第二章〜オーク〜


 この世界には、スキルとかレベルとかがあるようだ。

 毒キノコを食べて【毒無効】というスキルが反応した。

 自分の浸かっていた液体を飲んで解毒する事がなくて良かった。

 マンドラゴラには感謝したい反面、考察結果がアレだから複雑な気持ちだ。

 まあ、そんな耐性やスキル、レベルなんかを見てみたいなぁ、と思っていた。

 こういう時ってやっぱり、定番の方法かな。

「ステータスオープン」

 だいたいのライトノベルじゃこう言えば自分の情報が得られる。そう思って言い放ってやった。

 ……あれ?

 何も起きないんですけど。

 いや、恥ずかしいんですけど。

 これって耐性とか試していかないとわからない系ですかね。

 毒耐性とか試して「ありませんでした」とか言われたら死にますやん。この世界大丈夫か。

 うーむ。

 とりあえず諦めて、部屋の掃除を続けるしかないか。

 まだ色々怪しい物体の多い部屋を片付けていく。

 製作者様って職業が何かわからない。

 やっぱり錬金術師だろうか。ホムンクルスつくる人間なのだから。

 しかし、怪しい薬や水晶なんかもあるな。

 水晶は文字が刻まれていて、 水晶の下にガラス板に砂が入ってるものがある。

 アレかな。未来とか見れたり遠くが見えるやつ。

 この世界には魔力があって魔法がある世界だし、不思議ではない。

 魔力でも流してみるかな。

 「私の未来を映し給え〜」

 軽いノリで魔力を流してみる。

 あ、思った以上に魔力を吸われた気がする。

 そう思った瞬間、ガラス板に挟まった砂が動き出した。

 また安易な行動しちゃったかも。マンドラゴラを抜いた時もやっちゃったし。

 そう思ったが、既に砂は動き、何か発動している。

 恐る恐る砂を見る。これで未来がわかればラッキーだけれども。

 砂で文字が書かれていた。

 未来なんかではなく、現在の状況だった。


【ステータス】

『名前』Null

『種族』ホムンクルス

『性別』♀

『年齢』Null

『レベル』Null

『スキル』毒無効、麻痺無効、精神平常、魔眼、魔力干渉、魔力緩衝、悪食、超再生、調合、創作……etc.

『魔法』毒生成、魔眼(魅了)、獄炎魔法、凍炎魔法、付与……etc.


 まさか、こういう形で自分のステータスを知る事になろうとは。

 これ知っていれば恥ずかしい思いしなかったのに。

 それにしても、【Null】が多くない?

 Nullって無しってことでしょう?

 吾輩はホムンクルス名前はまだない。

 そういえば名前ないんだよなぁ。

 こっちに来てから名乗る事も呼ばれることもないからなあ。

 まあ、名乗る事があった時に考えよう。

 名前がNullなのはまだわかる。けれど、レベルもNullなの?年齢はあって欲しかった。

 この世界にレベルの概念がないって事はない。製作者様の本にレベル関係が書いてあったから。

 確か、レベルによって使えるスキルや魔法が増えるとか。

 自分だけレベルの概念がないのか。一でも〇でもない。Null。「Null Pointer Exception」かよ。

 ぬるぽ。(ガッ)

