第七話 野郎二人は冤罪をかけられる

 翌朝、目を覚ました優之介と斬波は再びティユールの街へ向けて歩いていた。


 道中現れたモンスターは、レベリング目的で主に優之介が討伐していく。


 二人共、魔法鞄が限界なので手に入ってしまった素材とかお金になりそうな物は仕方がないので、そのまま手に持ったりしながら旅を続けていた。


 四~五時間ほど歩いたら城壁のようなものが見えてきた、どうやら目的地、ティユールの街にたどり着いたようだ。




「おぉ! 街だ! 街がありますよ!!」


「王都を出てから歩いて一日半か、意外と遠かったな。早速ギルドに寄って売れるもん売ろうぜ」


「あそこの門から通るみたいですね」




 街へ入るための門は検問所も兼ねており、衛兵らしき人物が門を通過しようとする人々の中に怪しい人がいないかチェックしていた。


 優之介と斬波は並んで順番を待ち、十五分程度待ったところで順番が回ってきた。


 検問している衛兵が少し戸惑った様子で野郎二人に声をかけた。




「そこの二人、冒険者だな? その手に持ってるのは魔物の素材か? 入れ物はどうした?」


(イェクムオラムの人々はモンスターの事を魔物って呼ぶんだ。意味はほぼ同じだからあまり気にしないけど覚えておこう……)


「魔法鞄があるのですが、そっちもいっぱいになってしまって……」


「そうか、検問が終わったらこの道を真っ直ぐに行けば冒険者ギルドだ。そこで買い取ってもらえ」


「ありがとうございます!」


「一応念のため、ギルドカードを見せてくれ。それと、この水晶に触れてくれたまえ」




 優之介と斬波は衛兵の指示通りにギルドカードを提示して水晶に触れた。すると、水晶が青く光ったので野郎二人は「青色に光った!」と声に出して少し驚いた。




「何だ? 検問は初めてか? この水晶は犯罪者を見分ける為の物でな、青く光れば犯罪歴は無し、黄色に光れば犯罪歴有り、赤色に光れば犯罪を犯している現在進行形の犯罪者と区別される。黄色は犯罪歴によっては街に入れないこともあるし、赤はその場で捕縛されるから悪いことはするなよ? それじゃあ通っていいぞ」


「「ありがとうございます」」




 優之介と斬波は検問を無事くぐり抜けて街に出た。


 ティユールの街並みは流石に王都ほど規模は大きくないが、活気あふれるいい街だった。


 街を散策したかったが両手が塞がってるので、優之介と斬波は両手に素材を抱え込みながら冒険者ギルドを目指しすことにした。






――――――――――――――――――――






「冒険者ギルド、ティユール支部にようこそ……って、それは魔物の素材ですか!?」


「そうです、買取をお願いしたいのですが」


「と、とりあえずこちらのカウンターに置いてください!」




 優之介と斬波は受付嬢の指示通りに手持ちの素材を置いた、魔法鞄の中はまだまだ素材でいっぱいだぜ!




「これで全部ですか?」


「いえ、魔法鞄の中にもまだまだありまして……」




 ドサドサとタブンナオリ草を始めとした薬草類や採取したアイテム、記念すべきハントウルフ等を出して見せると受付嬢の笑顔が引きつってしまった。


 その様子に周囲の冒険者達がちらちらと野郎二人と受付嬢のやり取りを見始めていた。




「かなり採取されたのですねぇ~、ハントウルフまでいるではありませんか……。これで全部ですね! 査定をしますので少々お待ち「あ、これもあった」」




―ドシィィィィン!




 斬波が思い出したように魔法鞄からオーガの死体を出すと受付嬢の笑顔が恐怖に様変わりし、目には今にも溢れそうなほど涙が溜まっていた。




「お! お、おお、オーガァァァァア!?」


「おい! 嘘だろ!?」「ありえねぇ!」




 オーガの登場で周りの冒険者が騒ぎ始まってしまった。


 しかし、騒ぎの原因を作った斬波はそんなのお構いなしと言わんばかりに受付嬢の手続き待った。




「オーガは査定できないのか?」


「でっ、できますよ……少々お待ち下さいぃ…………」




 受付嬢は涙ながらに周囲のギルド職員に応援を呼んで査定に入った。


 応援に入ったギルド職員はオーガの死体に驚きながらも、一生懸命に査定を進めてくれている。その様子を見て優之介と斬波が感心していると、最初に対応してくれた受付嬢が戻ってきた。




「で、ではお二人のギルドカードをお預かりします……」


「ん? 素材を買い取ってもらうだけなのにギルドカードいるの?」


「失礼ながら、お二人はティユールの街は初めてですよね? オーガを討伐なさるような強い方なら私達の業界では有名になってるはずなのに、お顔もお名前も存じませんし。それに、それだけ強いならこれからご依頼をさせていただくこともあるかと……」


「そうでしたか、それじゃあ……はい」




 優之介と斬波は受付嬢にギルドカードを渡し、カードを受け取った受付嬢は機械のような物でカードを読み取ると、信じられないと言わんばかりの驚愕に満ちた表情をし始めた。




「嘘……、お二人共Gランク……昨日王都本部で登録されたばかりのルーキー…………」




 ぽつり、ぽつりと優之介と斬波の個人情報を漏らす受付嬢の言葉を拾った冒険者達は今度は声を小さくしてひそひそ話をするようになってしまった。




「とても信じられません……。お二人共、ステータスを確認させてもらっても?」


「え? どうしてですか?」


「見せる義務がねぇな……」


「お、オーガを討伐するようなルーキーがいるはずがありません! オーガは危険度Aクラスの魔物なんですよ!」


「危険度とかあるんですね」


「ふ~ん、それで? Gランク冒険者が危険度Aクラスの魔物を討伐出来るなんてありえない、このオーガは他の冒険者から横取りしたものだと言いたいのか?」


「そうです! それ以外言いようがありません! 横取りは犯罪ですよ!!」


「斬波さん、横取りは犯罪だそうですよ」


「そんなのどこの社会でも共通のルールだろうが……」


「「……」」


「「…………」」


「「……………」」


「「…………………はぁ!?」」




 野郎二人はティユールに到着して早々盗人の容疑をかけられてしまった。

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