第二話 修行とアイテム収集しながらする旅は楽しいぜ!

「……はぁ~、地図が流通してないって無いだろ…………」




 旅の道中、斬波が愚痴をこぼした。王都で地図を買おうとしたが地図は流通してないと断られてしまってからだ。


 地図が売ってないのではなくそもそも流通していないのには何か理由があるんだろうと察した優之介と斬波は潔く諦め、街の人々から道を教えてもらいながらティユールの街を目指すことにした。




「でも、道ができてるから迷わずに進めますよ」


「それだけが救いだな……」




 それからはとぼとぼとゆっくりと歩いていた優之介と斬波だったが、マリィから受けたアドバイスを思い出した。旅の道中は薬草やアイテムを集めながら歩けば街についた時に換金して路銀を稼ぐと良い、だっけか。


 優之介は早速実行しようとするが……。




「この世界のアイテムとかわからねぇ……」




 早速詰んだ……と、思っていたら横から斬波が優之介に軽くアドバイスをした。




「何の為の【鑑定】スキルだよ……。【鑑定】スキルを常時発動させながら歩けばいいだろうが」


「おぉ! その手があったか!!」




 優之介は早速【鑑定】スキルを発動させながら辺りを見回してみる。すると、視界に入る物体の名前が浮かんで見えるようになった。




「あっ! 薬草だ! 薬草が生えてる!!」




 優之介が薬草を見つけると【鑑定】スキルが薬草の詳細を教えてくれた。




【タブンナオリ草】


 イェクムオラム全土で自生が確認されている薬草、入手が容易なので流通数がとても多く、値段も安価。


 主に風邪薬の原料に使用される。


 根っこを残して採取すればそこからまた生えてくるので、根元の葉を残しつつ切り取るのがベスト。




「「…………」」((ひでぇネーミングだなおい))




 優之介と斬波はツッコミを我慢しつつタブンナオリ草を採取しながら旅を続けた。


 道中はタブンナオリ草の他にもヒール草、ドクケシテクレ草、キュアリーフ等の薬草類の他に果物、薬効のある木の実、元居た世界には無くて使い道がありそうなアイテムはとにかく収集しまくった。




「童心に返ったような気分とはまさにこのことだな! 楽しくて仕方がない♪」


「子供の頃、昆虫採集をしてた懐かしい気分ですね♪ でも、気づけば魔法鞄の空きがもう三分の一しかありませんね……」


「それじゃあ今度はトレーニングしながら旅をするか?」


「それいいですね! 俺、斬波さんみたいにもっともっと強くなりたい!!」


「焦るな焦るな、時間はまだ山ほどある。もう少し歩いたら休憩にしよう」




 優之介と斬波は小川が流れている場所にたどり着き、川原で休憩に入った。


 適当な石を持ってきては椅子がわりにして腰を下ろし、タマキが用意してくれた食事を頂く事にした。タマキが用意してくれた食事は野菜や肉をパンに挟んだ、言わばサンドイッチのような食べ物で、その味はまさに絶品だった。


 斬波が「もうこの味に会える機会はそうそう無いな」と遠い目をして呟いているのに対し、優之介は逆に「もっといろんな美味しい食べ物を食べてみたい」とこれからの食事に期待を持つようになっていた。


 しばらくして、食事と食休みを終えた優之介と斬波は上半身裸になり、ショートソードを片手に素振りを始めた。


 自然豊かで美味しい空気を全身で味わい、小川のせせらぎと風を切る音を聴きながら行う素振りはとても充実していた。


 上段からの振り下ろし、左右の横薙ぎ、下段からの切り上げ、突きをそれぞれ百回振りぬいた時には二人共汗だくだった。




「はぁ……はぁ…………」


「ぜぇ……、こりゃ俺も鍛え直さないとダメだな…………」




 優之介と斬波は大の字で仰向けになって脱力しきっていた。しかし、その表情は苦痛ではなく楽しさに満ち溢れていて、本当に楽しそうだった。




「どうだ優之介、キツいか?」


「キツいけど、すごい楽しい! まさに自由って感じがして、身体が解放されたように軽いんですよ♪」


「そうか……実は俺もなんだか漲ってくるんだよ」


「はぁ、それよか汗かきすぎたなぁ~」


「ベトベトですね……」


「そこに小川が流れてるじゃろ?」


「じゃあ、やることは一つですね……」




 優之介と斬波は呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がり、大きく深呼吸をしてから大声で……。




「水浴びぃ~~!!」


「わっしょぉ~~い!!」




 ―バッシャァアアアアアアアアン!!




 パンツ一丁で川に飛び込んだ。




「気持ちイィ!!」


「水も綺麗だし最高だぜぇ!!」




 バシャバシャと水を掛け合う優之介と斬波はまるで子供のようにはしゃいでいた。


 野郎二人がしばらく水浴びを楽しんでいるとそこに近寄る影が……。




 ―ダンッ、ダンッ、ダンッ……―


 ―グルルルルルル……―




 優之介と斬波が振り返ると、水の音と野郎二人の楽しそうな声に釣られてやってきたのか、そこには少し大きめの狼が二頭が野郎二人を睨みながら唸り声を上げていた。




「「あ…………」」




 パンツ一丁の優之介の斬波の目の前には敵意むき出しの狼が二頭、野郎二人の冒険は波乱の幕開けとなりそうだった。


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