第三章 異世界は神様との距離が近いようです
第一話 お祈りって合掌するんでしょ? え、そうじゃない?
「おぉ~! ここが教会かぁ……」
「生で見るのは初めてだが、向こうと雰囲気は変わらないみたいだな。ふむ、壁画がメインでステンドグラスは無し、そして奥には九つの石像がずらり。うん、独特で良いな」
優之介と斬波はジュノンのお告げ(LINEのメッセージ)の通り、ティユールの街にある教会に来ていた。
宗教的建造物は初めてだったので、司祭から作法を聞いて早速実行してみた。まぁ、作法と言ってもお布施を渡して祭壇の前で祈るだけなのだが……。
「えっと、お布施をシスターさんに渡して、祭壇で祈るんですよね?」
「あぁ、神社とあんまり変わらない」
優之介と斬波はそれぞれ銀貨一枚をシスターに渡して祭壇の前に立った。
いざ祭壇の前に立つと奥に置かれている石像がより神々しく見えた。優之介と斬波は早速祈るべく、祭壇の前で目を閉じ、手を合わせた。
「(ねぇ、あの二人、祈りの姿勢が変よ?)」
「(両手を組んでないわ、言ったほうが良いのかしら?)」
優之介と斬波が祈る姿を見てシスター達はひそひそ話をした、理由は野郎二人が通常では見ない姿勢で祈っていたからだ。
通常、祈りは両膝、もしくは片膝をつき、胸の前で両手を組んでそっと目を閉じるのが習わしなのだが、優之介と斬波は違った。
野郎二人は直立不動で手のひらを合わせる、言わばお参りスタイルで祈っていたのだ。
「(斬波さん、何か間違ってません? これ……)」
「(絶対違うだろうな、だがもうこれでやってるんだからこのまま通せ)」
優之介と斬波が三十秒程祈ると、彼らの頭に直接声が響いてきた。
『目を開けよ、異世界から迷いし人の子よ……』
優之介と斬波は言われた通りに目を開けた。するとそこには目を閉じる前の景色は無く、ただ真っ白な世界が広がっていた。
そして、彼らの目の前には大きな円卓と十一脚の椅子が設けられていて、既に九つは誰かが座っているようだった。
「よく来たねぇ、ユウノスケ君にシバ君。ささ、こっちに来て座りたまえ」
「(なんか俺達の名前知ってるっぽいですよ?)」
「(そりゃ向こうが呼んだんだから、知ってなきゃおかしいだろ)」
優之介と斬波はとりあえず言われるがまま円卓に歩み寄り、用意されていた椅子に座った。
野郎二人が座ったのを確認すると、中央に座る白い髪と立派な顎鬚が特徴の老人が話し始めた。
「よく来たの、ここは神々の住まう場所じゃ、儂はイェクムオラムの創造神、オムニアと言う」
「あ、初めまして、夢咲優之介です」
「……叶斬波です」
「ふむ、神を前にして態度を変えぬか……見た目の割に肝が据わってるのう」
「まぁ、実際面と向かって神様ですって言われても実感湧きませんし……」
「神は見守るだけ、何もしないと思ってたからなぁ……」
「そ、そうか。まぁ実際下界には直接手を下すことはしないから間違ってはおらんな。では何故君達がこの場所にいるのかは理解できてるかね?」
オムニアの問いかけに、優之介と斬波は考える事無く「「知りません(知らん)」」と即答したら九柱の神様達は全員ズッコケた。
オムニアは体勢を立て直し、一旦呼吸を整えてから、優之介と斬波にゆっくりと話しかけた。
「まぁ良い、こうして君達を呼び寄せたのは、直接頼みたい事があったからなのだ」
「頼みたい事……ですか?」
「そうじゃ、その頼みとは、君達の知識でこのイェクムオラムを発展させて欲しいのじゃ」
「「…………え?」」
オムニアは真剣な眼差しで野郎二人を見つめ、イェクムオラムを発展させて欲しいと頼んだ。
人生において神頼みをする事はあれど、神に頼まれる事は無いだろうと思っていた優之介と斬波は、ただ唖然とするばかりだった。
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