第八章 〜ケルピー〜

 私達は今猛攻にあっている。

『お嬢様。こちらはもう限界です』

 シルキーさんの報告で非常に不味い事態なのが改めてわかった。

 ヤツ等の猛攻にこちらは限界まで達し、私達では止められない状況化にある。

 なので、新たな戦力としてホムンクルスを作ろうとしているのだが、未だに成功しない。

『お嬢様が錬金で失敗するのはこれが初めてですか』

 私からしたら失敗続きなのだけれど、確かに形にすらならないのは今回が始めてである。

 うーん。どうしてだろうか。

 失敗の原因がわからない。

「もしかしたら、ホムンクルスがホムンクルスを作る事は出来ないのか」

 そうなると私がホムンクルスである以上、ホムンクルスの作成は出来ない事になる。

 それは困る。

 ヤツ等に対抗する戦力が作れない。

 ヤツ等の猛攻は予想はしていた。

 していたのだが、想像以上で私にも手がつけられない。

『ホムンクルスが駄目ならゴーレムなら如何でしょう』

 ゴーレムか。

 ゴーレムは土、泥、岩などによって作られる人形。

 人形と言っても姿形は自在に変えられ、術者の命令に従う。

「シルキーさんはゴーレムの作り方はわかります?」

 私はわかっていない。

 けれど毎晩製作者様の本を読んでいるシルキーさんなら、わかるかもしれない。

『ゴーレム生成の本を持って参ります』

 そう言って隣の部屋へ行ってしまった。

 多分シルキーさんの頭の中には、どの本に何が書いてあるかがわかっているのだろう。

 ゴーレム生成方法さえインプットされているのだろうが、私の事をたててくれているのだろう。

 変に気遣ってくれている。

『お待たせしました』

 シルキーさんが本を抱えて戻って来たので、一緒に外へ出る。

 ゴーレムの作り方を読むと、ゴーレムは【魔法】ではなく、【魔術】にて作るらしい。

 何が違うか。

 まず【魔法】は魔力の素【魔素】を自分へ取り込み、【魔力】へと変換してそれを【魔法】へと変える。

 私の魔力操作が上手いのは魔素を取り込む容量が大きく、それを効率良く変換しているためだと推測している。合っているかはわからない。

 そして次に【魔術】とは、魔道具などを用いて自分の魔力をきっかけとして魔法を実行する事。

 メリットとしては【魔術】の方が使用する魔力が少なくて良い。

 デメリットとしては道具を用いるために時間とコストがかかる。

 今回は「魔石灰」という魔力が練りこまれたチョークで魔法陣を描き、人形を置いてそれを動かすそうだ。

 魔石灰は製作者様の物がある。

 ゴーレムを【魔法】で作れなくはないが、動かしている間はずっと魔力を注いでいないといけないらしい。

 しかし、【魔術】なら一回注げば終わり。

 エネルギー補充がないので一日で崩れてしまうらしいが。

 私は庭に魔法陣を描いていく。

 魔法陣はまず外から中へ向かって命令文を書いていく。

 一番外側は「ゴーレムの作成」、次は「材質は土」、という様に書いていく。

 簡単に言えば中二病式プログラミングだ。

 最初は面倒ではあるが、自動で動いてくれるので良いだろう。

「最初だから試しに二分後に自壊するようにしますか」

 ゴーレムの媒体となる土塊つちくれを置く。

 魔法陣に魔力を流す。

『お嬢様。成功です』

 五十センチメートルほどの小さなゴーレムが動き出した。

 初めてだったので、ただ歩くだけ。

 そして二分後に自壊した。

 よし。やり方は分かった。

『これでようやくハーブの侵略から耐えられます』

 そう。「ヤツ等の猛攻」とは異世界ハーブの畑侵略だ。

 ハーブは元々病気や枯れに強い。そして様々な用途に使用出来るので植えた。

 植えてしまったが、想像を絶するほどの繁殖力となり、ハーブから畑を守る事となってしまった。

『乾燥するにももう限界でしたので、これで楽になれますね』

 ハーブティーが沢山つくれてしまう。

 さて、次は魔法陣に歩く事以外の事を追記していく。

 抜いてはいけない必要な花を一枚ずつ土塊に混ぜ、それ以外の雑草を抜くようにした雑草取りの一号。

