第12話 図書館は素晴らしい
王城の中にある図書館はそれ自体が自立した建物だった。物凄い広さがある。
私は馬車に乗ってアンを連れて図書館に行く事になった。最初の日だから、図書館まではエレン夫人が送るというので、一緒に出掛けた。
「シタンちゃん、図書館から他所に行ってはダメよ。本当はずっと一緒についていたいのだけど・・・」
「おかあさま、シタンはだいじょうぶです」
「そうね、こういうことも練習ですものね。分かったわ」
王城の中で、図書館ならば身元のシッカリした者でなければ出入りできないので、街に出て買い物をするよりも余程安心だという理由で二人で出してもらえた。
家の馬車は図書館の前まで着けられるので、帰りは時間が来たら迎が来るとの事だった。
めっちゃ嬉しい。朝から晩までいたいとエレン夫人に言ったら、もし帰りたくなったら連絡するようにと言われた。
図書館の受付にお願いすれば、家に伝書鳩ならぬ魔法鳩が連絡をしてくれるそうなのだ。
お昼はバスケットまで用意してもらった。図書館には広い庭があるのでそこで昼食を摂ることも出来るそうだ。
こんなに開放的ですばらしい時間はこの世界に来て初めてだ。
アンは図書館で本を借りて、図書館の庭園の東屋で編み物をしたり、本を読んだりして待っているというので、そこで、私が昼食を食べる時間に待ち合わせを決めた。
「お嬢様、知らない人について行ってはいけませんよ」
「はーい。大丈夫」
さすが、王立図書館。何て広さだろう。
あちこち見て回る。ここに来たのは本を借りたり読んだりする目的もあるけど、もう一つ、ユーノスがここをよく利用していると小説に書いてあったからだ。
彼の外見は長い灰色の髪に瞳は赤だった。髪を伸ばしているのは、魔力が髪に蓄えられるのだとあった。
そして、白皙の美貌だとも書いてあった。楽しみだ。赤目だとかツボすぎる。三次元で見られるなんて超素敵。
私は、本じゃなくて、ユーノスを探し回った。
いやもう、広すぎるでしょこの図書館。
座って本を読んでいる人物を見て回っていたので、突然書棚の間から出て来た人を避け切れずに尻もちをついてしまった。
「あ、すまない。大丈夫か?」
見上げると白皙があった。
透明度の高い深紅の瞳がなんて神秘的なのだろうか。時間が止まるとはこういう事なんだなと思った。
そのまま、身体に手を添えられて起こされ、まくれたドレスをそっと直してくれる。
「あ、あの!」
「ん?」
「お嫁さんにして下さい!ダメなら弟子にしてください・・・」(誤爆)
私が食い気味に発した言葉に目を丸くして、ユーノスは黙ってしまった。
だめじゃん、ついつい本音を・・・。
「・・・ぷは!」
くつくつと笑い、しゃがんでユーノスは視線を合わせた。
「あ・・・」
「どこのお嬢さんか知らないけど、そんな事言われたの初めてだ。おもしろい子だね。でもまだ君の年齢では早いと思うよ。おませさん」
頭をくしゃくしゃと撫でられる。
いや、私、絶対この人の弟子になる。
絶対!シタン・ヴィエルジュが初めて恋した瞬間だった。
そして、彼のその手を掴み私は自分の魔力を彼に流してみせたのだ。
まだあと二年あるけど、魔力は十分に体内を廻っている。彼になら、この魔力量の凄さは分かると思った。
「う・・・君は・・・」
「わたし、せいりゃくの駒にされるのは嫌です。お、お嫁さんが無理なら、弟子にしてください!」
よし、言い切った。
いつものか弱いご令嬢の仮面は投げ捨てて、ちょっと肉食系だったかも知れない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ.君は一体何者なんだい?」
そりゃそうだ、彼にとっては、とつぜん小さい女の子が妙な事を言って来たと思ったら、強い魔力を流して来たのだ、性急すぎたかも・・・。遠い目。
それで、図書館のあちこちに設置されている読書や勉強用の机や椅子、ソファーなどがある所に本を持って腰かける事にした。お話をしようという事になったのだ。
どうやら、魔術師のローブを着ているし、この城で働いているのは間違いないようだ。
「ごめんなさい、きゅうに変なこといって。私、シタン・ヴィエルジュといいます」
「私は、王宮魔術師をしているユーノス・ハルディアというんだが、知っているかい?」
「はい、知っています」
さて、ここからどんなふうに話を持って行こうか今考え中だ。
どうしても、どうしても、彼とは今後も縁を切りたくない私だった。
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