第13話 お揃いのピアス
静かな図書室で話をすれば、皆に聞こえてしまうと私がいうと、ユーノスは音を遮断してくれた。
さすがに国一番の魔術師は違う。というか、まだ名前が変わっていないのなら、今からそうなるのかもしれない。
まずは、ユーノスに転生者という部分を外した自分の今の状態を話した。
彼も家庭の問題では家族から理不尽な扱いを受けて来ているので、私の話を真剣に聞いてくれた。
それで、私は自分がよく未来の夢を見るのだと話した。
同じ夢を見る事。それはこれから起こることなのだと思う。とそう話した。
「シタン嬢の話が、荒唐無稽だとは言い切れない。そのような能力を持つ者もこの世の中にはいるのだ。普通、君の年齢でそんな事は知らないだろうし、君が見た夢が作り話だとも思えない。実際に存在する人物も、君の話と辻褄が合うしな」
私の話を馬鹿にすることなく聞いてくれるユーノスの様子に安心した。
「それに、もうひとつ、ユーノス様は魔術師として国に貢献されて、王様からシャオリオン領を褒賞として貰われて、名前をユーノス・シャオリオン様に変えられるのだと、夢で見ました」
「・・・そうか、実はその話は昨日連絡を貰ったばかりだ。まだ領地の名前は聞いていないが・・・」
「では、私をユーノス様の弟子にして下さいませ」
私はやった!と思い、勢い込んでそう言った。
すると、彼は困った様な顔をしたのだ。
「だが、事はそう簡単ではないぞ。シタン嬢はまだ幼い。何をどうして弟子にするという話が出来ると思う?魔力測定さえ受けていない。10才になり魔力測定を受け、その時に魔術学院への推薦と私の弟子にという事を手回しは出来るが・・・」
難しい顔をして考えているのを見ていると心配になる。そう言われてみれば確かにそうだ。
「ああ、本当だわ・・・どうしよう。問題は私が第二王子様の婚約者にされる事なのです。今の家にいれば必ず政略の為に婚約者にさせられてしまいます」
「――――そんなに心配するな。まだ時間はあるだろう?大丈夫だ。私もどうすれば良いのか考えてみよう。そのように悲しそうな顔をしなくても良い」
「はい・・・そうですよね。今日はユーノス様にお会いできただけでもよかったと、思わないといけませんね」
「君は、とても幼いのに、そんな風に思えないほどしっかりしているな。これもその能力のせいなのか・・・」
「どうでしょうか・・・」
そこは話をするつもりはないので、濁しておく。
「君の話だと、この国の存続の問題になる。私を信用して話を預からせて欲しい」
「はい。あの・・・相談したいことが出来たらどうしたらいいですか?」
「そうだな、これを渡しておこう」
ユーノスは片耳の小さなダイヤのピアスを外すと私の耳に着けてくれたのだ。
目立たないように少し耳の上の部分につけてくれた。痛くなかった。
「これは、私以外は外せないし、見えないように魔法をかけてある。用事があればピアスに魔力を通し、私を呼べば良い」
これは、めちゃくちゃ嬉しかった。お揃いピアスだ!なんてこと。鼻血がでそうな程嬉しい。
「うれじい・・・ユーノス様、ありがとう」
嬉しくて涙が出た。嬉しすぎる。
「お、おい、泣くな」
すぐにユーノスがハンカチで涙を拭いてくれる。やっぱり優しい。
ふと見ると、アンが私を探して図書館に戻っている。ウロウロしているのが目に入った。
まだ私には気付いていない。
「あ、侍女が迎えに来てるので、行かなくちゃ」
「ん、そうか。では、私からも用事があれば連絡する。ハンカチは君にあげるから使いなさい。では」
スッとソファーから立ち上がると、ユーノスは静かに去って行った。
「あ、お嬢様、いらっしゃった!お昼の時間ですよ。ご本に夢中になられていましたか?」
「もう、そんな時間になっていたのね。ごめんなさい。お昼にしましょう」
お昼のバスケットをアンはとても楽しみにしていた。
二人分詰めてもらっていたし、こういう場所なら二人で一緒に食べても使用人だからいけないとかいう者もいない。とても楽しく二人で食べる事が出来た。
「お嬢様、アンはこんなに美味しいサンドイッチは初めて頂きました。お嬢様付きの侍女にして頂いてから、嬉しい事がたくさんあって幸せでございます」
「うふふ、アンは食いしん坊だもんね」
だれもいない時なんかは、こっそりアンにおやつにクッキーを持たせたりしている。まだ十代の女の子なのだ。お菓子も大好きなのだから。
「午後からも図書館で本を見て、かりてかえるつもり。本が重たいから手伝ってくれる?」
「はい、美味しい昼食を頂いたので、力もりもりですよ。お嬢様、お任せ下さい」
「お願いね」
そうして10冊借りられるので、10冊借りて帰った。
魔術の本を何冊か借りた。
「まあ、お嬢様は難しいご本を読まれるのですねえ」
「うん、興味があるからみてみたいのよ。図書館大好きだからまた一緒について来てね」
「はい、喜んでご一緒させて頂きます」
アンはとても嬉しそうにそういった。
すごく有意義な日だった。耳のピアスに触って見る。
確かにそこに存在していた。
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