 川から水を汲んで、一定時間に水やりをする岩型の二号。

 そしてハーブを一定の範囲から広げないように設定した三号。

 これでもう大丈夫だろう。

 駄目そうならまた作り直せばいいし。

 マンドラゴラの花が綺麗に咲いている。

 夏だなぁ。

 夏といえば、枝豆食べたいなぁ。

 そうだ!前に蔓や蔦を取りに行った場所に豆科の植物があったはず。

 行ってみようか。

「シルキーさん。ちょっと沼地の方へ行きますけど、どうします?」

 別に枝豆ぐらいなら荷物が重くならない。

 重くなっても私なら持てるのだけれど。

『ご一緒します。何かあるかわかりませんから』

 それは「私に」って事ですよね?

「私が何かしでかすって意味じゃありませんよね!?」

 シルキーさんはニコリと笑って何も言わなかった。

 ノーコメントですか!

 むむむ。

 仕方ない。それじゃあ行きますか。

 今回はシルキーさんが籠を背負って行く。

 暑い。

 夏い。

 沼地に近づくと空気に湿気を帯びる。

 枝豆とビールでクゥーっとっていうのは憧れる。

 けど私はアルコールが苦手なんだよなぁ。

 アルコールが飲める人は正直言って羨ましい。

 会社で飲み会があっても美味しくもないノンアルビールかお茶やジュースだし。

 アルコールが飲めないのはそもそも酔えない。

 酔うことが出来ない。

 酔う前に吐いてしまう。

 だから酒に対しては楽しみなど無いのだが、おつまみの類はよく食べていた。

 よく「酒は飲まないのにそういうの好きだねぇ」と言われるくらいに。

 美味しいよね。おつまみ。

 そうこうしているうちに沼地に着いたのだが、先客がいた。

 馬がいる。

 馬って野生でいるものだっけ。

『お嬢様。あれはケルピーですね』

 ケルピー。スコットランドにいる幻獣だっけ。

『馬の魔物で、ヒトを川などの水辺に引き摺り込み、食べます』

 え!?怖っ!!

 結構怖いヤツじゃん。

 私前世で一回川で溺れ死んだから余計に怖いんだけど。

「魔物って言うことはーー」

『はい。魔法を使い、お嬢様の言う「超的変異」をします。ケルピーは川を下り、アハ・イシュケという魔物になります』

 アハ・イシュケ……ねぇ。聞きなれない魔物だこと。

『成長して海へ行き、アハ・イシュケとなり、子を生んで子がまた山へ来るそうです』

 鮭かっ!!

 思わずツッコんでしまう。

 鮭は川で生まれ、海へ下って行き、また川で産卵するという特徴を持つ。

 シロザケと呼ばれる種だ。

 しかし眼の前にいるのは鮭じゃなく馬だ。

 ケルピーならゲームのモンスターに出て来たりするんだよなぁ。

『あまり攻撃的な魔物ではありませんが、注意はした方がよろしいかと』

 こっちの邪魔してこなければいいか。

 けれど、酒のおつまみの事を考えていた先で馬がいるとなるとなぁ。

 馬刺し食べたいなぁ。

 しかし、醤油はないしポン酢も無い。

 あるのは馬と生姜だけ。

 生姜はこの前見つけたものだ。

 新生姜っぽいと思っているが、まだ食べていないからわかっていない。

 酢漬けにしようか迷っている。

 馬刺し食べたいけれど、魔物の生食はちょっと怖いなぁ。

 なら、さくら鍋だろうか。

 いや、味噌がない。

 悔やまれる。

『ケルピーは美味しいのでしょうか?』

 あ。シルキーさん同じような事を考えていましたね。

「オークは美味しかったですよ」

 オークも魔物だったはずだ。

 食べられないって事はない。

 むしろ味としては美味しかった。

『お嬢様。オークは女性の敵ですよ。まさか……一人で戦ったり』

 あ。やべぇ。説教される。

「運良く一撃で仕留めたので大丈夫でした」

 嘘はついてない。

 武器とか壊されて苦戦したとか絶対に言えない。

『なら良かったのですが、くれぐれも無茶をしないようにお願いします』

 どうやら引き下がってくれたらしい。

 私の場合はケルピーよりシルキーさんの方が怖い。

 クラーケンよりも怖いわ。

『お嬢様』

「ヒィっ!!」

 思っていた事を勘付かれた!?

