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頭をフル稼働させ、レイトは慎重に言葉を選んだ。
「あーっと……今日の朝食は何かな? ほら、ルマが食べられないものとかあったら困るだろ?
どうせリックのことだから、そういう話してないんじゃないの?
ねぇ? ルマ」
ルマに視線を向けながらそう微笑むと、ルマは微妙な表情で曖昧に首を動かす。
口元には笑みを湛え、レイトは顔をルマに向けたまま視線だけリックに向ける。
その視線だけで何かを悟ったリックが、ようやく合点がいったように小さく頷いた。沸騰してきた鍋に卵を放りながら、彼はルマに目を向ける。
「それもそうだな。すっかり失念していたよ、すまなかった。
ルマもこれからはここで暮すんだから、そう言うのもキチンとしておかないとな。何か食べられないものがあったら、遠慮なく言ってくれ」
優しい声色でそう言うリックに、ルマはホッとしたように1つ息をついた。しかし、少しの間の後、彼は不思議そうに首をかしげる。
「僕も、ここで暮らす……の?」
ルマの言葉に、リックも不思議そうに首をかしげ返す。
「故郷に帰るというのなら止めはしないが?」
「帰りたけど故郷が分かんないって言うなら調べてあげるよー」
「レイト」
軽い口調でのレイトの言葉を諌めながらも、リックの視線はルマから離れない。
「その辺の判断はお前に任せる。行く宛――帰る家があるなら、そこまで俺たちがサポートしよう。
ないなら、別にここで暮せば良いさ。食いぶちが1人増えたところで困りはしないからな」
当然そうに言って、リックは小さく肩を竦める。
淡々とした口調とは裏腹な優しい瞳に、ルマは何かを言おうとしているかのようにもごもごと口を動かしていたが、結局何も思いつかなかったらしくしばらくして口を閉ざした。リックとレイトはその間静かに待っていたが、ルマが何も言わない様子なのを悟ると互いに顔を見合わせ、リックは肩を竦めレイトは苦い笑みを浮かべた。俯いてしまったルマの頭を軽く撫でた後、リックはコンロに向き直り鍋の火を止める。
「レイト、皿とボールを用意してくれ」
「はいよっと」
リックの肩越しにかけられた言葉に軽い調子で返事をし、レイトは食器棚からいくつかの食器を取り出しテーブルに並べた。その間に、リックの手は手早くシンクの上を動く。包丁の軽快な音が響きだした頃、ようやく顔を上げたルマが慌てたようにリックに近づいた。
「あ、あのっ」
「ん?」
手は止めないままに視線だけをルマにやれば、彼は一瞬躊躇しながらも凛とリックを真正面から見つめた。
「ぼ、僕にも何かお手伝いさせて下さいっ」
予想外の言葉に、リックは大きく目を見開く。それを、皿を並べながら見ていたレイトは小さく感嘆した。
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