、野郎二人の顔はまるで生ゴミを見てるかのように歪んだ表情だ。
「む、何だねその顔は? まるで私の事を邪悪の権化だと言いたそうだな」
「「実際に俺ら(達)はあんたに振り回されてここにいるんだろうが!!」」
「振り回した記憶は無いなぁ」
「世界中のゲイをけしかけるとか脅してましたよね?」
「んぅ? そうだっけ?」
「証拠はありますよ!!」
優之介はスマホを取り出し、LINEのチャット画面をジュノンに見せつけた。
何かあった時にチャットの画面をスクリーンショットして保存しておいたり、ボイスレコーダーで音声を記録する事に関しては手馴れいる現代人相手に惚けても無駄なのだ。
「あ、私のメッセージ……」
ジュノンからのメッセージをオムニアが拾い読みをすると、その内容のずさんさにオムニアの表情が険しくなり、野郎二人の目の前でジュノンを叱りつけた。
「ジュノン、お主教会に祈りに来いとしか言ってないではないか! ちゃんと事前に説明しておけと言うたろうに! しかも、こんなくだらん脅しなんぞしおって!!」
―ゴチン!
オムニアの拳骨がジュノンの後頭部に炸裂した、ジュノンは頭を抱え込んでうずくまってしまった。少なくとも神様が人間の目の前で見せて良い姿ではない。
「いっつぅう~! オムニア様の拳骨は頭蓋骨を割りかねないんですから、責めて平手でスパンと軽くしてくださいよ!!」
「…………」
―スパン!
オムニアはジュノンの要望通り、平手で思いっきり頭を引っぱたいてあげた。ジュノンはもう涙目になっている、もはや神の威厳なんてものはなかった。
「しくしく……ジュノンちゃんの頭皮は瀕死状態だよ…………」
「あの、コントを見せられるだけなら俺達もう帰りたいんですが? 疲れているので、もう寝たいんですよ」
「優之介と同じ意見だ。ここにいては時間の無駄だろうから、早く宿に戻って一休みしたい」
優之介と斬波は完全にやる気をなくしてもう帰りたいようだ。しかし、ジュノンが涙目になりながら待ったをかけた。
「待ってぇ! 待ってくれぇ! 話を巻き戻そう!!君達にこの世界を発展させて欲しいとお願いしたのには、ちゃんとした理由があるんだ!!」
「ほんとにちゃんとした理由なんですか?」
「勿論だとも! ……おほん、ではユウノスケ君、生まれて初めて魔法を使った感想はどうだったかな?」
ジュノンは優之介に対し、魔法を使ってみた感想を聞いてきた。優之介は質問の意図が読めなかったので素直に答えることにした。
「すごく便利だと思いました」
優之介の感想を聞いたジュノンは満足そうに頷くと、話を続けた。
「よろしい、魔法は便利だ。イメージをしっかり持って魔力を制御すれば、どんな魔法も開発したり発動できたりする事が可能だ。しかし、最近の下界を覗くとどうも魔法に頼りきりになっててねぇ」
ジュノンの話をここまで聞いて優之介はようやく話の意図が見えてきた。
旅の途中で優之介自身も何度か魔法を使ってみて、便利だと思ったことがあった。しかし、楽なものや便利なものを見つけてしまうと、それに頼りきりになってしまうのが人間の性と言うもの、ジュノンの口ぶりからしてこの世界は魔法に頼りきりで文化が停滞しているのだろう。
「なるほどね、言いたい事は理解した。科学の知識を用いて、魔法に頼らない生活水準を向上して欲しいんだろ?」
「そんなところだ、イェクムオラムには魔道具と呼ばれる物も一応あるが、このままでは人間の頭脳レベルがどんどん低下してしまう! そこを何とかして欲しい!!」
神々の頼みに斬波は目を閉じて腕を組み、三十秒程考え込むとゆっくり目を開けてこう答えた。
「了承半分、拒否半分ってとこだな……」
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