『何変な声出しているのですか。ケルピーが沼の中へ入っていきましたよ』

 見るとケルピーの姿が無かった。

 良かった。

 色々と良かった。

 セーフ。

「さて、マメ科の採取クエストですよ」

 蔓と蔦の多い場所を探していく。

 ちなみに「ツル」と「ツタ」の違いとして簡単に説明しておく。

 蔓というのは茎が長くのびたものの総称で、特にツル性植物という場合、他のものに巻きついて成長する植物の事を言う。

 蔦というのは、一般的に付着根ふちゃくこんという根を他の木や壁などに伸ばしてくっついて成長していく植物のことである。

 セーブポイントがある方が蔦と覚えておこう。

 そして今、目の前にあるのがインゲン豆である。

『可愛いですね』

 確かに淡紅色や白の蝶形花をつけ、可愛らしく花が咲いている。

 これからインゲン豆が出来る。

 インゲン豆ならマヨネーズで食べたいが、卵が無いのが悔やまれる。

 おっ!!ツルマメもある。

 ツルマメは大豆、つまり枝豆の原種とも言われている。

 これがあるなら、可能性はありそうだ。

 お!おぉ!サヤエンドウを発見した!

 サヤエンドウはエンドウ豆の若き頃の姿。

 これもマヨネーズで食べたい。

 そして紫色のエンドウがある。

『これは色が違いますね。朽ちてしまったのでしょうか』

 朽ちてはいないようで、瑞々しい。

「これはそういう種類だと思います」

 確かエジプトのツタンカーメンの墓の近くに紫色のえんどう豆があったと聞いたことがある。

 子供の自由研究キットにもなっていた。

 私たちは様々なマメ科を手に入れた。

 ちなみに、よくある転生知識で豆と麦を交互に育てるというのは、マメ科植物は根に根粒こんりゅうというのをもち、根粒菌こんりゅうきんという細菌が共生しているのだ。

 根粒菌は植物から栄養分をもらって生活の場を提供して貰う代わりに、大気中の窒素を植物にとって使いやすいアンモニアに変える。

 窒素は植物にとって必須であり、肥料として取り入れる成分の一つである。

 そのため、マメ科を育てると土に窒素(アンモニア)が含まれる。

 それが次の農作物に良い影響を与える。

 自分で栄養分を補えるので、マメ科はやせた土地でも育つ。結構良い子ちゃんなのだ。

 窒素を使用出来るように変換するのは、雷と少数の菌ぐらいなのだけど、雷が落ちた所にキノコが多く生えるのはそういう事なのかとも思っている。

 まぁ、そこまで詳しくは知らない。

 クラーケン肥料のアンモニアのでハーブの猛攻にあっている。

 私の畑では字の如く魔法の肥料があるから無理にマメ科を育てる必要性はない。

 けれど、私は育てたい。マメ科は美味しい。

 グリーンピースが嫌いな子ども達は多いけれど、スナップエンドウは食べる子は多いよなぁ。

 同じ種なのに。

 まぁ……大豆、もやし、枝豆が同じ種だけど好みはあるよな。

 私は全部好き。

 だから育てたい。

 インゲン豆のように毒性のあるマメ科もあるけど注意すれば大丈夫でしょう。

 ここには無いが、テキサス・メスカル・ビーンなどは毒性があり、摂取すると意識障害や嘔吐、血圧上昇などの症状をおこす。

 シチシンとかいう毒だった気がする。

 しかし大量収穫でほっくほくのホックホクよ。

 ふと沼を見る。

 そこには見慣れた葉があった。

 アイエエエエ!里芋!? 里芋ナンデ!?