 それにしても、スキルと魔法がたくさんある。

 各Wordの2ページぐらいあるぞ。

 これは私が組み合わせて作られたからか。

 いっぱいありすぎて使いこなせない気がする。

 魔法に【獄炎魔法】とかあるけど火の魔法かな。

 これまで竃に火をつけるのにすごく手間取っていたけど、魔法使えば一発だったんじゃ……。

 もっと早く知っていたかった。

 毒無効の他に毒生成もある。マンドラゴラさんですな。他の素材のおかげもあるかもしれないけれど。

 けれどやっぱり使いこなせないだろうなぁ。

 魔力もWord五ページ分吸われたし、お腹すいてきたな。

 探索して食料確保といきますか。

 家の掃除を中断して、探索の支度を始める。自己防衛用の弓と矢、籠、採取用ナイフを持って家を出る。

 製作者様は魔法が使えたようだから武器の類は持っていなかった。そのため、私が自作した。弓と言っても弓道部員ではなかったし、弓がまともに使えるわけではない。

 そこら辺のライトノベルチート主人公とは違うのだよ。弓と矢を自作したからって真っ直ぐ飛ぶわけがない。そもそも、前に飛べばいい方だ。

 剣も弓も才能は無い。図鑑とか読んでいたいインドア派にそんな物を期待しちゃいけない。

 自己防衛と言ってもハッタリにしか使えない。

 まぁ、マンドラゴラの毒でも塗って、当たれば強いのだろうけれども。

 俺Tueeeeeeeeしたいわけではないけれど、少しぐらい補正あっても良さそうだけれど。

 そう思いながらも森へ入る。

 弓矢が使えないなら罠でも作るかなぁ。これは自己防衛ではなく、狩猟のためだ。

 キノコや木の実、野草などを食べて生きているが、そろそろ肉も食べたい。

 バネとワイヤーがあれば簡単な「くくり罠」が作れる。こういう時に動画配信サイトやライトノベル、漫画を読んでて良かったと思う。

 けれど、バネもワイヤーも自作しなきゃならないか。

 蔦や蔓でどうにか出来ないかなあ。

 今日は罠の材料も兼ねて探してみますか。

 森を歩いていると毒キノコが多く生息する区域に入った。

 毒キノコばかりなので普段は入らないが、ここにはツタツルを持つ植物が多い。

 その蔦やら蔓を長めに切って籠に入れる。

 【ストレージ】とかいう荷物を四次元へ出し入れ出来る魔法だかスキルが欲しい。が、そんなのこの世の中に存在しない。つらたん。

 重くはないけど。いや、籠と蔓とか意外と重いはず。なのに重くないと感じるなら何かしらスキルが発動しているのだろう。

 便利な魔法より力技で解決するタイプかぁ。もっとファンタジー要素欲しかった。

 毒キノコも一本取って、マンドラゴラを干して粉にしたものと調合する。何かわからないけど毒物が出来た。【調合】スキルのおかげだろうか、毒や薬が自然とわかる。料理人が組み合わせで味が予想できるアレと同じか。

 出来た毒を石を割って作った鏃に塗れるようにしておく。

 弓矢を作ってわかったが、弓を作るより矢を作る方が難しい。やじりを変な所で固定すると重心がブレる。ただでさえ弓を扱うのは初心者なのに重心がブレて余計に当たらない。

 使い捨てなのに苦労する。

 毒キノコ群生地を抜けると茨の多い区域に入った。

 イバラの花が咲き乱れ、香りが辺り一面を覆う。

 茨には苺がなり……。

 苺!?

 いや、苺はバラ科だけど、そうじゃない。

 茨。ノイバラは確かに偽果ぎかをつけるけれども、もっとヒイラギの実のような赤く丸いやつだったはず。茨から元日本人の私が知る苺がなるとは。

 一つとって食べてみる。

 毒はない。

 けど、すっっっっっっっっっごく不味い。

 確かに日本で売ってる苺と比べたら野生の苺なんて美味しくはないだろう。農家の人の努力の結晶を忘れちゃいけない。

 けど、それとこれは違う。

 これは苺だけど味が違う。甘味は無いに等しい。薔薇のお菓子やジュースなんかを飲んだ事がある人はわかるが、味が薔薇だ。

 しかもただの薔薇味じゃない。酸味が強く、エグ味が多い。

 騙された感じが凄い。

 品種改良すれば美味しくなるのだろうか。

 とりあえず小さなものを一株籠に入れる。

 スキルに品種改良に使えそうなものがあったかな。無ければ何かと接ぎ木してみるか。マンドラゴラに次ぐ異世界植物第二。


 スキルと魔法は多いけれど、名前も年齢もNullだったなぁ。

 「ぬるぽ」って言って「ガッ」って応えてくれる人間はこの世界にはいないのだろう。まぁ、日本でも応えてくれる人は少ないだろうけれど。

 そんな事を考えながら歩く。

 「ぬるぽ」

 「ガッ」

 え!?

