第六話 斬波は神の警告を一蹴する

 野営中、優之介は日本に居た時と同じようにスマホを操作していたら、まさかの神様からLINEのメッセージが届いた。




「わわっ!?何か自称神様からLINEが来てる!!」


「落ち着け優之介、まずは返信してみろよ」




 斬波の助言通り優之介はとりあえず返信してみた。




『初めまして、自分の名前は優之介と言います。お話とはなんですか?』




 メッセージの吹き出しに矢印が出ていないのできちんと送信できていることが確認できた優之介と斬波はまさに信じられないと言った様な表情のまま固まった。更にメッセージに”既読”が付いたので二人共目が点になる。




『お、意外と冷静でいられるんだね~♪ 感心感心♪』


『いや、めちゃめちゃ混乱してますよ。こっちの世界って電波とか無いのにLINEが使えてたり、自称神様が現れたり……』


『今回は特別! でも自称神様とは失礼だなぁ~』


『まぁいいや、要件は二つある。一つは少し浅黒い肌で、綺麗な銀髪で、私好みのカッコイイお兄さん♥』




 メッセージが送られて来るテンポの良さに少し疑問に思ったがどうやらジュノンは斬波に用事があるみたいだ。




「なんだ? 俺の事か?」


「らしいですね……」




『斬波さんの事ですか?』


『シバ君って言うんだ! 覚えた♥』


『あ~それでそれで、シバ君に何の用事があるのかはだね……。端的に言うと自重したまえ!』




 いきなりジュノンから自重しろと言われた斬波は「いきなり何言ってんだコイツ」と不機嫌そうだ。




「俺は何もしてないだろ……」




『何もしてなくない! 空気の濃度を一酸化炭素? だけにする魔法とかとんでもないのを作っちゃって!!』


『作るな使うなとは言わないけど、使用は控えなさい! その魔法は危険すぎる!!』




 どうやらジュノンの一つ目の要件は、斬波が日中に覚えた【死神が振舞う最後の晩餐】の使用を控えるように釘を刺すことらしい。一酸化炭素中毒は外傷を与えることなく、無差別に大量殺人が出来るからその辺を忠告しに来たのだろう。


 しかし、神の警告を聞いた斬波は……。




「だが断る! ってか俺の言葉に対してリアルタイムでメッセージを送って来るって事は、どっかから俺らの事見てるなこりゃ……」




 素直に聞かないどころか、真正面から断ってしまった。相手神だよ? 罰が当たっても知らないよ?




『あんっ、シバ君って賢くて理解が早いのねぇ♪』


『好きになっちゃった♥』




「……優之介、そのスマホ電源切れ、今すぐ切れ。魔力から原子や元素を生成できるこの世界で、炭素と酸素を生成しただけなのに、何でわざわざ神様からお咎めを受けなきゃならんのか……解せぬ!」


「……いいんですか?」




 真面目な話をしているのか、ふざけているのか、話が掴めない斬波はイライラして優之介にスマホの電源を切るように指示するが、ジュノンがそれに待ったをかけるようにメッセージを送ってきた。




『待って待って! 切らないで! 二つ目の要件を話すから切らないで!!』


『……自分の後ろで斬波さんが切れとうるさいのですが』


『ティユールの街に到着して一段落したら、教会に祈りに来なさい。そこで改めて話をしよう』




「へ? 教会に行ってお祈り……?」




 優之介と斬波は「何でそんなことせなあかんのや」と言いたそうな渋い表情になった。しかし、ジュノンは「そんなの想定済み」と言わんばかりに追加のメッセージを送ってきた。




『嫌そうな顔してるけどね、本来は神との会話なんてできないんだからね! 本来は教会の祭壇で神々私達に祈りを捧げる聖女が、神託と言う形で神々私達の言葉を一方的に受け取るだけなんだからね!!』




「「じゃあ今の状況は何だんだってばよ……」」




『だぁかぁらぁ! 特別よ特別!!いい? ちゃんと教会に来て祈りを捧げるのよ。さもないと……』




「「さもないと?」」




『イェクムオラム全土のゲイを君達に差し向ける』




「「それは嫌だ!」」


「てか、イェクムオラム? ってなんだ?」




『この世界の名前だよ~! 覚えてね♪』


『それじゃあそろそろ神力が減って怠いのでまた今度、次回は直接会える事を楽しみにしているよ♪』


『あ、シバ君! くれぐれも罪なき人々を無差別大量殺人とかやめてよね!』




「誰がするかそんなもん! 工夫を凝らして酸素濃度を下げて眠らせる程度に抑えるわ!!」


「斬波さんェ……」




 このメッセージを最後にジュノンから新たにメッセージが来ることはなかった。


 そしてこちらからもメッセージを送る事も出来なかった、途中からLINEで返信していなかったが……。


 いきなりの神様登場により、疲れが増した優之介と斬波は早めに寝ることにした。と、言っても夜中にモンスターから襲撃を受けたのでは命がないので交代で寝ることにした。




「んじゃ、見張りがてら酸素濃度をいじる魔法を開発してみっか……」




―魔法【死神が奏でる子守唄】(Lullaby from Mr, Death)を取得しました―


―魔法【魔力反響定位エコーロケーション】を取得しました―




 …………。






――――――――――――――――――――




「ふふっ、それにしても技術先進国日本かぁ~。すごいなぁ、便利そうだなぁ、スマホ」


「何だジュノン、下界に干渉したのか?」


「いやいや、迷い人の持ち物の中に面白いものがありましてね、遠距離間をリアルタイムで会話出来るアイテムなんですよ!」


「そんなもの、人間の国々で研究されているではないか……」


「あんなのなんか目じゃないですよ! なんたって手のひらサイズで、使うのに魔力が全く要らないんですから!」


「なんと!?」


「今回こちらに飛ばされた迷い人達が居た世界は……―」


「……はぁ、アースカイ王国はとんでもない世界から召喚したようじゃな…………」


「そこで彼らには一つ頼まれ事をしてもらいましょう♪ ね、オムニア様♪」


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