 里芋の葉が沼から生えていた。

 里芋は千葉や埼玉などの関東が多く生産している。

 葉が大きく、撥水加工してるかのように水を弾く。

 普通は畑での栽培なのだが、目の前には沼から葉が出ている。

「一つ抜いてみようか」

 靴と靴下を脱いで、スカートが濡れないように蔓で縛る。

『危険なので私にお任せください』

 そこでシルキーさんに断られた。

 せっかく準備したのに。

 シルキーさんも同じように準備をして沼へ入る。

『気持ち良いのか悪いのかわからない感触です』

 わかる。

 ヌルヌルのドロドロなのにヒンヤリとして指の間に泥が入る何とも言えないあの感じ。

 シルキーさんが里芋の葉を伝って芋を掘り起こしていく。

 里芋なら煮物とか美味しいんだよねぇ。

 ホクホクのねっとりとした感じで、醤油が軽く甘味を帯びた里芋の味を上手く引き立てるヤツ。

『お嬢様。これでよろしかったでしょうか』

 そう言って手にしている芋を渡してくれた。

 見た目は――

 あ!これはタロイモだ!

 里芋もタロイモ種の仲間だ。

 タロイモは水田栽培だっけ。

 タロイモは熱帯アジアやアフリカに多い。

 また、ハワイでも食されていてタロはカロと呼ばれている。

 炭水化物だぜ。

 やったぜ。

「ハワイじゃ確か葉包み焼きが伝統料理なんだっけ」

『詳しく!』

 シルキーさんが食いついた。

「このタロイモの葉に肉や魚を包んで、その上からセンネンボクという葉で巻いて蒸し焼きにする料理です」

 タロイモの芋部分はまだ旬じゃないから食べるのは先かなぁ。

「この芋の部分はペースト状にして食べるってのもありますが、季節的にまだですね」

 茹でて潰してすり潰すんだったかな。

 民族料理であるやつ。

 その前に茹でてそのまま塩で食べてみてみたいけれど。

『では、包み焼きを作りましょう』

 シルキーさんが足を沼から引き抜いて方向転換しようとした時、シルキーさんがバランスを崩した。

 咄嗟に助けようとしたが間に合わず、私を押し倒すかのように倒れこんだ。

『すみません。お嬢様、お怪我はありませんか』

「大丈――」

 目を開けたらシルキーさんの顔が目の前にあった。

 ガチ恋距離。

 心臓に負担がかかる。

『大丈夫ですか?』

 反応が遅れたせいか聞きなおしてくれるが、外傷じゃない鼓動の速さを抑えるのが精一杯だった。

 自分で作った顔とはいえ、これは無理。

 前世では異性とこんな至近距離で接する機会とか無かったわけで――無理。

 パニック状態の頭をグルグルと回転させていたらシルキーさんの後ろから水の音が聞こえた。

「シルキーさん!後ろにケルピーが!」

 身動きがとれない人間がいると思ってか、ケルピーが沼へ引きずり込もうとしてきた。

『邪魔ですよ。【エアーハンマー】!』

 ケルピーが横に吹っ飛んでいくのが目の端で確認できた。

 突然横から【エアーハンマー】を打たれるなんて防御不可能なわけで、目の端にいるケルピーはピクリともしない。

『さて、お嬢様。続きをしましょうか』

 え!?続き?何の続き!?

 まだシルキーさんは私の上にいる。

 え?えぇ!?

 私は眠るようにそっと目を閉じ、考えるのを辞めた。

『お嬢様!眠ろうとしないでください!タロイモの続きを!』

 第八章、仰げば尊死。完。


 ◆

 シルキーさんに無理やり起こされ、ケルピーの解体をした。

 どうせならタロイモの葉包み焼きに入れるという事になった。

 魔物なので、生物学分類に当てはめるのは難しいが、強いて言うなら馬ではなく河馬カバに近いものだと思った。

 河馬。鯨偶蹄目。クジラと同じ項目だ。

 河馬の胃袋は三つあり、馬の胃袋は一つ。

 ケルピーはというと、間をとってか二つあった。

 間をとるってなんだよ。

 シルキーさんが言うにはケルピーは人間を食べるらしいが、河馬も死んだ動物を食べるとされている。

 河馬は動物を食べなくても植物を食べるだけで生きてゆけるのだが、動物も食べる事がある。

 ケルピーもその域なのだろうか。

 川の馬と書いてケルピーと読んでも過言じゃない……かも。川馬ケルピー

 胃袋を裂いて中身を見たが、動物は入っていなかった。

 馬のようなたてがみがあるのは鯨偶蹄目としてはおかしいのだが、魔物という事で考えないようにした。

 もしかしたら触手として手足のように動かせるかもしれない。

 そしたら触手魔物や水責め拷問魔物として薄い本にいそうだ。ハードなやつ。

『肉は結構赤いですね』

「馬だからですかねぇ」

 馬刺しも赤いが、鯨肉のように赤い。

 どうやって下処理をすれば良いかわからない。

 とりあえず持ち帰って部位ごとに調理してみる事にする。

 タロイモの葉や枝豆などの豆類、ケルピーを持ち帰る事に。

 結構な荷物になってしまった。

 血抜きされたケルピーは私が背負う。

 ケルピー臭っ!くっさ!

