第三話 初期装備よりひでぇ状態でエンカウントしちまったじゃねぇか!

「お、狼だ! しかもちょっと大きい……」


「見るからに敵意丸出しだな。ただこの状態で戦うのは流石にマズイな……」


「え? あ……。俺達、パンツ一丁…………」




 優之介と斬波は不運にも水浴びをしている最中に狼と遭遇してしまった。


 初めての戦闘になりそうだと緊張感に加え、武器や装備等は全て川原に置きっ放しで野郎二人は丸腰、しかもパンツ一丁と言う、誰がどう見ても絶対絶命と言う状況下に置かれていた。




「……ふぅ、…………【鑑定】」


「…………」(優之介のやつ、ちっとは成長したようだな)




 優之介は緊張で震えるも一度呼吸を整え、【鑑定】スキルで目の前の狼を鑑定してみる、鑑定結果は以下のように出た。




【ハントウルフ】


 平原、森、山等、広い範囲に生息する狼型のモンスター、常に複数で群れを成し行動する。


 素早く行動し、チームワークで獲物を攻撃する。 


 前脚の爪と牙は鋭く、人間が急所に攻撃されればひとたまりもない。




「前脚の爪と牙が鋭い、引っかきと噛み付きは要注意って事か……」


「おい、優之介、あの二頭は俺が相手をするからお前はを頼む」


「え……」




 優之介が振り返ると、そこには三頭目のハントウルフが気配を殺しながらタイミング遅れて現れたではないか。




(やっべ、斬波さんが教えてくれなかったら俺、背後から一撃だった……)




 獲物を注意を引くための陽動役と獲物に止めを刺す攻撃役の二手に別れてのフォーメーションは敵ながら見事なものだった。




「とりあえず、向こうを牽制しつつ武器を回収するぞ、川底に転がってる投げやすそうな石を二個ぐらい拾っとけ! 向かってきたら目をめがけて思いっきり投げつけてやれ!!」


「はい!!」




 優之介と斬波はジリジリとハントウルフを牽制しながら川から出で武器を回収しようとするが陽動役の二頭が巧妙に邪魔をしてくる。


 斬波は石を拾っては眼球をめがけて投げつける。【身体強化】で強化された肉体から放たれる石はまるで銃弾のような勢いだった、目で追えない速さではないがプロ野球の投手が投げるストレートより速いのは明らかだった。




「ギャン! ギャン!」


「はっはー! 【身体強化】で石投げも立派な武器だなこりゃ! 優之介!!」




 ―ガシャン!




 斬波が剣の回収に成功し、優之介の足元に剣を投げた。優之介はすかさず剣を拾い、抜剣して構え、戦闘態勢に入った。


 自分に対抗する手段を得たと判断した攻撃役のハントウルフは、攻撃のタイミングを伺い優之介とにらめっこ状態になった。




「グルルァウ!!」


「なっ!?」




 そんな時だ、剣を放り投げた隙を突かれ、斬波はハントウルフに飛びかかられ、右腕を噛まれてしまった。




「斬波さん!!」


「俺に構うな! お前はお前の身を守ることだけを考えろ!!」


「でも……!」




 斬波を引きずり倒さんとするハントウルフと持ちこたえようとする斬波が攻防を繰り広げる中、斬波を倒そうともう一頭のハントウルフが飛びかかるが……。




「心配いらねぇよ! うぉおおらぁぁぁあ!!」


「ギャン!」


「ギャンギャン!」




 なんと斬波が強引に右腕を振り回し、飛びかかってきたハントウルフに対し、自分の右腕に噛み付いてるハントウルフをぶつけ攻撃を回避したのだ。




「石の弾丸も追加でプレゼントだぜぇ!!」




 斬波はさらに間髪入れず投石による追撃を行い、二頭の内の一頭の眼球に命中し、脳に直接ダメージが入ったことで絶命した。




「すげぇ……」


「グァウ!」「うわっ!?」




 斬波の攻撃に見とれていた優之介はハントウルフに好きを見せてしまい攻撃されてしまう。




「うわぁあああ!!」




 ―ザシュッ! 




「ギャン!」




 当てずっぽうで振り回した剣がハントウルフの胸を掠め、不意をつかれたハントウルフは攻撃を中断した。




「油断するな!」


「はい!!」




 体勢を立て直す優之介と斬波、二頭のハントウルフはそれぞれ一対一で戦う形になった。


 ハントウルフの動きをある程度見切ったのか、余裕そうな笑みを浮かべる斬波と、ここからが本番だと緊張が走る優之介。


 野郎二人の奮闘はどのような結末を迎えるのか、狼と人間のタイマンはこれからだ。


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