 自分が声に出してしまっていたのにも驚いたが、隣から応えがあったことに驚愕した。

 思わず声の主に目がいく。

 そこには「フガッ」と鼻を鳴らすオークの姿があった。

 オーク。二足歩行の豚の魔物。

 よくオークは女騎士と絡み、「くっ。辱めを受けるくらいなら殺せ」(略してくっころ)と言うのが鉄板だ。

 特徴として、オークは繁殖力が高く、人間の女性を攫って増えていくという。

「ぶ、豚肉だぁーーーーーー」

 思わず叫んでしまった。

 お肉食べたい。

 オークの方もこちらが女とわかると戦闘体勢に入る。

 たまに異世界召喚、転生もので「人の形している魔物を殺すのはちょっと……」という主人公がいるが、知ったこっちゃねぇ。あれは食材だ。上質なタンパク質だ!

 今夜の夕飯は豚肉で決まりとなった。

 オークは槍を構える。

 私は弓矢を構え、解き放つ。

 見事に外す。

 チート主人公なら当てるのでしょうね。

 私には無理。

 オークは槍を突き、私の体力を削ってくる。

 子どもだからすぐに降参するかバテると思っているのだろう。

 残念。私はホムンクルスだ。

 槍を後退しながら避ける。避けながら下手くそな矢を放つ。

 矢の鏃には当然、猛毒が塗ってある。当たれば倒せる。

 けれど、当たらない。

 矢の本数がラスト一本になった。

 このままでは非常に不味い。外したら撤退しなければいけなくなる。

 つまり、夕飯のお肉を逃さなきゃいけない。

 逃げるのはこちらだけれども。

 相手の攻撃は舐められているせいか単調だ。避けるのは簡単だし、体力は十分ある。

 なら、一か八かの勝負。接近戦に持ち込む。

 私は弓をオークの方へ投げる。

 弓はオークの槍に弾かれ、壊れた。

 弓が宙を舞う瞬間に矢を手で投げた。

 矢が弾かれた瞬間に下に潜り込んでアッパーを食らわせるつもりだ。

 だが、矢はオークの首に刺さった。

 えぇ?

 オークは毒がまわり踠き苦しむ。

 私はただ呆然とその光景を眺めていた。

 えぇーー!?

 弓を使うより投擲が良かったのか!?

 そんな事を思って苦労した分のあれこれを無駄にした気がして落ち込んだ。

 同じ品質の矢を作るのに比べて難しくはなかったが、工夫した所もあった弓が砕け散って、その上弓を使わない方が上手くいった遣る瀬無さ。

 確かにね。最近やり始めたばかりの弓より手の方がよく馴染んでいるよ?

 けどさぁ。これはないわ。

 そうこうしているうちにオークは息絶えた。

 首を斬り、毒を削ぎ落とす。そしたら腹を裂いて内臓を取り出す。内臓は人間と同じような位置だ。流石は二足歩行生物。内臓は観察するが、捨てていく。一人で食べられないうえに、冷蔵庫のような保存技術がない。

 身体はそのまま川に沈める。これで生臭くなりにくいらしい。

 こういう時にライトノベルなどの異世界知識は役に立った。

 ホムンクルスのせいか筋力はある。普通の女の子がオークを背負うなど到底出来ない。

 異世界スキルは凄い。なのに私のへっぽこさといったら。

 溜息をつきながら帰路につく。

 とりあえず、オークは川に沈めたまま家に帰り、荷物を置いて出直すことにした。当然薔薇苺は植えてから。

 川から出したオークの脚に蔦や蔓を編んで丈夫にした縄を括り付ける。

 太めの木に逆さ吊りにして完全に血を抜く。

 そういえば、内臓を抜いた時に思ったが、色々オークの身体を調べたいな。

 繁殖力が強いなんていうからどんな仕組みなのだろうか気になる。

 そうと決まれば首無しオークを担ぐ。

 家に帰り、作業台にオークを置く。

 オークを置く。大事なので二回言いました。

 え!?つまんない?五月蠅いな。

 メスを握る前にまずは、考える。

「オークは何故繁殖力が強いのか?」

 乾燥した部屋に声が一つ置かれた。

 答えは「人間やエルフの女性を攫って孕ませるから」だが、意味がわからない。

 何故オークという豚の魔物がエルフや人間と性行為をしてオークが産まれる?