 沼地にいたからなのか、何なのかわからないけれど、至近距離に顔があるから臭ってしまう。

 結構辛い。

 イエスキリストはゴルゴタの丘を自分がはりつけになる十字架を背負って登ったそうだけど、それ並に辛いのでは!?

 暑いし、くっさ!


 無事家まで帰る事が出来た。

 途中に心は折れそうになった。

 何度もなった。

 しかし私は、やりきった!

『夕餉の準備をしますが、ケルピーはお願いします』

 シルキーさん!空気読んで!休ませて!

 重い腰を上げて仕方なく皮を剥ぐ。

 皮が薄い。

 頑張ればトマトの皮剥きみたいに出来そうだ。

 装備などの加工には向かないな。

 臭みが肉に移らないようにせねばならない。

 首から上は肥料行きかな。

 内臓のあった周辺もある程度削ぎ落とす。

 ロース、ヒレ、バラ、イチボ、モモと分けていく。

 少量ずつ切り取ってシルキーさんに渡す。

「これが盛り合わせ一人前ですかね」

『では、包みますね』

 シルキーさんは肉をタロイモの葉で包んで、センネンボクとは違う何かの葉でも覆う。

 センネンボクとかあれば良かったが、今回は異世界植物の葉だ。

「あ!これも入れましょうか」

 私が摘んだ朝マンドラゴラの実を出した。

 ナス科っぽいのでそのまま切って一緒に入れれば大丈夫そうだ。

『では切って参ります』

 そう言ってシルキーさんは少し離れた場所で切り始めた。

 肉と野菜を一緒に切るのは生理的に無理だ。

 私もケルピー肉を切り分ける。

 シーチキンも少し合わせてみようか。

『終わりました』

 ナスと馬肉とシーチキンを合わせて包んでいく。

 豆類も別にして塩を降って包む。

 最初のと合わせて四つの包みが出来た。

 外に私が小石を蒸発させて作った焼き場があるので、そこに包みを置いておく。

 乾燥させたガマの穂に火をつけて虫除けにする。

 今回はシンプルに塩味だけだ。

 必要と感じれば次は香草やらニンニクやらを入れて調整すれば良い。

 焼けた葉から湯気が立ち上り、美味しそうな香りが漂う。

 今までの中で一番豪華な食事かもしれない。

 勘でしかないが、十分火が通ったと思ったので火からおろす。

 葉を開けると葉の香りと肉や魚の香り鼻腔をくすぐる。

「『いただきます』」

 ケルピー美味いな。

 肉自体に臭みもなく、食べやすい。

 けれど肉が硬いので、柔らかくする下処理が必要だな。

『お嬢様。マンドラゴラも美味しいですよ』

 シルキーさんに勧められたのでマンドラゴラの実を口に運ぶ。

 ナス。ナスだけれど、硬さのしっかりとしたナス。

 味が濃く、瑞々しいのがわかる。

 美味いなこれ。またやろう。

「美味しいですね」

 枝豆も美味い。

 サヤエンドウはの皮は少し硬かったかな。

 もう少し早めに摘まないといけなかったかもしれない。

「サヤエンドウは皮が少し硬いので剥いて下さいね」

 まぁ、豆の方は美味しいから良いか。

『本当はそのまま食べられるものなのでしょうか』

 あぁ。シルキーさん枝豆と同じ食べ方をしていたか。

「若いものは火を通してそのまま食べられますよ。枝豆は剥いて下さいね」

 シルキーさん豆へ向かう手が止まらない。

 豆にハマったな。

 トウモロコシとかスイカとかあればもっと夏を満喫出来るのに。

 後は畑を拡大しなきゃ。

 色々やる事はありますなぁ。

「『ごちそうさまでした』」

 異世界で夏を満喫した。

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