第二話 金髪美少女は王女様のようです

 金髪美少女は軽く頭を下げるが、金髪美少女の言葉に戸惑う一同。しばらく時間が経って斬波が顔を顰めて突拍子のないことを言い出した。




「どうやら俺達は異世界に飛ばされたようだ……。ラノベみたいな展開しやがって畜生」




 斬波は誰よりも早く自分の置かれている状況を理解したようだ。しかし、斬波の言葉を聞いた優之介は耳を疑った。


 ”異世界に飛ばされた”、現実的にそんな事があり得るのだろうか? 金髪美少女が先程ここはアースカイ王国と言ってたがそのような国名は聞いたことがないとは言え物理的、現実的に考えにくい、いや考えられない。本当に異世界に飛ばされてしまったのだろうか……?




「斬波さん、なんで異世界に飛ばされたって思うんですか? 俺と斬波さんはラノベを読むことが趣味で”死んで気がついたら異世界だった”とか”お昼休みの教室内に突如魔法陣がが現れたと思ったら異世界に召喚されてました”とかよく小説の中の一文としてはよく読みますけど、実体験は現実的に考えてありえないでしょ……」




 平常心を装いつつも内心パニック状態の優之介は何とか心を落ち着かせようと、既にケロッと平常心でいて自分達は異世界に飛ばされたと自己完結してる斬波に八つ当たり気味に文句を言ってみた。




「飛行機から放り出されたと思ったらこんなところにいるんだぞ? 普通は意識が飛んで目が覚めれば海上に浮かんでるか、病院に搬送されてたかの二択だと俺は思う。しかし、今の状況は違う、よくわからん部屋の中にいるが運び込まれた形跡がない、つまり俺達は何もない空間から突然ここに現れたことになる。こんな事は物理学的にありえない、言うなれば神隠しだな、それしか言い様がない。それに、ラノベじゃこんな展開はよくあったじゃねぇか、お前もよぉく読んでただろ?」


「…………」(いや、確かにそうだけど判断材料が少なすぎて俺には何もわからない中、斬波さんは淡々と言うけど何でそんなに冷静でいられるの? 斬波さんも俺の影響で異世界転生系のラノベをよく読んでるけど、もしかしていつか自分が異世界転生してもいいように心の準備をしてたとか? 俺も趣味はラノベの読書だけど流石にいつか自分が異世界転生してもいいように心の準備はできてないよ?)




 優之介はそんな事を考えながら今まで読んできたラノベ作品の数々を思い出す。それぞれ作品の設定として異世界に行く方法をふと思い出した、そしてその方法で異世界に来た場合は今後、我が身がどんな状況に置かれることも……。




(俺が読んできたラノベでは大体事故死、殺人事件に巻き込まれ死亡した後に異世界の神の手によって、前世の記憶を持ったまま異世界で一から生涯を歩むパターンと、転移先の異世界の人々が召喚の儀式を行った結果、作業中、休憩中等、時と場所を構うことなくいきなり異世界に召喚、転移させられてしまうパターンの二つだ。


 今回、飛行機から放り出されて海に落ちたはずが式典の間? ってところに居るこの現状なら異世界に飛ばされる方法としては後者にあたる。


 あれ? 神様じゃなくて異世界の人々によって召喚されたパターンって嫌な予感しかしない。よくある王道ストーリーは召喚主はどこかの国の王様で、言葉巧みに国の為に働かされるヤツだ!) 




自分の意思とは関係なく労働力にされると思った優之介は顔を青ざめる、すると……。




「やはりお顔の色があまりよろしくないご様子ですわね、ここは一度―」




 金髪碧眼の美少女が優之介に顔を近づけながらそう言ってきた。




(やばい! めっちゃ美人! しかもいい匂いがふわっとした!!)


「い、いぃぃいえいえ! 大丈夫! 大丈夫ですから!!」


「そうですか? ご無理なさらないでくださいね。あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね? 私はアースカイ王国第一王女のソフィーリア・レイ・アースカイと申します♪」


「俺は夢咲優之介です」


「叶斬波です、”斬波”が私の名前で”叶”が私の家名になります。王女殿下」


「ちょ、それ言ったら俺だって”優之介”が俺の名前で”夢咲”が俺の家名です!」


「シバ様にユウノスケ様ですわね、私の事はソフィーとお呼び下さい。後ろの皆様もお構いなく」




 金髪美少女はソフィーリアと名乗った。彼女は第一王女らしいが傲慢な態度は一切なく可憐なその姿は、優之介達から好印象を受けた。




「斬波さん! さらっと王女殿下とか普段使わない単語を自然に使わないでください、俺達の日常生活でそんな単語普段から使わないでしょ!?」


「いやあ、我が国の皇太子様も皇太子殿下だから俺は殿下という言葉は使い慣れてるぞ」


「はぁ……、もういいですよ、それにしてもわからない事が一つあります、それは人数です」




 優之介と斬波はぐるっと辺りを一周見回した。この式典の間にいる、自分達と同じ異世界召喚されたであろう人々の人数を確認したのだが、優之介と斬波を含めても十人もいないのだ。




「優之介と俺、そしてそちらの四人組と一人に、三本肩章の副操縦士さんに乗務員が一人、合計で九人がが異世界召喚に巻き込まれたという訳か……」


「あの、人数が何か? 私達が召喚の儀を行った際に現れてくださったのは貴方方だけですわ」


「そのへんは気にしないでくれ、こっちの話だ。それより、俺達はこれからどうしようかねぇ」




 斬波の言う通りだ。異世界召喚に巻き込まれたまでは良いものの、これからどう生活していけばわからない。これがどこかの無人島ならサバイバル生活をしていこうと心構えができるのだが、何せここは異世界だ、文化どころか右も左も未知の世界でどう生きていくのか、斬波の言葉に困惑する一同。沈黙が続く中、ソフィーリアは彼らにこう言った。




「とりあえず、皆様には私の父である国王陛下と謁見をしていただきます」




 何気なく言うソフィーリアであったが”国王と謁見する”の単語を聞いた一同に緊張が走った。


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