 動物は「鋼」、「目」、「科」、「属」、「種」で分類分けされている。よく図鑑やネットで調べると「○○科○○属」というのを見るはずだ。

 その中で人は「哺乳綱」、「霊長目」、「ヒト科」、「ヒト属」、「ヒト(種)」となる。

 違う種類の犬や猫などでも「雑種」が生まれるのは「属」が同じ同士だからだ。

 日本のある世界では「ヒト属」にあたるのは私達しかいない。

 まあ、今ホムンクルスの私は入っているかどうかもわからないけれど。

 そうなるとオークは「ヒト属」にあたるのか。という事になる。

 しかし、それは交配したら「雑種」が生まれるのだ。

 本来なら「ハーフエルフ」のように「ハーフオーク」が生まれるはずだ。

 そんな話を聞いた事がない。何故雑種が生まれる事なく、純オークを繁殖させられる?

 遺伝子を変える事が出来るのか?

 いや、そしたら全生物を孕ませる事が可能ではないか?それこそ繁殖力が強いとか、そんなレベルじゃなくなってしまう。

 下手したら犬や猫からオークが出てくるなんてあり得る。いや、骨盤が小さいから二足歩行の生物からしか産めないのか?

 というか、そもそもオークに雌の個体はいるのか?

 確か、オークは最終的にオークキングになるとされている。

 雌の個体はいないのか。それとも発見されないようなものか。

 わからないな。

 あっちの世界で考えよう。まず、繁殖力の強い生物は何だ?

 そこら辺にいっぱいいる生物。蟻や蜂とかか?

 蟻や蜂は女王が卵を産んで、繁殖していくスタイルだ。

 オークも周り全て雄で女王のみが雌の個体って事もあり得るのか。

 いや、そしたら辻褄が合わない。蟻も蜂も両方の個体がたくさん巣にいる。

 それにオークが人の女性を狙う意味がなくなってしまう。遺伝子の件も合わない。

 よくわからなくなったら解剖してみるか。

 繁殖力の秘密を暴いてみせる。

 五臓六腑は取り出したが、睾丸やキンツルはそのままにしておいた。キンツルが何か?キンツルは豚のおちん○さんです。

 食材としてキンツルと呼びます。日本でも出回る事は少ないけれど、お肉屋さんで手に入ったりもします。

 睾丸は食材とはされていない。食べられるわけではないようだが、どうなのだろうか。

 しかし、豚は睾丸が多いとされるが、オークも当てはまるとは。

 私にはもうなくなってしまったがな。

 豚のキンツルはドリルみたいな形状をしているのだが、オークはヒトと同じだ。

 この絵面がヤバいな。童女がオークのキンツル眺めてるって。

 しかし、人間と同じような形してると切りづらいな。

「ひいっ。痛い、痛い」

 そう言いながらメスで真っ二つに切る。

 別に私は痛くないのだが、俺だった頃の下半身が痛いのだ。

 陰茎の中に仕込みドリルがあった。これは豚であった頃の名残か、挿入時にドリルが出て来るのかはわからない。

 睾丸も切り開いてみる。

 オークの睾丸は精力剤になるって聞いたことがある。オットセイやマムシ、スッポンみたいなものか。

 ふむ、切り開くと精巣の隣には精巣上体がある。

 が、もう一つの見知らぬ器官があった。その器官は精管を覆う精索と合流している。

 何かと一緒に精液と出すって事か。

 それが鍵となるか。

 その器官でつくられたものが遺伝子を変えるのか。

 仮説として、オークは二足歩行の生物なら性行為した相手にオークを産ませる事が出来る。それは、精液と一緒に分泌される液体から卵細胞をオークに変える事が出来るからである。

 と、いうのが一つの仮説。

 遺伝子を変える以外で何かないだろうか。

 精子と卵子が合わされば産める。蟻や蜂みたいにいっぱい産む方法。

 もし、巣には雌の個体がいて、卵子を雄の個体に託させる事が出来たら?

 それがあの器官だとしたら、器官から分泌ではなく、器官へ卵子を溜めておけるとしたら。

 卵子と精子を違う生物の卵巣で受精させているとしたら……。

 そしたら雑種なんて生まれてくる事なく、遺伝子を変えるなんて荒技にはならない……かもしれない。

 それがもう一つの仮説だな。

 他にも仮説があれば聞いてみたいものだ。

 やはり、オークの巣があれば見てみたい。雌の個体がいるのか、どんな中身なのか知りたい。

 このオークは、はぐれオークのようだ。

 武器の槍がボロボロで、装備も手入れされていない。集落は近くになさそうだ。

 では、解剖から解体に進みますか。

 動画配信サイトでお笑い芸人が子豚を解体していたのを観ていたから、そんな感じでやってみる。

 やはり、二足歩行だと色々違うようだ。

 背骨は刃がたたない。力技で折っていくしかなさそうだ。

 鍛造の切れる包丁が欲しい。後で作ろう。

 ロース、ヒレ、豚足と色々斬り落とし、解体が終わった。ちなみに、手は人のように五本指だが、足は豚足だった。

 もう結構な時間だ。全部は食べられないので、今日食べられない余り分は塩で揉んで干し肉にする。

 今日は豚肉の香草焼きだ。

 久しぶりのお肉でテンションが上がる。



    ◆


 外で薪を組み、試しに【獄炎魔法】を使用してみた。

 駄目ですな。使いものになりませぬ。

 小さな【獄炎魔法】で種火として薪にくべたのに、消し炭となった。

 生木なら大丈夫かと試したが、全て【獄炎魔法】に消された。

 仕方がないので、自分の力で火をつける事にした。

 使える魔法がたくさんあるのに、実用できる魔法が少ない。製作者様は私をフランケンシュタインの怪物にでもするつもりだったのでしょうか。

 そうこうしているうちに豚肉の香草焼きが出来上がり、一口食べてみる。

 豚肉?

 と、いうより猪のようだ。

 豚より少し臭みがあって、硬い。

 不味くはないが、豚って言われたらそうじゃない感じだ。

 しかし、オークは何で人の女性を襲うのだろうか。前から思っていたが、子孫を残すのに効率が悪いでしょ。

 人族を襲うなんてリスクが高くて、下手したらオークという種族が滅びるだろうに。

 米が欲しい。パンでも良い。

 日本でも害獣とされる動物はいるけれど、ケモノだしなぁ。

 カラスや猿はヒトを襲って食べ物を取ったりする。

 オークもそんな理由なのだろうか。

 カラスや猿なんかは人間が餌付けしたり、ゴミを出したのを漁ったりで人間の味を覚えてしまったのが原因だったりするんだよね。

 香草焼きはパンに挟んでみたい味だな。

 うーむ。餌付けやゴミねぇ。

 餌付け……。

 ゴミ……。

 サーッと背筋が冷たくなるのがわかる。

 人間がオークに餌付けやゴミを出していたら?

 餌付けやゴミというのはそのままの意味ではない。

 例えば、とある国の貴族令嬢が「いらない存在」だとして、攫って殺すより他国の森でオークの苗床にした方が良い。

 何故なら、オークが増えて被害が出ればその国は弱くなる。自国にしては一石二鳥だ。

 また、奴隷や娼婦で使えなくなった者をオークに出せば「事故」という事になるだろう。

 そういう感じで人間の味をしめたオークが人を襲うのではないか。

 そんな「君のような勘の良いガキは嫌いだよ」と言われそうな考えが浮かんでしまった。

 これは闇へ葬る事にした。

 パンの材料でも生えてないかな。

 美味しい香草焼きを頬張る。

 私は考えるのを辞めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る